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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
4章:街に出れば。
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046 街を巡ります。

閑話なお話。布石は無い。

熊さんいい人ですよアピール話とも言える。ヘタレ通り越してるけど。

 呆けた顔で見れば必死に言い訳する旦那さま。そんな姿を見て可愛いなぁコイツ。なんて思う、朝でした。


 でした。なので、今は昼です。熊さんと街にお出かけしています。エレースちゃんはお留守番というより、今日もお稽古です。

 「その、男性は……だから、あの」

 なんて、横で未だに熊さんがしどろもどろしています。

 「わかりましたって」

 私が寝ている間に、抽出をしていた夜霧の露の小瓶を、とある場所にお届けすると言うので、着いて行く事になりました。なんか熊さんが「本当ですので!着いてきて頂ければわかりますので!」とか必死になるので、まぁ昨日は街で散々だったし、楽しくお出かけもいいかな?と思います。

 二人で街に出ると、熊さんはやっぱり人気者らしく、皆さん声をかけて逐一熊さんをからかいます。威厳熊の態度を一生懸命貫いているのですが、皆さんには本質がバレバレのようです。つうか、生まれ育った街だもんね、当たり前ですよね。まぁ、からかいつつも、色々なモノをくれるので、これは祝福されているんですよね。それなのに、もうすぐここを離れなきゃいけないなんて、ちょっと寂しい心境です。


 「うわー、おっきぃー……」

 熊さんのお屋敷も相当の大きさでしたが、街のはずれにそびえる私たちの目的地は、屋敷と言うより城でした。

 「すごいですねー!こんなとこ初めて入りますよ!お城ですよ、お城!」

 「そうですね、すごいですよね」

 なんて、熊さんも呟きます。

 「でもなんか、お城が病院っていのも変な話ですね」

 そうです。このお城、病院だったりします。元々、熊さんが住んでいたらしいですよ!でも、お父様が亡くなって暫くしてから居を移したのだとか。しばらく、空き家(空き城?)になっていたのですが、街の人たちの要望で病院を開設するときに、空いてるからここにしちゃえって、お城を病院にしてしまったそうです。

 「豪胆な話ですよねぇ」

 「そう…ですか?」

 「そりゃそうですよ。いくら、部屋数が沢山あるからって、お城を病院って」

 そんな話しをしつつ、門をくぐります。玄関まで、微妙に遠いですが、庭園が広がっているのでわき見をしつつなら苦になりません。ちゃんと専属の庭師さんが整えているらしく、たまにいる入院患者さんの憩いの場になっているそうです。

 お城の中は豪奢ごうしゃでしたが、中に入ると静かです。こんなに大きいのだから、患者さんがひしめく大病院のロビーを想像していたのですが……

 「経営状況大丈夫なんですかこれ?」

 と、思わず心配になるくらいです。受付代わりのテーブルには誰も居ないし、私たちの話し声だけが玄関ホールに響きます。

 「たまに、ちょっとした怪我をした人や、毒の誤飲をした人が来る程度ですから……。経営という観点で見れば赤字ですが、病院があるということで街の人々が安心出来るなら、いいかと」

 そう言って、熊さんが微笑みます。あー、ほんと、いい人に嫁いだ私。パパンありがとう。

 私が転生したこの白の世界は、神の夢の世界。だから、疫病が流行ることもないし、神がお悲しみになるからと言う信仰心をみんな持っていて、戦争と言われるような領土争いはありません。魔物がいるけど、殆ど表に出てくることは無いし。だから、病院ってほぼ要らないんですよね。うつつの病院、医学をイメージすると、この世界はかなり遅れているのですが、だって病気しないし、怪我も少ないんだからしょうがないですよね。やけに薬学が発達しているのですが、滋養強壮とか解毒とかそんなもんです。

 そんな訳で、この夜霧の露は、滋養強壮の為に病院に卸すわけです。


 さて、場面は変わって自警団に来ています。何でだ。

 まぁ、病院では普通に院長さんにお薬渡したら、「ちょっとは自分用に取っておきましたか?」とかニヤケ顔で熊さんがからかわれた程度でした。まぁ、自分用に少し残してあるそうですが。って言ってもそのまま使うわけじゃなくて、調合すると何らかの何かになるそうです。よくわからないけど。

 で、なんか外に出たら風が緩く吹いて、紙がぽそりと落ちてきたわけで。私には良くわかりませんでしたが、メモ紙に熊さんじゃないとどうにも出来ない案件があるとか何とか。

 「お茶をお出しして」

 と、自警団の執務室に居た男性が、部下に指示します。アムイさんと仰る方で、自警団の管理をなさっているそうです。あれ?熊さんの会社の広報部の人じゃなかったっけ??

