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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
1章:奥様になりました。
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007 ライバルの登場です?

2013/04/28 微修正。

 「やめてぇー!」

 あ、いや、私じゃないです。私は普通に雰囲気に流されそうになってました。闖入者ちんにゅうしゃです。なにやら可愛い闖入者が泣き顔で熊さんに飛びつきました。

 「エレース!?」

 どうやらこの可愛子ちゃんの名前はエレースと言うらしいです。それにしても可愛いです。熊さんに抱っこされているとまるで絵本の世界です。黒いつやっとした髪はうまい具合に天パですし、涙で白目が真っ赤になってるけど、瞳はブラウンのようです。

 「お人形さんみたーい!」

 そう言ってしまったのも致し方ないぐらいに可愛いです。可愛いです。撫でくり回してぎゅーってしたい可愛さです。しかし、声に出しちゃったのは失敗でした。可愛子ちゃんが、びっくり顔でこっちを見てます。熊さんもです。

 「申し訳ございませんグラフ様!決して中に入らないよう言い聞かせていたのですがっ!」

 若干の気まずい空気を破って、焦った様子の執事ルックな人が入ってきました。

 イケメンだ!驚いた!しかし私の趣味ではない。少々緑っぽさの入った水色の長い髪を一つに結っています。瞳は完璧に青です。優男系と言えなくも無い。そして細い。うん、好みではない。

 って!すでに旦那様がいるんだから好み判定とかしちゃ駄目だ!!!

 などと、私が思っている間に話は勝手に進んでいます。

 「エレース様、グラフ様がお困りです。奥様とお話の最中だったのですから、邪魔をしてはなりません!」

 イケメン執事がエレースちゃんを熊さんから引き剥がそうとするけれど、可愛子ちゃん必死の抵抗です。可愛いです。

 「よい、アーノン」

 熊さんがエレースちゃんを抱きかかえたまま立ち上がります。

 「エレース、そんなに強く服を掴んでいては、手を傷めてしまうぞ?」

 おや?なんだか、熊さんの話し方が全然違います。あのへたれっぽさはどこいった?

 「だって…っ!ふぃおちゃまがっ!ふぃおちゃまがっ!」

 ぼふぅ!可愛い!めちゃこん可愛いぃいいい!悶える!苦しい!正直、くわせふじこ的な発狂をしたくなる!ふぃおちゃまって!ふぃおちゃまって!

 「エレース……、いや、良い機会だ紹介しよう」

 なんて言いながら、熊さんがこちらを向きます。いかん!悶えてる場合じゃない!猫!猫!

 急いで、猫仮面をつけると、私はゆっくりと頷いて立ち上がります。

 「エレース、彼女が我が妻となったミーレリリーだ。リリー、この子は我が屋敷で預かっている子で、名をエレース・ショーゼナルと言う」

 「始めまして、エレース。仲良くして下さいね」

 にっこり笑って手を差し出したのだけど、エレースちゃんはぷいっとそっぽを向いてしまう。むむぅ、子供には好かれやすいたちのはずなんだが……やっぱり猫被ってると駄目か。子供はそういうとこ敏感だからなぁ……

 よしっ

 「ごめんね、やり直し!わたしミーレリリー。リリーって呼んで。お姉ちゃんでもいいよ。仲良くして欲しいんだけど、駄目かなー?」

 そっぽ向かれたほうにテテテと回り込んで、顔を覗き込みながら言ってみる。もちろん、最後はちょっと寂しそうな声にすることを忘れてはならない。

 「…………」

 エレースちゃんがちょっと困ったような顔になる。

 「……エレースのこと、いじめない?」

 「いじめる?とんでもない!こんな可愛い子いじめるわけないよー」

 いじめるなんてありえない!むしろ、猫可愛がりでベタベタに甘えさせてやりたいぐらいです。そんな私の真意を一生懸命覗き込もうとするエレースちゃんと、ちょっとにらめっこ状態になる。

 「アーノン、少し外してくれるか」

 「……はい」

 熊さんがイケメン執事を下げさせます。扉が閉まると、熊さんはエレースちゃんをしっかりと抱き直しました。そのおかげで、熊さんの背中越しから、きちんと正面、熊さんの顔もエレースちゃんの顔も見れるようになります。

 「……エレースこわくないの?」

 「えー?なんで?こんなに可愛いのに」

 やばい、さっきから可愛いしか言ってない気がする。でも事実だからしょうがないよね!

