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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
3章:お屋敷にて。
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035 頑張る。

 ヤーよ、と言われて諦めるのが熊さんクオリティ。


 あの日の夕前に鳥さんとレーテ様はお帰りになり、なんとなくお怒り顔のエレースちゃんと、無言な熊さん。私は気まずい雰囲気ってやつが苦手なので、夕食の席でちょっと一人元気に喋り倒してみた所、エレースちゃんはコテンとヒゲの一件は忘れ答えてくれました。元々熊さんは使用人さんたちがいるとあまり喋らないので、まぁ普通にはなれたのかな?

 夕食が終わり、食後のお茶でもと思っていると、アムイさんと言う広報部の方がいらっしゃって、熊さんは席を外してしまいました。その後、就寝前に戻ってきたのですが、しばらく忙しくなるとの事です。そんな訳で、私はエレースちゃんと就寝!エレースちゃんと就寝です!

 この子、寝入るの早いんですよー。もうマジ天使の寝フェイス間近で見れて幸福の絶頂でしたよ!六日経っても幸福感薄まらないよ!!

 そう、あれから六日経ちました。熊さんは何やら何やら本当に忙しいらしく、毎日ワタワタして、夜は執務室?に篭ってしまいます。夕食の時くらいにしか顔を合わせていません。なんだかちょっぴり寂しいなーと思わないでもない新妻です。

 しかしですね、大変そうなら手伝えることを手伝えばいいんだよね!それに気付かせてくれたのはエレースちゃんだったりします。社会人になったことが一回も無くてうつつでのアルバイト経験も無かった私は、仕事を手伝うって言うことが一切頭に無くて、エレースちゃんが寂しそうに「エレースもおてつだいできたらなー」って呟いたのを聞いて、やっとそこに思い至ったんですね。阿呆な私!


 「何か私にお手伝いできることはないですか!」

 昼下がり、エレースちゃんをお昼寝タイムで寝かしつけ、執事さんやメイドさんを引き止めては場所を聞き、擦れ違いを繰り返してやっと見つけた熊さんに、私は意気込んでそう叫びました。えぇ、あの人足長いですよ。あの足の長さで大またにサカサカ動かれると追いつけないですよ。やっと見つけたと思った瞬間角を曲がって行ってしまいそうだったので叫んだですよ。

 「…リリー……?」

 一瞬驚いた顔をして熊さんがピタリと止まります。手には四角くて薄い何かを持っています。それを気まずそうに後ろに隠す辺り、この人嘘つけない人です。中身が気になるけど、ここでそれを聞くだけで熊さんはテンパリそうなので、止めておきます。ワタワタする姿を見たい気もしますが、我慢しておきます。

 とりあえず、状況観察は以上で、止まってくれたので急いで駆け寄ります。

 「最近すごく忙しそうなので、何か手伝えることないかなーって思ったのですが……」

 レーテ様が移ったのか、うっかりお祈りポーズで首を傾げてしまいました。美人がやらなきゃキモいだけなのに!って思った瞬間、熊さんの体に震えが走ります。こう、下から上に、某魔女が宅急便配達のお仕事しちゃう映画の黒猫のように。そしてその震えが顔に広がると、ボンッって音がしそうな感じに熊さんの顔が真っ赤になりました。

 「あああ、ああ」

 壊れた!熊さんが壊れたよ!手に持ってた薄い何かがゴスッって下に落ちたよ!拾った方がいいのか、隠し気味にしてたんだし拾わないほうがいいのか悩んでいると、スローモーションですかね?って感じで熊さんの腕が少し広がり、ズモモモと胸板が私の目の前に迫り、何だ?と思っている間に抱きしめられました。

 あのですね、熊さんは大きいのです。確実に私と三十センチ以上身長差があるのです。思いっきり被さるようにギュってされるとですね、折れるのは首です。鯖折り見たいに腰じゃないです。そういえばベアハッグとか言うらしいですよ。まさに熊の抱擁です。でも、リアルにやられると、折れるのは腰じゃなくて首です!イダイイダイイダイ!

