022 熊と鳥と犬と私?
まぁ、パプニングもはちゃめちゃ人間も村に居た頃で慣れているので、平気っちゃ平気なんですが、まだ結婚三日目?もう何日も経ったような心境です。
「うん、だからミーナってやっぱり酷いよ」
「わかっ…わかってるわよ……」
「それに一緒に謝ろうねって言ったのに」
「それは…だって……ぐすっ……」
「こらこら、鳥さん、レーテミーナ様を泣かさないで下さい。一緒でも一人ずつでも謝って貰えて私としては十分ですから、て言うかですね、貴方も十分酷いことしてますから人のこと言えません」
「あ、うん、ごめんね本当に」
「……私もです……本当にすいませんでした、リリー……」
「あぁもう、許すって言ってるんだから、謝ったり落ち込んだりするの止めてください」
「でもね、ボクだって手紙ちゃんと読んでたらこんなことしなかったよ?」
「本当ですか?なんか疑わしいです」
「えぇー!?君の奥さん酷いよ、グラフ!?まぁ、疑われるぐらい心象が悪いってことだけどさー」
「私、ほんとに酷いことばっかり……ごめんなさい…ごめんなっ……」
「でぇい!謝るなと言うとろうが!」
そんな感じでお昼を食べています。気分的には朝食です。
私たちの様子を、アルシラさんが「やれやれ」なんて言いながら見ています。
鳥さんの謝罪はこう始まりました。手紙は見ていないから、あの決まりごとでの被害に関しては謝らない。でもそんな決まりごとのせいで君を怖がらせて心配させて怒らせたことは悪いと思ったからそれについて謝る。もう、あんなことはしちゃだめ?後、ボクのミーナが酷いことをしてごめんなさい。ミーナがあんなことをしたのはボクのせいなんだ。ごめんなさい。ミーナは本当はスッゴク可愛くていい子なんだよ。だからあんなことをしたのはボクのせいなんだ、ごめんなさい。ミーナが、ミーナは、ミーナの……(以下レーテミーナ様がどれだけ素敵な人か続く)
こんなところだったと思います。とりあえず、やらなくていい片付けをするという被害を被っているんだから、アルシラさん達に謝ってくださいと言ったら、あ、そっかとか言いながら使用人さんたちに謝りに行きました。戻ってきた所で、途中までアルシラさんたちがやってくれた片づけを自分達ですることを条件に、私と仲直り…いえ、知り合ったばかりで仲良くなって居ないんですが、何故か仲直りということで握手をしたので仲直りってことにしておきます。で、あんなことはもうしちゃ駄目とお灸も据えて置きました。
これにて一件落着としたいのですが、いまだグズグズ泣きそうなレーテミーナさまの言葉に乗って、鳥さんが喋りレーテミーナ様が落ち込み、熊さんも落ち込みを繰り返しています。この連鎖反応の止め方がわかりません。鳥さんは本当にレーテミーナ様を愛しているのか?これも愛の形なのか?私には濃過ぎてよくわかりません。
「あのですね、もういいよって言っている以上もう本当に怒ってないんです。私は、そんなに怒りが持続しないんですからそこんとこ頼みますよ!」
私の宣言を持って、昼食という名の朝食が終了しました。
お腹が落ち着いてからはみんなで片付けです。アルシラさんたちが自分達がやるからと言ってくれましたが、これは罰掃除なのでと断りを入れました。私も手伝います。「罰なら君はやらなくていいじゃないか」とか鳥さんに言われましたが、監視ですと言ったら、しょんぼりしつつ「信用ないなぁ…しょうがないか」とか言ってました。いや、何もしないのが嫌だったから言い訳なんですけどね。
熊さんは黙々と掃除をこなします。侯爵の割りに上手だなぁっと思ったら、鳥さんの後始末をいつも一緒にやっていたそうです。通りで鳥さんも喋ってる割に効率的に片付けが出来ているわけです。でも、やっぱり鳥さんは昔から問題児のようですね。
しかし、今一番の問題はレーテミーナ様で、本当にご令嬢です。一生懸命片付けようとしてるのはわかるのですが、「きゃ!」「いたっ!」とか「あっ!(ガラガラ)」とか聞こえてきます。
ぶっちゃけ私も大掃除的なものは苦手な部類なので、最終的に熊さんが指示を出してレーテミーナ様が失敗するのを私が慰めて鳥さんがフォローする形が出来上がりました。なんか、過去世の学生時代を思いだしました。
片付けも終わり、私は箒の柄にアゴを乗せてちょっとだらけ気味です。
「お疲れ様でしたー。お茶にでもしましょうか」
「それでは、わたくしが用意しますわ!」
