058 風の……!!
魔法についての解説は「注意事項、世界観説明的な何か。」でしてますので、「ようわからん」と言う方はどうぞご覧下さい。
シリアスな振りをしてシリアスではない。
あれおかしいななんだろうかぞくだんらんのはずだったのになにがおきてるんだろう
「ミーナっ……ミーナ……」
「エレース……」
王警団服のまま我が家に飛び込んできた鳥さん。焦燥した熊さんの手には一枚の手紙が握られています。
「と、とにかく事実確認をしないとだと思うんです」
私は、混乱したままなんとか頭を働かせようとしますが、当たり前のことしか言えずにいます。
「事実確認!?何がさ!どうやって!?」
ローテーブルには封筒と、その中からはみ出ている金髪と黒髪……
「だ、だって、攫ったって言っても、そのか、髪…本物……」
そうです。
手紙の内容はレーテ様とエレースちゃんを攫った、返して欲しくば用件を飲めという安直なもの。
この平和な世界で、神の平穏を第一に考える世界で人が攫われるなんて……
固く両手を握り合わせて、私はずっと封筒を凝視することしか出来ません。
「…………」
熊さんが、静かに息を吐きました。
「ウォーク、私も協力しますので何とか風の三位、いえ二位精霊の召喚をしましょう」
「二位!?ボクが契約した最高位で四位だよ!?そんなことできる訳ないじゃないさ!」
熊さんが以前教えてくれました。
この世界で魔法と言われているのは精霊術で、その精霊は力の強さで十の位に分けられているそうなのです。この世界最強と言われる竜であっても召喚出来るのは三位が精一杯と言う話だったので、熊さんが言っているのはとてつもない無茶なのだということはわかります。
お約束と言うか、過ぎた力は身を滅ぼすらしく、あまりにも巨大な力を持つ精霊を召喚しようとするとその精霊の怒りに触れて殺されてしまう可能性があるとか。
「以前、アスタ様が獅子族の青年と協力し<決して呼んではならない風の精霊>を呼んだと言っていました」
ちょ、何ですかその<決して呼んではならない風の精霊>って。怖いです。すごく怖いです。
「はぁ!?アスタは水だし、獅子族は火の眷属でしょ!?」
「はい。本当は三位精霊を呼び出すつもりだったのだと聞いています。当時アスタ様は水の五位精霊を呼び出すので精一杯の実力しかなく、獅子族の青年に至っては火の八位精霊がやっとだったとか。それでも彼のお方を呼び出すことが出来たのです」
「あのねぇ、アスタは竜だよ!?竜!!ボクたちとは魔力が桁違いでしょ!!」
「わかっています。アスタ様は水の眷属でありながらも、彼のお方を呼び出した。風の純属性である貴方が居れば……」
「無理だよ!例え呼び出せたって、姿が見えるわけがないじゃないか!見えない話せないじゃ意味なんかない!!」
「しかし……」
「それにもしも怒りを買ったりしたらどうするのさ!?王都一帯を焦土にするつもり!?」
訳がわかりません。二人は怖いこと言ってるし、私は何も出来ないし……
なんで私はあちらの知識を持って生まれたのに何も出来ないの?もしも、頭が良かったら、ちゃんと色々覚えてたらどうにか出来る技術を編み出せたかも知れないのに……
でも、こんな私にも出来ることはあります。
そう、私にしか出来ないことが……
「あ、あの……」
意を決して二人に声を掛けます。
「なに!?」
ちょ、鳥怖い。苛立ちをこっちにぶつけないで下さい。
「私が、行きま……」
「駄目です!!」
く、熊さぁん……
「でも、その手紙には私と交換って書いてあります。私が行けば……」
「どうせ、毒の属性のことを全くわかっていない術者崩れが貴女を利用しようと思っているだけです。行って役に立たないと知れたらどうなります?私は貴女を失うわけには行かない!」
あれ?熊さんがちょっと黒いです。しかも気遣い消失で思いっきり役立たず言われました。
「でも、二人は戻ってきます。人質二人より、一人の方が助けやすいし、先に色々打ち合わせしておけば上手く行くかもしれないじゃないですか」
「リリー!お願いですから、これ以上……っ!」
凄く、辛そうな顔で叫ばれてしまいました……
