033 意外にも穏やかな朝です。
なんかすごい進展したつもりになってたけど、これってAプラスアルファってぐらいだったんだよね?
いつも通り、潜り込んでいた布団の中で目が覚め、起きてすぐそう思ったわけです。いや、でもいい雰囲気になったりしちゃったんだし、かなりの進展だよね?
もぞもぞと這い出すと、まだ夢の中らしい熊さんの顔と遭遇です。
熊さんの顔の部分で見えるのはオデコ、目、鼻。お口周りはもっじゃもじゃでどこからひげでどこからもみ上げなのかもわからないぐらいです。なんか、ちらほら鳥さんとかレーテ様が熊さんはイケメン的な発言をしていたと思うのですが、どうなんだろう。なんか、この今の熊さんの顔を気に入り過ぎてるから、ひげ剃ったらもしかして受け付けなかったりとかしちゃったらどうするよ?
そういえば、ヒゲと髪の毛って質感微妙に違うのね。そうだ!もみ上げとの境目を探してみようかな……!
「んっと……」
ぐっすり寝ているようなので触らないように顔のラインをなぞり考察します。見た目は色が一緒だからわかり辛いんだよなぁ……、あ!睫毛中々長いな!でもなっがっ!って程度ではないんだなぁ。あれー?眉毛整えてるんだ?ほほう、ヒゲは剃らん割りに眉毛は整える。なにゆえ?って、脱線脱線。
「んー……」
頬に髪が掛かっていてわからない。こっそりだったら起きないかな?よし、そろーっと髪の毛をどかして見ます。むん、どかしたはいいけど、やっぱりどこからどこまでか良くわからんぞ?
「熊さーん」
小声で呼びかけてみます。うん、起きないね。きっと大丈夫。
てなわけで、指突っ込みます。ずぼり。結構沈みますよ。もっじゃもじゃだからね!ここはまだヒゲでー、ここら辺だよね?もみ上げと思われる辺りを弄ります。あれ?ここか?ここじゃね!?あったここだ!ちょっと嬉しい発見ですよ!思わず境目をもさもさします。
「……あの、リリー?なにを……」
ほぁ!?うっかり起こしてしまった!
「あ、いやですねぇ…ヒゲともみ上げの境目がですね」
「あ…あぁ……。ヒゲ剃らないとですね……」
しっかり寝てたのか、もにゃもにゃした声です。このダンディボイスがもにゃもにゃしてるのって、超萌えるね!うっかりハート直撃です!なにこれ可愛いー。
「剃っちゃうんですか?」
「……はい。剃らないと貴女に色々出来ないですから」
ちょ、お前さん、寝ぼけてるね?普段ならそんなこと口が裂けても言わないよね?
「……色々したいんですか?」
笑いを堪えているせいで声がめちゃこん震えます。
「そうですねぇ……色々…」
「…例えば何を?」
「ん~……体の隅々、全てに…なんでしたか……あぁ、キスをして……」
うわぁ、熊さんもちゃんと男の人だよ!聞くんじゃなかったよ!
「それで……、後…は……?んん……?」
熊さんが眉を顰めます。もしや覚醒した?えっと、ごまかさないと!
「あ…れ……?」
「あ、起きたんですか?」
白々しくそんなことを言いながら、熊さんのオデコにキスをします。と、熊さんはへにゃりと笑顔になって、私の頬に手を添わせます。
「おはようございます、リリー」
「え、えぇ、おはようございます、熊さん」
なんとかごまかせたようです。熊さんは寝起きに寝ぼける。よく覚えておこうと思います!
「やぁやぁ、みんな!清々しい朝だね!」
誰と言わなくてもわかると思いますが、鳥さんが朝からテンションマックスです。ちなみにダイニングです。レーテ様とエレースちゃんはなんか燃え尽きています。
「おはようございます。ウォークさんは朝から元気ですねぇ」
ちなみに私もテンションはあそこまで高くないですが、普通に元気です。
「もちろん元気だよ!ね、ミーナ」
キラキラした顔で、右隣に座っているレーテ様に話しかけます。そうそう、レーテ様とエレースちゃんの勝負ですが、なんと勝者がエレースちゃんです。なので、上座に熊さん、熊さんの左隣に私、その私の隣がエレースちゃんで、熊さんの右側に鳥さん、その隣がレーテ様という配置になっています。どうでもいい話でした?
