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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
1章:奥様になりました。
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006 なぜかいい話風にされてます?

2013/04/28 微修正。

 いやいやいや、冷静になってみれば別にストーカーとか言う程ではなかったように思わなくも無いような気がしないでもないです。

 まて、冷静になれ私、マジで。

 えっと、熊さんに出会ったのはパーティー会場が初めてだと思い込んでいたのですが、朝ご飯作ってたのも畑を耕してたのもパーティーの前までで……

 確かに結婚の申し込みで、熊さんが訪ねて来た日は仕事をしてたけど、それじゃあ「いつも」って言葉は出ないはずだし……

 つまり、熊さんはパーティーより前に私を知ってて、というか調べていた訳で……

 ちょい待てよ?ローストチキンに名前をつけていることを知っているのは私だけのはずだ。先代に焼き鳥って名前をつけたら、お母様に怒られたのでそれっぽい名前をつけていることは私だけの秘密なのです。

 ちなみに奴は創世祭そうせいさい(要するに新年のお祭り)のご馳走になった。焼き鳥の焼き鳥、美味しかったなぁ……あ、残酷とか言わないで!しょうがないのですよ!?ヴァーラント領は放牧に向いてないから、お肉は貴重なのですよ!

 ローストチキンの世話は私に任されていたから、お世話してる間だけ名前を呼んでいた訳で、奴の名前を知ろうと思ったら……


 ストーカーだ!ストーカーだこの人!


 「ちちち、違うんです!」

 何が違うんだこのやろう!

 私がゆっくりそろーりと握っていた手を離すと、熊さんは何を思ったのか声を荒げつつクラヴァットを外してシャツのボタンに手をかけた。

 今更、初夜的な何か!?焦って、身を引くと、椅子が大きな音を立てました。

 「あ、いや、これも違うんです!」

 だから何が違うんだっての!

 きっともじゃもじゃの胸毛が見えちゃう!とか思って、両手で顔を塞ぎます。もちろん指の間隔を開けて、チラ見スタイルである。当たり前なのである。

 と、シャラリと綺麗な音を立てて、熊さんが取り出したのは、首に下がったペンダントでした。

 「……あの、見えてますよね?」

 ダンディボイスがさりげなくつっこみです。えぇ、見えてます。すいません。乙女の好奇心です。結構窪んだ鎖骨と、予想を裏切ったツルツル胸元が見えてます。指の隙間からガン見です。

 「あの、見てもらえてます?」

 だから、見てるよ!超分析中だよ!どうやら、着太りするタイプらしく、ガチマッチョだと思ってたけど、マッチョでもなくややマッチョらしい。細マッチョもガチマッチョも好みじゃないから、ある意味良かったと言えよう。「マッチョマッチョ」

 はっ!好色ではない!好色ではない!興味津々なお年頃なだけだ!

 「『まっちょまっちょ』?」

 「あっ!」

 心の声のつもりがうっかり漏れていたらしい。ちなみに日本語(英語?)だったから、意味までは伝わらなかったようだ。

 「………………」

 「…………………………」

 伺うように見つめられて、私は息を止める。もちろん視線は微妙に外す。と、ふぅっと深いため息が漏れた。どうやら諦めてくれたようだ。

 ていうか、立場逆転してね!?

 「えっとですね、ほら、見てください」

 ややマッチョをか!って、違うよね、ごめんなさい、本当は気付いてたけどそれより体に目がいっちゃってですね。ペンダントですよね、ペンダント。

 ペンダントの中身を覗くと、まぁ予想通りというか命卵が四個入っているのが見えました。私は頭の回転が速いほうなのです。自慢です!

 「つまり、フィオ様は命卵を四個持つわたくしをご存知だったのですね?」

 「……はい。実は私は…結婚に興味が持てないで居たのです……」

 そう言って、語りだした内容は纏めるとこういう事でした。


 フィオはずっと結婚に興味が無く、お見合い的な話が来ても全て断っていた。その言い訳として、命卵が同じ数の女性となら、と言っていたそうだ。徳の高さで命卵の数が決まると言われている昨今、同列の貴族に命卵を四個も持つ人など皆無だったそうだ。ちなみに私の見解で行くと、特に徳と命卵に関係性は無い。とくとくをかけたジョークでもない。あしからず。

 そんな中、フィオを結婚させようと躍起になっていた伯父がヴァーラント領の貴族に命卵を四個持つ娘がいるという話を聞きつけてきた。すでに身分が合わないなどと言うことは些細な問題で、そんなことより、フィオを結婚させることが重要だった。なんせフィオはリヒティエリュート家の当主であり、莫大な事業の所謂いわゆる社長さんらしいのだ。

 そんな男をプラプラさせておく訳にはいかない。うっかり女遊びなんてものに嵌って、間違いを起こされては困る。と言うわけだ。

 ただ、問題だったのが私の年齢で、私の存在が知れたのが五年前。つまり当時十一歳の私は未だミルクの匂い漂うおこちゃまだったのだ。幼過ぎて結婚なんてと断るつもりだったが、一度くらい顔を合わせてみろと伯父に言いくるめられ、会いに行く羽目になった。


 「え?お会いしたことが……?」

 「……えぇ」

 真剣な顔をしていた熊さんが、ふっと懐かし情景を思い浮かべる様に目を細めます。

 「貴女は、麦畑を一望出来る丘の上で、泣いていました」

 んー?んんー?十一っつったら、ちゃんと覚えていてもよさそうなんだけど、さっぱり記憶に無いですよ?

 「確か、創世祭で食べたご馳走が、大切な友達のトリーだったとか」

 「あぁ!」

 懐かしきトリー!もちろん鶏である!名前が安直なのはスルーして欲しい!

