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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
2章:別荘大騒動。
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024 森とくまさん。

 途中から熊さんも参加し、花冠講習が続いています。意外なのか意外じゃないのか、わからなくなってきましたが、レーテミーナ様は物凄いぶきっちょでした。熊さんは驚くほど器用で、既に編み方は完璧に把握したので「ここの造詣が……」とか言いながら黙々作業に徹しています。

 いや、レーテミーナ様が不器用なのは、レーテミーナ様のせいじゃないかもです。一人参加しなかった鳥さんが「綺麗だから」とか言いながら、花びらをレーテミーナ様に散々振りかけてるんですよね。邪魔です。風を発生させて巻き上げたり、そんなことに使われる精霊さんが可哀相です。空気読め鳥!

 「あの…ここが……」

 ぶわっ

 「あぁ、ここはですね……」

 ぶわっ

 「えっと…こうですの?」

 ぶわわっ

 「ぁぁぁ、違います違います。こう……」

 ごうっ

 「……………………」

 ごうわっ

 「……ウォーオ、クゥ~!!!」

 うん、堪忍袋の緒が切れる音がしましたね、今。あ、私じゃありません。私が切れる前にレーテミーナ様が切れました。でも、愛おしそうに花冠を脇に置いてから立ち上がるあたり、冷静さもあるようです。詰め寄るレーテミーナ様に「あははっ、だって綺麗だからさ」とか言ってます。なんだこのバカップル。放っておこう。

 「……あれ?熊さんの花冠ちょっと小さくないですか?」

 「あ、これは……エレースに」

 熊さんっ……!その恥らう表情はなんですかっ!!唯でさえ森で大きな熊さんが花冠を作っているというファンシー世界だというのにっ!!一緒に歌うか!歌うのか!

 って、変なこと考えるのはやめにして……実は私が作っていたのもエレースちゃん用なのですよね。もうこれはいっそ、イヤリングにするしかないです。いや、作り方わからないですけど。花でイヤリングとか作れるんでしょうか?あれ?私まだ変なままですね。ちょっと、恥らう森の熊さんの衝撃が大き過ぎたようです。

 「あの…どうかしましたか?」

 「いえいえ!どうも!耳飾りの作り方を考察していただけで!」

 「耳飾り、ですか」

 「えぇ、二つも花冠があってもアレだし…あ、そうか私のは首飾りにすればいいだけですね、うん!」

 熊さんが首を傾げます。だからね、大の大人の男の人がですね、そういう可愛い仕草をするのはどうなんですか?私、そういうのジャストミートですよ?

 「もしや、リリーもエレースの為に……?」

 「ぇ!?あ、はい。そうですよ」

 「…………」

 ひげが!ひげがもしゃって動きましたね!多分極上の笑みってやつですね!

 「それでは、私はもう少しエマーツを摘んできます」

 「あ、いや、私が行きますよ!」

 「いいえ、私に行かせて下さい」

 「いやいやそんな!」

 って、ここに来て「いいえ私が」合戦か!落ち着け私!

 「待っていてください」

 「……わかりました。お待ちしていますね」

 互いににっこり笑いあいます。そして、そんな私たちの様子を鳥さんとレーテミーナ様が「微笑ましい」って字を顔に浮かべてみていました。

 いや、微笑ましいのは貴方達の方ですよ!


 熊さんが中々戻ってきません。

 私は、さっきの和やかムードから一変、また痴話喧嘩しだした二人に断りをいれて熊さんを探すことにしました。

 「一人で…大丈夫?ボクも行こうか?」

 「そうですわ!もしも魔物に遭遇したらっ!わたくしも」

 「いや、魔物はこの辺り居ないみたいだけど、迷子になったら困るよ?」

 「そうですわ!わたくしもご一緒に!」

 断りを入れたのは失敗だったかもしれないと思いました。でも断らないで勝手に行って大問題になっても迷惑掛けちゃいますし、心配してもらえるのはありがたいことですね。私は丁寧に断りを入れて、迷子にならないことを約束し、熊さんを追います。


 「ふんふんふんふ~ん、ふふふんふんふ~ん」

 鼻歌しているのは森のくまさん的な何かですね!残念な音痴です!ジャイ○ンほど酷くはないですが!

「……っく……」

 む?なんか声が聞こえます。鼻歌を中断して声のした方に向かってみると、森で熊さんが口元を押さえています。苦しそうです!