 「だって……エレースばるなとだもん」

 ばるなと?えっとー……聞いたことあるな……ばるなとばるなと……

 「あぁ、ヴァルナト?」

 説明しよう!ヴァルナトとは、以前お話した命卵めいらんが無い人が子供をもうける為の方法の結果です。命卵が無ければ子供が作れない、というわけではありません。生々しい話になりますが、ご了承下さい。基本的に子供は命卵を飲まないと授からないのですが、生でやっ…あ、いや、避妊をしないとごくごくごくごくごーく稀に妊娠することがあります。そうして授かった子は残念な事に殆どが世に生まれ出ること無く去っていきます。無事に産むことが出来ても、この世で生きていくのが辛い姿であったり……そして全ての子に共通するのが、必ず真っ黒の髪の毛で生まれてくるということです。

 この世界では、黒の子は混沌の子。禁忌の子と言われ、五体満足無事に生まれても悲しいことに命を奪われてしまいます。悪習ってやつです。滅べ!

 なんかちょっとムカムカしてきた。いかん、怒気を収めねば。深呼吸一つして……

 エレースちゃんに気持ちをしっかりと伝えないと!

 「気になんてしないよ!だって私は現示者げんししゃだよ?」

 「げんしちゃ?」

 「そう、現示者。私はね、昔、うつつに居たの」

 「かみさまのうつつにいたの!?」

 おぉ、食いついた食いついた。

 「そうだよー。私が居た国はね、みーんな髪が真っ黒だったんだよ。私だってそう。だから、エレースちゃんを怖いなんて思わないし、もちろんいじめたりなんてしないよ」

 「みんなくろなの?」

 「そう、髪だけじゃなくって、目の色も!」

 「すごいねーいいねー」

 「そうだね。エレースちゃんの髪もツヤツヤで綺麗だよ。私はこんな髪の色だから、うらやましいくらい」

 「そんなことないよー、おねーちゃまのかみもきれー…はっ!」

 「はっ!」って言った!リアルに「はっ!」って言ったよこの子!超可愛い!

 「おねーちゃまはエレースのてきなの!なかよくしないの!」

 そう宣言して、エレースちゃんは熊さんの肩に顔をうずめてしまう。何故だ!何故敵なんだぁー!

 「すいません、リリー。エレースは私に懐いていて……だから、貴女に私が取られると思っているようです」

 おや?熊さんの口調がへたれに戻った。

 「ちがうもん!もうとられちゃったんだもん!エレースがふぃおちゃまとけっこんするはずだったんだもん!なのにとられちゃったもん!」

 がばりと顔を上げて、ふくれっ面で熊さんを睨む。かわえぇ……

 「しかし、エレース。君とは二十四も離れているんだよ?」

 「としのさなんてかんけいないもん!」

 なんて言いながら、キッと私を睨む。駄目、このオマセっぷり可愛過ぎて私死んじゃう……!