 昔から、鶏の世話は私の仕事で、あの当時すでに過去世と合わせれば二十代中盤。けれど、精肉しか見たことの無いジャパン人らしいジャパン人であった私は、大切に飼っていた、毎日我が家に一個の卵を与えてくれる雌鳥のトリーを大切に大切に育てていて、それなのに、知らぬ間に食っていたと言う事実に驚愕すると同時に混乱してしまったのです。

 なんていうか、転生チートしたと言っても、子供の頃は子供らしい部分が出る訳ですよ。幼児逆行?もちろん回りの子供たちに比べたら大人なんだけど、過去の記憶を持った子供なのですよ。

 そんな訳で、私はお母様に告げられた衝撃の事実に涙し、丘にダッシュこいて泣き喚いた訳ですね。十一歳だけど。そういや、そん時誰かの胸借りてエンエン泣いてたような気がしないでもない。しかし、こんな特徴的な人だったら覚えていそうなものなのですが……流石にひげもじゃじゃなかったんですかね?


 「私は、命卵の数が徳の高さの表れだとは思っていません」

 おぉ、ミートゥーです。って話飛んだなぁ。

 「けれど、私の胸で泣きじゃくり、眠ってしまった貴女を見た時に、妙に納得してしまったのです。貴女はとても優しい。命卵の数が多いのも頷けると」

 やー、どうなんだろうそれ?普通に育った普通の子供なら皆最初はそんな感じじゃね?いや、やっぱり私が元ジャパン人だから感覚ずれてるんでしょうか……?

 「それから私は、結婚するしないは別として、貴女を見守ろうと決めました。直接お会いしたのはあの時だけでしたが、周りのものに、監…様子を見てもらい、幸せにしているかどうか確認していました」

 なんか今、監視とか言おうとしてませんでしたか熊さん?

 てか、なんか凄い、キャ○ディキャ○ディっぽくはありませんか?熊さんは森の熊さんではなく丘の上の熊さまだったんですか?

 「貴女は、朗らかで、元気で……、貴族の枠に囚われず成長していって……」

 貴族の枠も何も、名前だけで生活自体は農民ですからね。囚われようがありません。

 「私は、見守るだけで満足していたんです。ですから、部下から定期報告を受けるだけにとどめ、貴女の様子を見に行くことは控えていました」

 んーっと、それは結局、どっかしらから覗き見してましたってことですよね?森の不審者……いや、丘の上の不審者さま、か……?

 「ですが、三年ぶりに貴女にお会いして……」

 あ、覗き見は私が十三歳の頃までだったようです。

 「たった三年で女性らしく成長した貴女に、私は焦ってしまったんです」

 焦った結果が翌日の結婚申し込みですか。焦り過ぎではないですか熊さん?

 「こんな姿の私に驚くでもなく、笑顔を向けてくれた貴女に不覚にも胸が高鳴って……」

 ふわ毛から辛うじて確認出来る程度ですが、恋に恋する女の子よろしく、熊さんの耳がほのかに赤く染まります。

 「それで、私を娶ろうと?」

 俯いた熊さんが顔を上げます。そして、先ほど私がしたように、そっと私の手を取りました。

 「それだけでは、私は何もしなかったと思います。ですが……」

 「ですが?」

 「ヴァーラント卿が貴女を甥子と結婚させるつもりだと話しているのを聞いて……」

 「へっ?」

 もしや……、両親が土地をせしめて来たのは……

 「いえ、いえ!貴女の結婚を邪魔するつもりは無かったのです!ですが、調べてみるとヴァーラント卿の甥であるアルガという青年は良くない噂が多く……」

 まてまて、調べたってたった一日で……?

 「このままでは貴女が不幸になりかねないと思ったら、居ても立ってもいられず…しかし地方貴族であるヴァーラント卿に私が直接話を通してしまっては、権力の乱用となってしまいます。どうするか悩んだ挙句、先にこちらから申し込んでしまえばヴァーラント卿は手出しが出来ないだろうと考えました」

 結局のところ権力乱用だと思います!

 「私は侯爵ですから、儀礼的に一度断りが入ると思っていました。そうしたら直に取り下げるつもりだったんです。それなら、イルラン男爵家に傷は残りません」

 確かに、普通なら身分差があり過ぎるって言って断りを入れるべきだった!あ、でも……

 「ですが、それではフィオ様に……」

 「……お恥ずかしい話、私は変人と言われていますから、リヒティエリュート侯の気まぐれで済ませられたでしょう」

 ふむ……、つまりそんな感じで穏便に済ませようと思ったのに、ところがどっこいうちの両親が了承してしまったと。

 「まさか、お受けして頂けるとは思わず…こちらから取り下げる訳にも行かず……」

 「それでは、私たちの結婚は……」

 「いえ!違います!嬉しいです!」

 握っていた手に力が篭る。正直ちょっと痛いです。

 「……この気持ちが愛であるとは、まだ確信が持てません。ですが、私は……貴女となら……」

 「……恋は落ちるものですが、愛は育むものですわ」

 ってのは、なんかの漫画で読んだ気がする台詞。

 「リリー……」

 (たぶん)漫画の受け入りを熊さんが感動した面持ちで飲み込んだ様子。

 ていうか、あれ、なんだろう、なんか今凄いよさげな空気?


 結局、熊さんは私を監視してた挙句、断られるつもりで結婚申し込んだら断られなくって、流れで結婚しちゃったんだよね?

 あれ?あれ?

 と、思っていると、潤んだひげもじゃ顔がゆっくりと近づいてきたのです。

 お、お、お?

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