059 脇役街道です。
これが物語なら、私って本当に脇役ですよねー
なんて、思ってしまうわけです。
だってそうでしょう?知恵無し、魔力無し、特別な存在でも無し。横を向いてみると、主役とは斯くや在らんて感じの破天荒系主人公な鳥さんに、そんな主人公に振り回されながらも何故か毎回危険フラグを持ち込むお転婆系ヒロインレーテ様。
あー、熊さんも中々脇役キャラしてますよね。普段は弱気だけど主人公を諌める勇気があるギャップ萌え?それで言うと私はその妻で主人公にアドバイスとかするポジでしょうか……でしょうね……。
そんで、危険に飛び込む主人公とその夫の帰りを不安に駆られながら待つ感じ。
そう、今まさにそれ。
「なにこれ……」
只今、ポツンと一人で四人の帰りを待っております。
そりゃあ、エレースちゃんとレーテ様のことは心配しております。熊さんと鳥もね。
でもなんか、心配する必要ないんじゃないかなーって思っちゃうのもまた本心です。
私が、ポツンするまでをダイジェストで振り返ってみようかな……
私の声掛けに、消えかけていた風の精霊さんと思わしき人(?)の存在が少しはっきりとしたものに戻りました。
――助けて?――
急に、なんて言えばいんでしょうね?こう空気が重くなったというか、冷えたというか。動くことも声を出すことも許されないような緊迫感が漂いました。
――この我に、助けを乞うというか娘?――
「は、はい……」
なんとか声を絞り出して答えると、また一段と空気が冷えたような感覚に襲われます。
――我が何者であるかわかってのことか?――
「わ、わかりません。精霊さんとかの知識さっぱりなんで、凄い精霊さんなんだろうなーってことぐらいしか……」
正直に答えたのですが、風の凄い精霊さん(?)はだんまりです。
「此の方は……多分…、いえ失礼致しました。貴方様はもしや一位精霊をも凌ぐ存在――風の王では在らせられませんか?」
熊さんが姿勢を正し、風の王(かもしれない?)に問いかけます。
――如何にも――
さっきまでの楽しそうな声音はなく、無機質で何の感情も乗っていない声が響きます。
――その我を、何の対価もなく使おうと言うか、娘?――
ぅぉぉ、このプレッシャー相当です。
カムバックさっきの空気!!
私は冷や汗ダラダラです。
どう答えればいいのか、両手を握り合わせて必死に考えていると横から威勢のいい声がしました。
「対価を望むなら、ボクが払う!なんでもする!命だってなんだって渡す!だから手助けが欲しい、ボクの……ボクのミーナを助ける為に!!」
――この我の働きがお前の命ごときで賄えると?――
「ボクに差し出せるものはこれしかない……」
鳥さんが、悔しそうに手を握りしめて俯きます。
風の王は無言です。
って言うか、助けたいのはレーテ様だけじゃなくてエレースちゃんもです。
私もっ!と叫ぼうとした刹那、熊さんの声が重なりました。
「私には、この命を対価とすることは出来ません……私には守りたいものがある。その守りたいものを守る為に、己を差し出すことは出来ない。それでは守ったことにはならない……」
あぁ、尤もな意見です。自分を助けた代償に相手が死ぬとか、すっごい嫌です。レーテ様も嫌がるだろうし、エレースちゃんを残して死ぬとか無理です。危うく考え足らずに命を差し出す所でした。
そう思うと、ちょっと冷静さが戻ってきます。
「ごめんなさい、風の王様。ちょっと私、考え無しでした」
――うん?――
よくわからないという風に、風の王が声を発します。
「鳥さんもですよ。もし、風の王様の力を借りて二人を助け出せたとしても、私達が死んじゃったら二人は喜びませんよ。むしろなんでそんなことしたのって怒りますよ、レーテ様とか絶対怒ります。んですっごい泣いちゃいますよ、これは確実ですね」
鳥さんが私の言葉を受けて、口を「あ」の形に固まります。鳥さんもわかったようです。
「だから、ごめんなさい風の王様。命は差し出せません。まぁ、それも対価にならない見たいですし、伝言は受け取りましたということでお帰り頂くことに……」
ペコリと頭を下げて風の王の言葉を待つと、急にふわりと私のまわりで風が起こります。空気がやんわりとしたものに変化していき、私は頭を上げました。
――……っ!……っっ!!――
なんだろうこれ、もしかしなくても爆笑されてませんか?必死で笑い堪えてませんか?
え、何これ、なんなの?
――ふはっ……んん……。久々に奴等以外で面白い者にあったものだ――
いや、威厳たっぷりな話口調ですけど、なんか取り繕った感漂ってますよ?
――どれ……――
なにやら風の王の周りで強く風が吹きます。
なんだろうと思っていると、そばで鳥さんが「精霊達がこんなに……」とか呟きました。どうやら、風の精霊さん達が風の王の周りに集まったようです。そうか、私風の属性皆無だから見えないんですね!熊さんもきょとん顔なので、鳥さんにしか見えてないようです。あれですかね、風の王は見えるんですがもしかしなくても見えるようにしてくれてるとかそんな感じなんでしょう。良くある展開、良くある展開。
――ふむ。我が眷属……お前の嫁候補と、土の眷属、お前の血族が攫われたのだな?――
把握はえー。さすが風?
「はい」
答えたのは熊さんです。
――それを助けずに戻れば後でシイになにをされるかわかったものではないな……いいだろう、我が力、貸してやろう――
なんかカッコいい風ですけど、すっげぇ尻に敷かれてる感漂ってますよー!
とは、本人を目の前にして言えるわけがありません。
っていうか、そのシイって副長さんは一体何者ですか?そもそも風の王を伝言に使う時点でどうなんですか?会わせろって言ってたんだよね?やだ、ちょっと会うの怖い……。いや、楽しみなような気がしないでも……?う~ん?
なんて悩んでいる間に、風の王と二人が話を詰めています。
どうやら風の精霊に呼びかけたので既に二人の居場所と状況が掴めたらしく、乗り込んで一発ぶちかませばいいじゃん的に風の王と鳥さんが言ってるのを、熊さんが慎重にって諌めていた様子。
なんでか内緒話の如く固まってはなしているので、内容が途切れ途切れにしかわかりません。
「あのお方が……」とか「派手に立ち回っては……」「ことが王宮に波及しては……」とか不穏も甚だしいです。
結局、こっそり救出しつつ、マー様に連絡を取る形で落ち着いたらしく、熊さんが役に立ちそうな武器を地下に取りにいき、鳥さんが風の王と経路の確認をしていました。
「それではリリー、待っていてください」
戻ってきた熊さんに、しっかりと肩を抱かれ強く言われたら「はい」としか言えるはずもなく、出て行く二人と風の王の背中を見送って……
んで、この状況です。
アムイさんとかアーノンさんは熊さんに言われてマー様への連絡と熊さんの部下への伝達に走っていますし、メイドの皆さんには心配しないようにと言い含めて各自部屋で休むように言ってあります。
私は応接室で、温くなったお茶を飲みつつ、転生したけど過去のことはおぼろげにしか覚えてないとかよくあるし、そう考えるときちんとしっかり過去を覚えている私はチートと言っていいはずだよね?
でも役に立ったのは服のことぐらいだし……
「自分、転生した意味はどこにあるんですかね?」と無駄にしか思えない自身の転生チートの在り方について思い馳せる(?)ことになったのでした……
あーほんと、転生チートの意味がない!!
書かないのも面白いかなって思っているのですが、救出篇書いたほうがいいですか?
さくっと終わるよ多分、さくっと。
どうなんでしょう?




