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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
3章:お屋敷にて。
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034 おヒゲの魅力。

 朝食が終わってから、私たち五人は庭で楽しく、それはもう賑やかに遊びました。遊びつくして昼食の頃にはぐったりでした。


 お昼も終わり、優雅に午後のお茶を楽しんでいるとエレースちゃんがウトウトし出したので、お昼寝タイムです。しっかりお昼寝するのも子供には大切な仕事ですからね!エレースちゃんの寝室へ抱っこして運ぶのは私の仕事です。神よ!この至福の時に感謝致します!

 しかし、私がエレースちゃんを抱っこして、エレースちゃんがいつも通り私の胸に顔を埋め、眠そうな顔でおっぱいモニモニをし始めたとき、熊さんが鳥さんに何事か耳打ちをしました。えぇ、地獄耳ですから、私にもうっすら聞こえていたのですが、エレースちゃんにはしっかり聞こえていたようで、ガバリと顔を上げます。地獄耳レベルはエレースちゃんのほうが高いのかもしれません。いや、内容が内容だったからかな?

 「なんでよ!」

 やー、私は昨夜と今朝のやり取りがあったので、なんでかはわかるのですが、熊さんは意外と即日即決なんですね。

 「あ…エレース……聞こえたのですか?」

 「きこえるよ!」

 そうですね、熊さんは鳥さんにヒゲ剃りをお願いしていました。そりゃあ、熊さんのおヒゲがお気に入りのエレースちゃんに聞こえないはずがありません。

 「えっとですね……」

 熊さんがオロオロしています。立ち上がって私の前まで来て…そしてオロオロします。うん、へたれです。っていうか、エレースちゃん降ろしたほうがいいのかしら?完全におめめパッチリ、覚醒です。

 「ないのエレースやーよ!」

 あぁ、タイミング逃したな完璧に。エレースちゃんは私にしっかり抱きつきつつ、熊さんを見つめます。

 「あの…その……」

 言えないよね、私と不埒なことが出来ないからヒゲ剃りたいとか言えないよね。私の体中にちゅーしたいからヒゲ剃りたいとか言えないよね。って…恥ずかしいなおい!ちょっと耳から頬に掛けて熱くなるのを感じます。そんな様子を逃さす鳥が見ていたらしく、にんまり笑いくさりやがります。その顔をつつしめ、鳥め!

 「なんで!」

 「え…えっとですね……」

 うん、熊さんが目元と耳を赤く染めつつ視線をソワソワ必死に言葉を探しています。

 「ヒゲがあると、不都合があってですね……」

 「あってもなかったよ!」

 んー?多分「今までヒゲがあっても不都合は無かったよ」でしょう。おしゃまなエレースちゃんですがまだまだ四歳児、語彙が少ないので、解読は慣れが必要ですね。熊さんはエレースちゃん歴が私より長いのですが、私よりも解読に時間が掛かったようで、思わず「あぁ」と声を漏らしました。

 「今までは、確かにあまり不都合は無かったのですが……」

 と、言葉を切ってちらりと私を見つめます。うん、恥ずかしいからやめて!そしてエレースちゃん聡いからやめて!

 「エレースやーよ!」

 しっかり、何かを感じ取ったエレースちゃんが今度は私を見上げます。やっぱり、こっちに来たよ!

 「う、うぅん……?」

 私はエレースちゃんを抱えなおしながらも良くわからない声をあげることしか出来ません。だって、ねぇ!?

 「あのね……」

 「エレー……」

 おっと、声が被ったよ?前もこんなことがありましたね。そして私がそのまま話し続けて失敗したわけですが……

 「エレース」

 どうやら、熊さんが続けるようです。何気に鳥さんはニヤニヤしながら、何か言いたげなレーテ様を言葉無しに留めています。静観モードってやつですね。私もここは大人しく静観させて頂くことにします。抱っこしたまんまだけど。

 「……なに?」

 意思の堅い声だったからでしょうか、エレースちゃんの返事には不貞腐れた音が混じっています。

 「エレースは…その……」

 ちらりとまたも熊さんが私の顔を見ます。

 「弟妹ていまいが欲しくは無いですか?」

 おっと、そう来ましたか。ある意味直球じゃね?ヒゲ剃る理由が丸見えじゃね?そこはほら、濁すっていうか、嘘も方便っていうか……。誠意は大切なんですけど、いや、流石に四歳じゃまだ意図は理解できないだろうけど、四歳なんだから濁してもいいんじゃないかと思わないでもないですよ?

