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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
1章:奥様になりました。
7/67

005 お嬢様はお怒りです。

2013/04/28 修正。

どうでもいい感じの小さな修正が入っています。

 なんと、旦那様はひげもじゃでした。熊でした。

 結婚式なのに、ヒゲ剃ってこなかったよこの人!?

 私は大きく目を見開いたまま、流されるがままに結婚式を終えたのでした。



 どうやら、私は物語よろしく、実は超絶美形が出てきてウハハな展開を期待していたようです。なのに、一回こっきり(貴族の離婚再婚は不名誉だから)の結婚式がひげもじゃ熊さんとですよ!結構淡白なつもりで、その実期待しまくってたんだなぁ……

 てな訳で、さりげなくショックを受けていた私は、披露宴のことをよく覚えていません。とりあえず、自分でデザインした紫のドレス(またもやマーメイドライン/お気に入りである)を着てお酒を飲んでいたらしいのですが、覚えていません。

 気がつけば熊さんのお屋敷に到着し、奥様(つまり私)の部屋に通されたらしいのですが覚えてません。

 とりあえず、今重要なのは、メイドさんに着替えさせられて私がシュミーズを着ていることです。ベッドの上に居ることです!

 そうです、初夜です!

 「申し訳ない」「いえ」しか会話の無かった相手、しかも三十代後半と思わしきひげもじゃ熊さんとの初夜です!二回目の人生は驚きの連続だな!つうか、お恥ずかしい話?いや、恥ずかしくない!恥ずかしい事ではない!が、私は過去も今も、ユニコーンに近づける乙女である!本気で初体験である!

 正直、怖いのと楽しみなのが半々な、耳年増である!知識はある!偏った知識がある!

 「うわーどうしよう、どうしてればいいんだ、マグロか?マグロでいいのか?」

 そわそわです。ちょっと色々シュミレーションしよう、うん、それがいい。


 …………

 シュミレーションしてます。


 …………

 シュミレーションしてます。


 …………

 シュミレーションしてます。


 …………

 シュミレーションしてます。


 …………

 シュミレーションしてます。


 …………

 鳥がチュンチュン鳴いてます。



 ……朝だよ!?旦那こなかったよ!?

 ちょっとぉ!いったいどういう事か!プロローグを省いて四話目なのに、事態だけは進展してんのに、ここまで熊さんとなんの絡みが無いとは何事か!!

 ちょっと流石に憤るね!よくわからん怒りが沸々と沸くよ!

 私は、憤懣やるかたないと言った表情のまま、部屋を飛び出そうとして固まりました。熊さんの部屋しらねぇ!まぁいい、廊下に出てメイドさんでも捕まえよう。

 そう思って、ドアを開けると、居ました。

 大きな熊さんがドアの前に居ました。すごいびっくりした顔で居ました。ノックしようと右手を上げたままの姿勢で、しかもその横に今にも眠りそうな顔して執事頭と思わしきおじいちゃんまで居ました。

 頭を高速回転させます。つまりあれですか、夜訪ねようとしたけど、入るのが戸惑われたのか、ノックするーしないー、ノックするーしないー、と悩みに悩んでそのまま朝を迎えたせいで、おじいちゃんが眠そうなのか!熊さんはシャイか!

 「あの……」

 声をかけた瞬間


 だっ!


 逃げた!ちょ!あの熊逃げやがった!

 まてこのやろう!テンプレな行動しやがって!

 追いかけます。当たり前です、逃げられると追いたくなるのが人の本能です!多分!!

 「あわわわわわわ」

 追いかけられていることに気付いた熊さんが、某ア○オさんのようなダンディボイスで情けない声をあげています。萌えるからやめろ!

 「待ちなさい!止まりなさい!」

 こちとら、精神年齢三十代!多分同い年ぐらいじゃ!

 訳の分からない理論を展開して命令口調で追いかけます!

 熊さんはもう一度振り向いてから、口をパクパクとまるで酸欠のお魚さんのように動かしています。

 「…っくをぉ……!」

 「くお?」

 熊さんは息が上がり気味だけど、私は余裕。なんせ、毎日畑仕事で体力だけはあるのだ。

 「服を着てくださいぃぃぃぃ」

 「服?」

 ぴたりと足を止めて、自分の格好を見る。

 そうでした。シュミーズでした……


 「ぎゃぁああああああああ!!!!!!!!」


 乙女らしくない絶叫を上げた私に、ゼーゼーいいながらロングカーディガンをかけてくれたのは、もうすぐお迎え来ちゃうんじゃないの?って年齢のおじいちゃん執事頭(たぶん)でした。



to be continue...






 しないよ!このまま続くよ!とりあえず、舞台は私の部屋に戻るよ!

