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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
5章:王都で大奮闘…できた?
57/67

055 王宮毒殺未遂事件!?

7/15 ミス投稿から、直してお話掲載。

長らくお待たせいたしましたorz

 あれー?これからドロドロとしてた宮廷サスペンスが始まると思ったんですが……


 私の言葉にメイドさんはきょとんとした表情を浮かべ、私の瞳をじっと見つめました。そうして、紫が毒を示すことが思い浮かんだのか真っ青な顔に変わります。

 「まさか…そんなっ……!」

 驚愕の表情で一歩後ずさると、拳を握り合わせフルフルと体を震わせます。彼女がどう動くのか、私は無言で見つめつつ私()どう動くのかを必死に考えました。

 思いつめたようにも取れる表情のメイドさんが、自身の目の前にあるワゴンの存在を忘れ、ワゴンを挟んで対面していた私に追いすがりました。カチャリ、と茶器が倒れる音がします。

 「違います!あたし……あたし知らなっ……」

 扉の前でぐうたらしていた護衛官さん達が、流石に異変を感じ取って私達を見つめます。

 「あぁ、お茶がこぼれてしまってますね。私も丁度厨房に用事がありましたし、一緒に行きましょうか~」

 今、護衛官さん達に騒がれるとちょっと嫌な展開になってしまいそうだったので、カタカタと身を振るわせるメイドさんの背中を押してワゴンも一緒に廊下の角を曲がります。

 どうやら護衛官さん達が追って来る様子もないし、長い廊下に他の人も居ないので私はそこで立ち止まりました。

 「あた…あた……」

 メイドさんがガタガタ震えています。目にはうっすらと涙が溜まって、今にも零れ落ちそうです。胸の前で握り合わせている手は真っ白になって、痛々しいまでに彼女が動揺しているのが伝わって来ました。

 「とりあえず落ち着いてください」

 ポンポンと背中を軽く叩いてあげていると、まるで呼吸の仕方を忘れたかのような不器用さで浅い呼吸を繰り返しています。今にも過呼吸を起こしてしまいそうです。

 「駄目ですよ、ゆっくり息を吸って、ゆっくり吐いて」

 私の言葉に従って、メイドさんがふるふると震えながらもゆっくりと深呼吸します。

 「そうです。吸ってー、吐いてー」

 暫くして落ち着きを取り戻したメイドさん。

 「あっ!つ、ついて……」

 急に自分の服の袖を怖ろしげに持ち上げます。

 「ん?あぁお湯がついちゃったんですね。やけどしてませんか?大丈夫です?」

 「ど、毒……、毒……」

 顔面蒼白です。

 「毒、どれ、これ…、だいじょ……」

 あぁ、また呼吸が荒れて……

 「大丈夫ですよ、大丈夫ですから、ゆっくり呼吸です。ゆっくりー、吸ってー吐いてー」

 「は、はい」

 またもやメイドさんの背中を撫でて呼吸が落ち着くのを待ちます。どうやら、どれに毒が混入されているのかわからず、袖についたお湯に過剰反応してしまったようです。つまり、除外していいのかな。これが演技だったら凄いもんね?

 「さて、どうしましょうねぇ……」

 「ど、どう、とは……?」

 私ののんびりとした物言いに、メイドさんがやっぱり肩をふるふる震わせます。

 「やー、ほら、あなたはどうやら本当に何も知らないみたいだし、どこで混入されたーとか、誰がーとか調べないといけないじゃないですか?後、このことをマセラーセト王子殿下にもお伝えしないといけないけど、あなたが変に疑われちゃうのも嫌だし、だからって、無かったことにすると隠蔽だからもしもばれた時私も危ないし、解決まで個人的に動いてなんで報告しなかったって怒られるのも嫌だし……う~ん……?」

 こういう陰謀めいたことは苦手と言うか好きじゃないというか。快活な冒険ファンタジーばかりを読み漁っていたので、どういう風にすればいいのかさっぱりですな!

 うんうん唸っている私に、メイドさんが「あの……」とおずおずと語りかけてきます。

 「はい?」

 「わた…私、大丈夫、です。あなた様にご迷惑かけられませ、ん……。私、何も知らないもの…だから、ちゃんとお話通して、くださって、大丈夫、です……」

 うわぁ!なんて気丈なんでしょう!抱きしめたい可愛らしさ!!