私の一言に即行で答え、キッチンへダッシュするレーテミーナ様です。
……言い方が悪いけど、主人に懐く犬に見えてきました……
「あら、どうせお茶になさるなら、湖畔にでも行ってきたらいかがですか?」
買ってきた晩御飯用の食材を抱えて、アルシラさんが料理人さんと共にスタスタとキッチンに入っていきます。アルシラさんは、神出鬼没です。それだけ良く動いてくださっているということですね。すごく尊敬です。
「湖畔って何ですか?」
熊さんに聞いてみます。
「この別荘から少し歩くと森の中に湖があるんですよ。元々そこでゆっくり過ごそうかと思ってこの別荘に来たんです…が……」
後半顔が歪んだので、多分「それなのにこんなことになってしまって」とか続きそうです。私はあわてて声を遮ります。
「それはいいですね!じゃあお茶持ってそこにピクニックと行きましょうか!」
「ピクニック?」
「あー、野遊びですね、野遊び。敷物でも敷いてゆっくり外でお茶しましょう。私、レーテミーナ様に伝えてきます」
と、私がキッチンに向かう前にバスケットを持ったレーテミーナ様が明らかに尻尾振ってそうな顔で姿を現しました。
「アルシラが、用意してくれましたわ!」
アルシラさん、神業です。神速のアルシラです。メイド長ってすごいですね。
湖畔に向かう間、レーテミーナ様はバスケットを持ったまま私の横をちょこまかしています。正直、落とさないか心配になるのですが、「わたくしが持ちたいのですわ!」だそうです。
あれ?なんだろう…可愛い子ちゃんに見えてきた……耳と尻尾はどこだ?隠しているんだろう?あるんだろう?という心境です。でもその割りに一定の距離は保つんだよなぁ……どういう心理状態なんだろう?真の意味で仲良くなれる日は来るのだろうか……
あぁ、そういえば熊さんが、休日の騎士のような格好をしています。白のワイシャツに黒ズボンで、帯刀というスタイルです。騎士団長と言われたら信じそうな風格が漂っています。喋らなければ。そんな熊さんは昨日と同じく無言です。だからこそ漂う風格です。喋ると可愛い森の熊さんになること請け合いです。ここは王都から程近いので、魔物の心配は殆ど必要ないと鳥さんが言っていましたが、それでも熊さんは警戒するに越したことがないと意識を集中しているようです。
ちなみに鳥さんは、レーテミーナ様を見てニヤニヤしています。脂の下がった顔ってこういう顔なのかと思いました。最初はバスケットを持とうとしたのですが、レーテミーナ様に断られるとあっさり引いて私たちの後ろを歩いています。途中、レーテミーナ様がこけそうになって、それをそつなく支えている様は確かに愛が溢れているように感じました。でも二人の愛の形がよくわかりません。この二人は喧嘩が多いようです。既に二回喧嘩っぽいものをしていました。喧嘩するほど仲が良い、か……私たちにもいずれ、二人のように喧々囂々《けんけんごうごう》喧嘩をする時がくるのでしょうか……?それで仲良くなれるなら、いずれ喧嘩もしてみたいと思います。
おっと、そんなことを考えているうちに湖畔に到着です。
「お~綺麗ですねぇ」
「ここには水の高位精霊が住み着くぐらいの場所なのですわ!」
レーテミーナ様が自慢げです。
「ほほう?」
正直、精霊理論とか魔法の勉強は一切していないので高位精霊とか言われてもさっぱりです。
「正確には、三位の精霊だよ。ただし、海竜あたりじゃないと水の三位精霊なんて見れないけど」
鳥さんが、バスケットを早速開け、サンドイッチをつまみ食いしようとするので、手を叩いておきます。
「ここまでくれば、魔物の心配も無用でしょう」
警戒を解いた熊さんが剣を木に立てかけ、シーツを広げにかかるので、私もお手伝いです。
そして、そんな私の後ろをレーテミーナ様がうろちょろ見ています。
……手伝いたいけど、声がかけられない。手伝いたいけど、手伝い方がわからない。そんな感じなんでしょうか……
なんか、本当にわんこのようです。かいぐりしたくなるから止めて欲しいですね!
まま、そんな訳で、熊さんと鳥さんと犬さんと猫?のまったりタイム開始です。
まったりだといいな!!!
喧々囂々=大勢の人がやかましく騒ぎたてるさま。
なのですが、リリーはたまに日本語を間違って使っています。ワザとです。
でも私も間違えるので、あれこれ?って思ったら報告貰えると穴を探して潜り込みたい心境になりつつ、感謝致します!