 幸い、この屋敷に勤めている使用人さん方は熊さんが私の部屋の前にずっと居るせいで、ここいら一帯は避けていたらしい。おかげさまで、失態を見たのは熊さんと家令(大体合ってた?)さんだけで済みました。

 もちろんちゃっちゃと着替えました。んで、今はひげもじゃさんとお茶してます。気まずい空気が漂ってます。ひげもじゃ熊さんは多分シャイです。もしかすると無口です。

 私か。私が話さないと何も進展しないのか。そうなのか。

 メイドさんたちも下がって二人きりですし、頑張って話しかけようと思います。動物を手懐けるには、まず餌ですが、持ってないので誠意のほうで頑張ります。ほら、某風の谷のなんちゃらで「いたくない、いたくない」とかやってるあれです。まずは、こちらが心を開くのです!

 「その…グラフィーオ様……?」

 そうです、ご紹介が大いに遅れましたが、ひげもじゃ熊さんはグラフィーオ・リフ・フェイ・アステリグライ・リヒティエリュートとか馬鹿長い舌噛みそうなお名前です。ちなみにそれ以外の詳細は一切知りません。

 「……あ…フィオと、呼んで下さい……」

 奥手だ!多分奥手のシャイの人付き合い苦手な引っ込み思案だ!

 「かしこまりました、フィオ様。では、わたくしのことはリリーと」

 「はい、リリー」

 うわぁ、ヒゲで見えないけど多分今嬉しそうに笑ったぞ。なんだこの可愛子ちゃん!操作しやすそうだ!今のうちに優劣を決めておかねば!誠意はいい、尻に敷く準備だ!

 「フィオ様、私は少し怒っています」

 わざと眉根を寄せます。熊さんはそれを見て困ったように眉尻を下げました。

 「結婚の申し出を受けた後、フィオ様とお話しする機会も無く、こうしてお屋敷に入ったと言うのに……女の口から申し上げるのも恥ずかしい話ですが、結婚初日だと言うのに私の部屋を訪ねて下さりませんでしたね?しかも、顔を合わせたとたんに逃げ出すなんて……」

 唯でさえひげもじゃの熊さんなのに!と声に出せない怒りも入れておく。いや、嫌な訳じゃないけど。なんか熊さん可愛いけど。

 「もっ…申し訳ない……そのですね……いや、なんというか、その……」

 と、続けながらどんどん顔が俯いていく。あーもう!頭撫でくり回したくなるぅ!!

 私が欲望と必死に戦っていると、プルプル震える私の手(撫でくり回すのを我慢しているせいで震えているのだ)を見て、勘違いしたのか、青ざめた表情(目元しか見えないけどな!)で私を見詰めます。若干涙目なのが馬鹿可愛いです。

 「すまない!貴女が怒るのももっともだ……私が強引に話を進めてしまったせいで……貴女は……望みもしない……こんな…私なんかと……」

 勝手にどんどん落ち込んでいく。どうしよう、物凄いすれ違ってる。

 私が怒ってるのは、初夜にほっとかれたから(淫乱ではない!決して淫乱ではない!)だし、その後、熊さんが逃げたからです。しかし熊さんの中で何故か私にとって望まぬ結婚をしたことになっているらしい。むしろ、望んでなかったら、来なかったことに怒るどころか、ほっとしただろうと思うのは私だけ?

 決して淫乱ではないことをアピールしつつ、この誤解を解かねば……

 「フィオ様……?」

 とりあえず、そっと熊さんの手を取りました。顔はもじゃもじゃだけど指毛は標準より薄いくらいだ。と、そんな感想は今はいいんだって。

 「私はますます怒っています」

 急速にひげもじゃさんの手が冷たくなっていきます。うわ、なんか、凄い可哀想!私のせいだけど!

 「私、一度でもこの結婚を望まないと言いまして?そんな態度とりまして?私が怒っているは、く…フィオ様が私を避けるからです」

 意味が伝わったのは、手の温度で分かりました。みるみる手が暖かくなったもので。

 「その……リ、リーは……嫌ではないと…?私との結婚は嫌ではない……?」

 不安げな顔で覗き込まれます。上からだけどな。

 「どうしても嫌でしたら、お父様に嫌だと訴えています。聞いて頂けなかったら、今頃家出していますわ」

 「ですが、私はこんなで……」

 「なにがこんな、なのでしょう?私はまだ何にもフィオ様の事を知りません。知ってからでなければ嫌うことも出来ません」

 熊さんがはっとした顔になります。目だけで表情を見分けるとな!

 「避けられてしまっては、知ることが出来ませんわ。私のことを知って頂くことも出来ません。ですから、沢山お話をしましょう?」

 「わ…私は、知っています」

 へ?

 「いつも、朝早くから家族の為に朝食を作っていることも、畑仕事を頑張っていることも、飼っている鶏に『ローストチキン』と名付けていて、成長を楽しみにしていることも知っていますっ!貴女のことを調べて!その、それでっ……!」

 猛烈に早口になっていた熊さんが顔を上げると同時に止まります。多分私の顔を見たせいです。

 私は熊さんの「貴女のことを調べて」という台詞のせいで、かなりのビックリ顔になっているはずです。


 今、私の脳みそには、この言葉が駆け巡っていました。


 熊さんは、

 ス ト ー カ ー で し た ! ! !

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