 「おねぇちゃまなんさい!?」

 「え?私?十六歳だよ」

 「おねぇちゃま、エレースと……えっと…………」

 「十二歳かい?」

 指を折り折りしていたエレースに、言いたいことを読み取った熊さんが代わりに答えます。

 「そうよ!じゅうにちゃいしかはなれてないもの!」

 いやー十二歳は結構離れてると思うよ、実際。ん?あれ?私とエレースちゃんが十二歳差ってことはエレースちゃんは四歳で……エレースちゃんと熊さんは二十四歳差で……ってことは熊さんは……

 「二十八!?」

 「へっ!?そ…そうですが……言っていませんでしたか?」

 「聞いてない聞いてない!」

 思ったより若いよ熊さん!だってそれだと私と十二歳しか離れてないじゃん!……ん?私さっき、十二歳は離れてる的なこと思ったばっかじゃね?てか、実際干支一回りって結構離れてるじゃん……や、でもほら、三十中盤辺りだと思ってたから!ね!?

 「熊さん二十八なの……」

 「熊……?」

 「あっ!!!」

 うっかり熊さんとか声にだしちまった!動転し過ぎだ私ぃ!!!

 「とー、とにかく、エレースちゃんはフィオ様と結婚したかったのね?」

 「そうよ!でもおねーちゃまとけっこんしちゃっ……うっ……しちゃったんだもの……」

 なんて言いながら、ぐしぐし泣き出す。あぁもう、可愛い。可愛いけどどうしよう……

 「どうすればお姉ちゃんのこと許してくれる?」

 「…っく……わかれてくれればゆるしてあげう……」

 おま、ちょ、なんでかびっくりしたよ。結婚一日目で破局ですか。

 「こまったなぁー……」

 熊さんをちらりと見る。と、なんか熊さんが死刑宣告でもされた罪人のように真っ青になっています。くまった……いや、困った。

 「エレースちゃん、お姉ちゃんの目を見て」

 手の甲で涙を拭っていたエレースちゃんが、言われるままに私の顔を見ます。

 熊さんに抱っこされているから、私よりも数段視線は上にあるんだけどね。正直、高さ合わせたかったです。

 「エレースちゃんは、ううん、エレースはきちんとしたレティエ(レディ)だからごまかしとかしない。だから、ちゃんと聞いてくれる?」

 「……うん」

 こくりと頷く姿も可愛い。

 「私は、エレースと仲良くなりたい。でも、フィオ様と別れることは出来ないわ」

 エレースの目が大きく開かれる。

 「フィオ様とは、まだ結婚一日目で、知らないことがいっぱいあるけど、私はフィオ様が好きなの。もっともっと互いに好きになって行きましょうねってお話してた所なのよ。だから、別れない」

 と、ぐぐっとエレースの背中が近づいてきて、気がつけば視界が真っ暗になりました。

 どうやら、エレースちゃんを具材にして、私はサンドイッチのパンにされたようです。熊さん苦しいです。私、海老反りです!たぶんエレースちゃんも同じ状況です!息できません!

 「リリー…リリー!」

 「いや、わかっ……くるっ……」

 エレースちゃんを挟んでいるせいで、背中にタップが出来ない。死ぬ死ぬ!

 「おろして!」

 天の助けは、不機嫌マックスな可愛い声でした。

 「あっ!すまないエレース」

 地面に下ろされたエレースちゃんは命一杯怒ってますと言う顔をして、私たち二人を睨んでいます。

 「ふぃおちゃまなんてしらない!おねぇちゃまなんてきらい!」

 と、捨て台詞を残して、走って行ってしま…おうとして扉が開けられずにウンウン唸っている。可愛いぃいいいいいい!

 「あけてー!あーのん、あけてー!」

 多分廊下で待機していたのだろう、イケメン執事…いい加減名前で呼ぼう。アーノンさんがさっとドアを開ける。と、まだ十分に開いていない扉の隙間をすり抜けて、今度こそエレースちゃんは去って行きました。その背中にアーノンさんの「お待ち下さいエレースさまー!」という声を乗せながら。


 最後まで、可愛かったエレースちゃんですが、どうやら私は嫌われてしまったようです。しょんぼり。

「めちゃこん」はわざとです。


前の話で出てきた「ジャパン人」は俺語です。日本人です。

ちなみに日本語はもちろん「ジャパン語」です。

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