 髪をひっ詰めて、お団子にしているためキリリとした面持ちに見えましたが、よくよく見るとまだ幼さの残る顔立ちです。同い年ぐらいでしょうか?私なんかは過去世と合わせると三十越えてるもんだから、外見上同年齢でも年下を相手にしている心境になりますね。

 うん、彼女もこう言ってくれている事だし、マー様のところに行きましょう。

 あの傍若無人オッサン王子が怖いこと言っても絶対守る!と心に決めて、私は頷きました。


 「ふぅん……。で、どれに?」

 まるで興味無い、と言った面持ちのマー様がチラリとお湯の零れたワゴンを見やります。

 「紅茶匙ティースプーンですね」

 私の背中で匿うようにメイドさんをやや後ろに立たせ、私はそう答えます。

 「匙ねぇ」

 美しい細工の施されたティースプーンをマー様が一瞥。その直後、ノックの音が響き、レーシさんが毒に詳しい方を連れて着ました。

 「失礼致します」

 現れたのは、青いローブを着た女性、茶色のローブを着た女性、緑色のローブを着た男性です。各々が、ローブの色よりも若干薄い、髪と目の色をしています。

 「毒が見つかったとお伺いいたしましたが……」

 口を開いたのは青の女性。キリっとした、キャリアウーマン!と言った雰囲気の持ち主です。

 「うん、紅茶匙だって」

 マー様に言われ、三人が匙に近づきます。

 「植物性ではないようです」

 「地の毒でもありません……」

 「……水に属しますが、これは毒ではございません」

 …………

 「へっ?」

 間抜けな声を上げたのは勿論私です。

 「これは、消毒液ですね」

 「しょ……消毒液……」

 青の女性が、ティースプーンを持ち上げ、ぺろりと舐めます。

 「えぇ、消毒液です」

 「消毒液ですか……」

 「えぇ、消毒液ですわ」

 「…………」

 あ、痛い、視線が痛い、やめて、ごめんなさい、だって、毒の気配がしたんだもん、しょうがないじゃん!

 「ねぇ、ミーレリリー?」

 いやぁ!マー様の猫なで声が怖いぃ!

 「は、はい」

 私は視線を斜め上に逸らしつつ返事をします。

 「君、もしかして毒と薬の区別つかないわけ?」

 怖い、怖い怖い、その笑顔が果てしなく怖いです!

 「あ、はは……、どうやらそうみたいですね……」

 だって、お薬のお世話になったことないし!

 「……そう」

 あ、あ、あ、あ……

 どうしようこの空気……

 「で、なんで今日に限って毒だって騒ぐことになったのかな?」

 マー様が、青の女性に顔を向けます。

 この役立たずはとりあえず捨て置きらしいです。

 「使用している消毒液はアショラオですね。これは、強力な殺菌性がありますが、微量ずつでも摂取を続けると体内に蓄積し、胃に炎症を起こします。量が過ぎれば皮膚、頭皮にも回り……」

 「つまり、摂取し過ぎは毒ってわけ?」

 「そうなります。その為、殺菌後は流水で洗い流すことが義務付けられております」

 「そ、そうですよ!ジャパンではですね、薬も飲み過ぎれば毒になるってことわざがあってですね!」

 「黙って」

 「はい……」

 冷徹な声に、私は俯きます。

 「つまり、今日に限って洗浄を忘れていたってことかな」

 ギシリと、マー様が椅子に凭れかかる音がします。

 「過剰摂取により毒となるのでしたら、長期的に殿下の毒殺を狙ったのかもしれません」

 今まで無言で控えていたレーシさんがそう言うと、青の女性がそれを否定します。

 「アショラオは苦味が強いので、紅茶に溶け込ませても直ぐに味の違いに気付きます」

 「つまり、完璧に厨房のミスってことだね」

 「そうだと思われます」

 あぁもう、私の役立たず!と、自己嫌悪に嵌っていたのですが、役に立たないってことはお役御免じゃない?あれ?これチャンス?とか思いました。

 なんだ!解放されるじゃん!と、私が顔を上げるとそこにはニコニコとしたマー様……

 「苦い紅茶を飲まずにすんだよ。これからもよろしくね、ミーレリリー」


 あぁ……解放はしていただけないようです……

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