 「てーまい?」

 「えぇ、下の子が欲しくはないですか?」

 「エレースにしたのこできるの?」

 「えぇ、四人ほど予定しているのですが」

 何!この!公開家族計画!!そりゃ、命卵四個持ち夫婦なんだから子供は四人って誰でもわかるけど!

 「よにんも?」

 「えぇ、そうです」

 「だからおヒゲないしないといけないの?」

 と、熊さんがちょっと困り顔です。

 「いえ、絶対に剃らねばならないと言う訳ではないのですが……」

 そこは即答で「はい」って言っておけよ!

 「じゃあヤ!」

 ほら!もう!

 「リリママ、おろして」

 エレースちゃんが私に向き直り、そうお願いします。私がエレースちゃんを降ろすと、一人がけのソファによじ登り、向かいのソファをビシリと指差します。

 「フィオパパ、そこすわるのよ!」

 「あ、はい」

 もう、なんでこんなにへたれなの!四歳児に命令されて「あ、はい」とか、私を悶絶死させたいの!?萌えるからマジやめろ!!

 なんて、思っているのを外に出せるはずも無く、私は鳥さんたちの傍によって、傍観の運びとなりました。


 要約すると、「フィオパパのヒゲは柔らかくて気持ちが良くて安心する。気に入っているから剃って欲しくない」でした。そう、こちらの時計で二時間、エレースちゃんは懇々《こんこん》と熊さんに説明し続けました。物凄い熱意です。思わず私も頷いてしまうほどでしたが、熊さんも諦めません。エレースちゃんが一通り話し終えるまで静かに聞いていましたが、どうやらエレースちゃんの話から糸口を掴んだのか、ヒゲが無くても熊さんが熊さんであるということは変わらないこと、エレースちゃんを今まで通り大切にすること、不安にさせないことを約束し、そしてヒゲを剃らせてくださいとお願いしました。ちなみにここに至るまでに一時間掛かりました。そう、拙い言葉を捕らえるに、エレースちゃんがヒゲに固執している理由は、変化することを恐れているからです。多分、私の出現はエレースちゃんにとって大きなストレスになったでしょう。それでも、友好な関係を築くことが出来たのですから、もう変化を恐れる必要は無い。熊さんはそう言いたいのかも知れません。そうです、恐れなくていい、まだぎこちなさも沢山ありますが、私たちは家族になったのですからっ!

 思わず私も熊さんのエレースちゃんに対する気遣い、誠意に目尻が潤みましたが、よく考えればエロスな熱意に動かされているのが大半ですか、これ?

 「リリママは!?」

 おっと、いきなり話を振られました。

 「んっと~……リリママはおヒゲのふさふさなお顔大好きだから……」

 言いかけてちょっと止まります。私、なんかこの数日間で表情の読み辛いヒゲ面から表情を読むスキルが物凄い上がってると思うんですよね。そんな訳で、今熊さんは物凄くしょんぼり顔をしています。そこまでしょんぼりしなくても!って感じのしょんぼり顔です。なんか見えないはずの熊耳が下がっているのが見えます。

 「そのままでもいいかなぁ~って思うけど……、でも、おヒゲの無いお顔も見てみたいかな~?」

 熊さんの目がちょっとキラキラしました!大型動物可愛いです。まぁ、今の言葉は本心で、実は美形と噂(?)の旦那様ですから素顔に好奇心が沸かないわけではないですからね!

 「むぅ~」

 「それにおヒゲは剃ったらもう生えないわけじゃないし、一回ぐらい剃ってもいいんじゃないかなぁ?」

 気に入らなかったらまた生やさせればいいんだよ!

 「どうかなぁ?」

 熊さんは天啓を待つように、私は窺うようにエレースちゃんを見つめます。

 う~う~唸ったエレースちゃんが出した結論は……


 「ヤーよ!」


 だよねぇ。

熊さんは、髪もヒゲも伸ばし放題だったので、本来はお抱えの理容師さんがいるものなのですが、いませんでした。で、とりあえず鳥に頼みました。美的センスと器用さはピカイチのウィア族です。


たまに妙な言い回しをしているのは、意図して何かを隠しているからです。その何かはこの作品で明かされるかどうかはわかりません。あくまで好き勝手やってる作品だから!

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