 「どうも、お久しぶりです」

 と、お茶の準備が整い、挨拶をしようとした時に言われました。結婚式と、前に熊さんに用事だとかでお屋敷に来た時、ちらりと顔を見た程度だったのですが、こちらも「お久しぶりです」と返します。

 「奥様からしたら私は二度しか会ったことが無い人間ですが……」

 アムイさんの言葉を熊さんのゴホンゴホンと言う大きな咳が塞ぎました。

 「なに、ごまかそうとしてるんですか、グラフ様」

 あ、この咳はなにかやましいことを隠したい、余計なことは喋るんじゃない!の咳込みだったんですね。お茶に咽たのかと思った。

 「私は、本来はグラフ様の部下として広報を担当させていただいていたのですが、仕事干されてしまったので、自警団のほうに詰めているんですよ」

 ニヤニヤしながら、アムイさんが熊さんを見つめます。どうやら、アムイさんは飄々とした方のようです。後、多分(エス)

 「干された?何でですか?」

 私の問いかけは熊さんに向けてのものです。

 「いや、あのだな……」

 「私は、基本的にヴァーラント領の広報活動を担当していたんですよ」

 と、涼やかな顔で私に笑いかけます。ふむ、ヴァーラント領とな。なんとなく、このたくらみ顔が言いたいことがわかった気がします。

 「えっと、数年間ご迷惑をお掛けいたしました」

 ペコリと頭を下げます。

 「いえいえ、とても楽しかったですよ」

 確定しました。熊さんが私を、監視と言いかけて様子見と言いなおした、あのストーキングを実際にさせられていた可哀想な人がアムイさんなんですね。熊さんがおっきい肩を精一杯小さくして俯いています。

 「貴女…いえ、奥様は元気で愛らしくて。うっかり私が奥様に恋してしまいそうになりました」

 なんて、爆弾発言に熊さんがガタッ椅子から腰を浮かせます。

 「冗談ですから、興奮しないで下さい」

 「あ、いや、私は……」

 しおしおと椅子に沈み込む熊さんです。

 「グラフ様、王都でもそんな風に動揺していては、周りにあなどられますよ。我等われらが素晴らしき領主なのですから、ボロは出さないように注意してください」

 「すまない……」

 「兄代わりとしては心配になります」

 なにやら、入っていけない雰囲気だったので、黙っていたのですが気になるワードに私は首を傾げます。

 「あぁ、すいませんでした。ちゃんとご説明しますね」

 アムイさんは中々機微に長けているらしいです。

 「私は、お屋敷でメイド長をしているアルシラの息子です」

 「えっ!そうなんですか!?」

 「えぇ。ですから、グラフ様のことは良く知っているんですよ。年も近いというのもあって、遊び相手をさせて頂いていましたから」

 「ほほぉ」

 ほぼ身内と言うのが判明したからか、うっかり侯爵夫人らしからぬ声を出してしまいました。

 「アムイは私より三歳年上なんです」

 と、熊さんが説明を挟めば、すぐさまアムイさんが「ほら、私の前でも口調は崩さないで下さい」と注意を入れます。それに熊さんが「あっ…あぁ、すまない」と返し、二人して苦笑を洩らしました。

 最初は、熊さん部下に侮られてないか?とちょっぴり思わんでもなかったのですが……。あら、中々いい雰囲気だわ。と、微笑ましく見守りたい心境になりますね。


 その後、私がお茶を頂いている間に、二人でなんやかんや仕事の話を片付け、自警団屯所をおいとましました。去り際にアムイさんがこっそり、私に耳打ちをしてきました。

 「グラフ様はお優しすぎるきらいがあるのですが、どうか末永くお願いします」

 って。


 本当になんだか、この街を離れがたく思ってしまう一日でした。

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