 「どうかしたんですか!?」

 「……いえ…その……すいません、その、貴女の鼻歌が……、本当にっ……すいませんっ……」

 笑っちゃ駄目だと思うと余計笑っちゃう時ってありますよね。今まさに熊さんはその状態みたいですよ。悪かったですね!音痴で!自覚してるからいいもんね!

 「…遅かったから心配してたんですよ」

 鼻歌については触れないことにします。わざわざ、笑いを抑えようと努力している人を余計に笑わせる必要もなければ怒るのはお門違いですからね。スルーが一番早く事態を収拾出来るはずです。

 「すいません…エマーツを追っているうちに、ちょっと気になる気配があったもので」

 「……魔物ですか?」

 「いいえ、そういったモノではありません。位置も記憶しましたし、特に問題はありませんから、戻りましょうか」

 「ふむぅ?」

 心配させまいとしているんでしょうか。相手の全てを知ろうとするのは傲慢だと親友も申しておりました。とりあえず熊さんの顔を覗き見て、大丈夫そうだなと踏んだので聞くのはやめておきます。

 「エマーツはこのくらいでいいでしょうか?」

 熊さんの腕の中には、作りかけの首飾りを完成させるのに足る分量集まっています。分量量るの上手いみたいですね。

 「えぇ、大丈夫だと思います。ありがとうございます」

 「いえ、それでは戻りましょう」

 「半分持ちますよ」

 「いいえ、軽いものですから大丈夫ですよ。そういえば先ほど……ふっ…歌っていた歌はなんと言う歌なのですか?」

 一瞬笑いかけた熊さんが、それでも何とか笑いを堪えて聞いてきます。掘り返さなくてもいいものを!どうせ、メロディー教えようとしても私音痴だから変なメロディーになっちゃうのにね!

 「えっとぉ…森のくまさんって言ううつつの曲ですよ」

 「森の、くまさん」

 「あはは、森と」

 森を見渡してから熊さんを見ます。

 「熊さんがいい感じだったので、歌ってしまいました。音痴ですけど!」

 「あ、いや…えっと……」

 「慰めなくていいんですよ!」

 「……どう練習すればいいか、後で声楽家に聞いてみましょうか?」

 「いいです!」

 変な気の使われ方しちゃったよ!逆に涙目だよ!


 最終的に、寝転んでレーテミーナ様を見ている鳥さんと、花を編む熊さん、犬さん、猫(?)になりました。

 夕方も近くなったので私がレーテミーナ様の花冠作りを手伝って完成させたのですが、逆にすごい感激されたというか、まぁなんか微笑ましい感じになりました。

 流れ的に鳥さんとレーテミーナ様はもう一泊という形になって、みんなでご飯を食べて、カードゲームに興じ、おやすみなさいになりました。



 うん、今朝と似たような状況だね。あぁ、鳥さんとレーテミーナ様のお部屋は別々になりました。今朝レーテミーナ様が飛び込んできたのは、起きたら横に半裸の鳥さんが居て驚いたからだそうです。鳥さん曰く、「別になにもしなかったし、ぬくもりを感じて寝たかっただけだよ」だそうです。それが許されたら世界は犯罪者だらけです。私が何か言う前に、熊さんが滾々《こんこん》と説教していました。グッジョブ!熊さん!と、思ったのはいいのですが、半裸でぬくもりは、私たちに起こる現象でした。

 あ、でもね、今朝よりは時間かからなかったよ!夫婦度がアップしたからですかね!


 「滞在は、あと何日になりますかね?」

 横からぬくもりが来るっていうのは中々眠気を誘うものです。

 「それなのですが……」

 熊さんがモゾモゾ動いて、私のほうを向きます。今日は腕枕じゃないので、ちょっと互いに距離があるのです。

 「エレースのこともありますし……」

 「あぁ、花冠が新鮮なうちに、エレースちゃんに渡したいですよねぇ」

 「新鮮……そうですね」

 んあ?私おかしなこと言った……?熊さんがクスっと笑いました。

 「……私たちの距離は、少しは縮まったでしょうか……?」

 「ふぁっ……一緒にお布団入るくらいには縮まったですね~」

 眠いです。めちゃねむです。そろそろ落ちてしまいます。

 「それなら……、――――、―――――――?」

 「んぁ~?」

 「――――、――…ですか?」

 「ん~?いいですよ~」


 良くわからないまま答え、私は眠りに落ちたのでした。

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