でも私には他に解決策なんて見出せません。
「そもそも、その、風の精霊?を呼び出してどうするつもりなんですか?」
全然わからないのですが、この世界が万能じゃないことぐらい私も知っています。超強い精霊を呼び出したからといって、簡単に解決出来る問題じゃないんじゃないでしょうか。
そう思っての問いかけです。
「ウォークが契約している精霊は四位です。簡単な意思の疎通は出来ても高度なことを頼むことは出来ません」
「それはつまり、エレースちゃんとレーテ様を探すことが出来ないってことですか?でも、前に自警団の方から手紙が来たことがあるって……」
私がマー様に絡まれていた時に熊さんが飛んで着てくれたのはそのお陰だと後から聞いたのですが……
「それぐらいは出来るさ!元々グラフのそばに飛ばしてたらね!でも、今はミーナにもエレースにも精霊はつけてないでしょ!?」
いや、つけてないでしょって言われても知らないですよ。
「あの時は、風の精霊を扱える団員が二人の精霊の内一人を私に付けていたんです。何か言付けがある場合は、付けている一方の精霊の気配を辿って、もう一人の精霊が私のところに来る。そういう風にしか出来ないんです」
「それが、高位の精霊だったら違うことが出来るということですか?」
「出来る、と聞いています」
ちょっとぉ!何その不安な感じ!!
「四位じゃ出来ないんですよね?でも二位だったら出来るかもしれない?」
「はい」
「それ、なんか不安な賭け過ぎませんか?ちょっと冷静になりましょうよ。そゆことしなくても助ける方法はあると思うし……」
「冷静になんてなれるわけないじゃないさ!!」
「だぁ!!うっさい鳥!!だからといって興奮してても何も浮かばないでしょ!!!」
思わず私が興奮です。
――おい――
「じゃあ何かいい案でもあるって言うの!?」
――おい?――
「無いですよ!無いから冷静になろうっつってんですよ!!」
――おい!――
「うっさい!」
さっきから「おいおい」と声を掛けてくるほうに怒りをぶつけると、そこになんか居ました。
こう、なんて表現したらいいんですかね。凝縮した何かがモヤモヤと人の形になったような……
呆けて見ていると、その凝縮した人の形のなんかがクツクツと笑っています。
――人の分際で我に「うっさい」とは……中々面白いな――
あれー、なんかこれってあれですか、良くある展開ですか?
「えっとぉ、ごめんなさい……」
――うむ、きちんと謝ることは大切だ――
よくわからない何かがウムウムと頷いています。
「もしかして、風の高位精霊さんとかだったりします?」
――ほう、察しもいい娘だな――
「ありがとうございます」
ほら、ファンタジー小説読み漁ってるし。察しが言いというかテンプレっていうか?
いや、これ、テンプレではない?
普通は都合よく精霊とか出てこないよね。
なにこれ。
――シイから託けられて来たのだがな――
誰ですか、そのシイって。
「副長、から……?」
呟いたのは熊さんです。
副長ってたまに話題に出てた、無茶振りの人ですかね?
――そこの我が眷属よ、お前シイに手紙を出していただろう――
「あ?え?出した、けど……」
おぉ、珍しく鳥まで呆けています。
――その返答だ。「やったるからさっさとその嫁候補つれて来い」確かに伝えたぞ――
うわ、なにその気が抜ける言葉。
「……?」
鳥、理解してないよ?
――ついでにそこの地の眷属――
今度は熊さんが標的のようです。
「は、はい……?」
――「てめぇなんで勝手に結婚してんだ。嫁見せに来るぐらいしやがれ。母ちゃん寂しいぞ」だそうだ――
「は、はぁ……」
――伝えたからな?――
鳥さんが眷属ってことは風の精霊らしいよくわからない何かの姿がすぅっと消え……
「ちょ、ちょっと待った!助けてください!!」
気侭な風の精霊ならここで首突っ込むのがテンプレでしょうが!!何消えようとしてんの!!
アスタ君は、壮大な厨二小説の登場人物です。海龍族だったりします。
副長が壮大な厨二小説の主人公だったりします。
この後シリアスになりそうでならないので期待はしないで下さい。