「わたくしは…元気じゃないわ……」
「エレースいっぱいかったのよ!」
「いっぱい勝ったって?」
「ふだあそびでしょー、かくれんぼでしょー、にらめっこに、あっちむいてホイもしたのよ!」
うん、大体私が教え込んだやつですね。というか、あの部屋のなかでかくれんぼとか出来るの?すぐ見つかるでしょ。
「全戦全敗でしたわ……」
さすがは大人です。エレースちゃんに勝たせてあげたんですよね。
「全力だったのに……」
おいおい、ボソッと悔しそうに仰いましたよ。レーテ様大人気ないよ!しかも全部負けって!
「じゃあ今度はボクと勝負だね!ボクの骨はミーナが拾ってくれるよね!?」
負ける気満々なんだ!?
「オークはヤよ!」
「だからなんでさ!」
「オークはうるさいの。でー、なんかヤ」
なんか嫌。これ言われたらグサッとくるなー……
「君もボクぐらい騒げばいいじゃない。それに『なんか』ヤってのはボクにはどうしようもないよ?」
「だからオークはヤなの!」
「ボクは君と遊ぶね!思いっきり遊んでボクを好きにならせてあげるよ!」
うわー、テラポジですね。ある意味羨ましいけど、押し付けがましいとも言える?でも、しょっぱなから拒否された相手にはそうやってグイグイ行かないと仲良くなれない…いや、普通はヤって言われた時点で仲良くなるのを諦めるよね。なんか、鳥さんを『ある意味』尊敬します。
「だからヤなのにー……」
うん、その心底嫌そうな顔可愛いですね、エレースちゃん。思わず覗き込んでしまいましたよ。
「エレース、ウォークは付き合ってみればいい人ですから、一緒に遊んでごらん」
「……フィオパパぁ……」
「まぁまぁ、確かにウォークさんはテンション…えっと、元気がありすぎてウザ…いや、ついてくのがたいへ…、ちがくて……」
「うん、助け舟出してくれたんだろうけど、それ結構ボクの心を抉ってるよ?」
「あ、すいません……でも、そう!ウォークさんといるときっと楽しくなるよ!」
「つかれるとおもうの」
うん、正論。熊さんも気まずそうに頬をポリポリしています。
「疲れるのはいいことさ!良く眠れて元気に起きれるだろう?」
「あなたの場合は、元気過ぎるのですわ」
「ミーナ!」
「そういうところが、エレースを疲れさせるのですわ。そうだわ、わたくしも一緒ならばいいでしょう?」
「レーテも?ん~……じゃあ、レーテはオークをかんしするかかりね」
おやおや、昨晩のうちにだいぶ仲良くなったようですね。これはいいことです。
「では、お食事が終わったら遊びに行きましょう」
「お庭?」
「そうね、どこがいいかしら……」
エレースちゃんは髪が黒いせいで屋敷の外に出る機会がとても少ないそうです。結婚式はふてくされていたから参加しなかったと言われましたが、きっとヴァルナトだということも影響していたのだと思います。
「とりあえず朝食を食べてしまいませんか?」
「あぁ、そうですね。使用人さんたちも食器下げたいだろうし」
今日はよくわからないけど、熊さんの命令で皆さんずらっと待機をしていないので、一応各々仕事に行っているようなのですが、センティエさんだけは待機しています。ずっと立ちんぼは大変ですからね。
「きょうはほんりたなの~」
うん、フォンリッタですね。ホットケーキですね。ちなみに昨日も一昨日もと言うより毎日エレースちゃんの朝食はフォンリッタですけどね。今日は『おいしぃ~』の顔を目の前で見れないのが残念です。
「よし、それじゃあ朝ご飯が終わったら庭だね!」
てかあれ?今日もウチにいるんですねお二人とも?