 「くるっ……」

 とりあえず、背中(と言っても、腰よりやや上くらい)を必死にタップです。すっと、拘束が緩んだと思った瞬間、熊さんの手が私の腰に回り、ふわってなりました。うん、ふわって表現がぴったりです。ふわって。要するに抱き上げられました。

 力が強いからですかね、意外と安定しています。こう、漫画とかで男の人が女の人の腰を持って抱き上げるシーンとかあるじゃないですか。ちょっと女の人のほうが顔の位置上になって、女の人は男の人の肩掴んじゃったりしてさ。それで、「アハハハハ」とか笑いあいながらクルクル回っちゃったり。あれ、下どうなってるのかなーって思えば足プラーンってするんですね。ちなみに、顔の位置は身長差のせいか、同じくらいになってます。

 とりあえず、首に手を回して抱きついてみます。すると、抱きしめやすくする為か、熊さんの片腕が私のお尻の下に。エロスを感じる仕草ではないですよ!こう、多分はたから見ると子供を抱っこしてるみたいに見えるんじゃないかな!熊さんマジでけぇです。

 さて、熊さん無言です。どうしよう。なんか呼吸の音だけ聞こえてます。とりあえず、熊さんの耳後ろが近いので匂いを嗅いでおこうと思います。ここ、匂いポイントですからね!いい匂いがします。むはー。はっ!変態ではいない!変態ではない!って言いたいけど、ちょっと変態チックかもですね。匂いフェチってことにして置いてください。

 しかし、いつまでこのままなんでしょう?いやね、いい匂いだからいいんですけどね。私だって鈍感じゃないから、使用人さんたちが私たちに気付いてきびすを返して去って行っていることには気付いていますよ。恥ずかしいですね!でもいい匂いだからいいや!

 そんな訳でしばらく二人無言でいると、抱き上げられたとき同じようにふわりと、下に降ろされます。

 「ありがとうございました」

 「ん?何がです?」

 「頑張ります」

 だから、何が!

 「えっとぉ…無理しないでくださいね?」

 とりあえず、無難に返しておきましょうか……

 「はい」

 熊さんがニッコリ笑います。このヒゲがもしゃってするの可愛いよね。で、何がありがとうだったんですかね?微妙に聞ける空気じゃない気がしますよ。

 「それでは、夕食で」

 「あ、はい~」

 熊さんが落とした何かを拾い上げて颯爽と去っていきます。心なしかさっきみたいなセカセカ歩きじゃなくなっているみたいです。でも早ぇです。

 「って…手伝いは……?」

 ぽつりと声を漏らすと、どこから現れたのか、センティエさんが「奥様はご充分手伝われましたよ」とか言います。

 「うひゃ!」

 「おや、驚かせてしまいましたか。申し訳ありません」

 「あ、いやいや、大丈夫です!」

 あれですかね、熟練の使用人さんになると気配を殺せるようになるんですかね?アルシラさんも気がつくといるんだよなぁ……

 「で~、私が手伝ったっていうのは……?」

 「グラフ様は、最近お忙しく余裕を無くされておりました。しかし、今のひと時で十分元気を取り戻されました」

 あれか、充電されたのか!私、熊さん専用充電器か!やだ、愛されてるっ!

 「あー…そうですか……」

 うっすら、照れてしまいます。

 「奥様のこの後のご予定は?」

 ふむ?あー……

 「エレースちゃんがそろそろ起きますよね?」

 「はい。しかし、エレース様はこの後、作法のお勉強の時間となっておりますが、奥様もご一緒ないさいますか?」

 エレースちゃんはまだ四歳ですが、貴族の娘としての教育を受けています。私が来る前はもっとバリバリやってたらしいのですが、特に私が何かを言うまでも無く、遊ぶ時間が増えたし、それでも授業的なものが組み込まれている日は私が一緒にいたりします。

 「そうですね、私もまだまだなので、ご一緒させて貰います」

 「かしこまりました」

 正直、畑とか耕して体を動かしたいと思うのですがねー。でも、みんな頑張ってるんだから、私も貴族の妻として!頑張りますよ!


 お作法の授業中、何気に好成績のエレースちゃんは何故か今日に限って、ぼーっとしていることが多く、私同様先生に怒られまくっていました。

 「今日はどうかしたの?」

 夕食の席で聞いてみると、エレースちゃんがちゃんとお行儀良くナイフとフォークを置いて、真剣な顔になります。私を見てから、熊さんを凝視。そして厳かな顔をして一言。


 「おヒゲ、ないしていいよ」


 熊さん、諦めていませんでした!何か頑張っていました!

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