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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
2章:別荘大騒動。
20/67

018 レーテミーナ――怖くて、でもどうしようもなくて――

一部女性の悩みに関する事を書いています。

嫌だと思われる方は読み飛ばして下さい。

 知ってるでしょう?家族は私を腫れ物のように扱う。

 それは家族でただ一人、私が命卵を一つしか持たないで生まれたからよ。


 父様も母様も言ってくれたわ。

 『きっと、上の子が三個持って生まれたから、あなたの分は少なくなっちゃったのね』

 『お前は下の子に命卵を分けてくれたんだよ』

 『きっと、魔力が高く備わっていたから』

 本当に、兄様が私の分を取っちゃったのなら、私は兄様を怨むわ。妹に命卵を分けてあげたなんて、嫌よ。みんなに嫌われるぐらいなら、こんな原色に近い髪の色なんて要らなかった!


 一個しか命卵を持っていないから絶対に嫌な奴だって、誰も私となんか遊んでくれなかった。伯爵家の人間だからって権力は子供には通用しないものね?

 みんなに嫌われるから、それでもみんなと遊びたかったから、私はいっぱいお菓子を持って、いっぱいおもちゃを用意してみんなの所に行ったわ。

 他の伯爵家の子供だって、私みたいにいっぱい色んな物を持ってきていたのに、あの子達は自分より身分の低い子に見せびらかすだけだったのに、私はちゃんとあげたのに私だけが嫌われたわ。

 理由は、ちょっと大きくなって分かったけど。見せびらかすことより、分け与えられることのほうがはるかに屈辱的だなんて、あの頃はわからなかったのよ……

 私は、とにかく友達が欲しくて……


 けど、私には友達と呼べる人が出来ることは無かったわ。あら、今だってそうじゃない……

 とにかく!私は、周りに望まれるまま傲慢で我が侭なご令嬢になったわ。いいえ、私は傲慢だわ……。私が私の間違いを直せなかったのは、決して命卵が一個しかないからじゃない、得が低いからじゃない。周りのせいよ!誰も私に優しくしてくれないから悪いのよ!そうやって、全部人のせいにした。分かっていたの。本当は私が弱いから、私が馬鹿だからいけないんだって。それでも、私はこの染み付いた意地っ張りな性分を直すことが出来なくて……。


 私はね、一度自分の命卵を無くしてしまったのよ。馬鹿でしょう?

 十二歳の時よ。鎖の強度が落ちて、法術師様に繋げて頂くことになっていたの。丁度その時に…あの子も同じ伯爵家の子だったわね。部屋で待っている間に、取れちゃったのよ。でも私はそれに気付いてなくて、呼ばれて法術師様のところに行ったら、胸元にあるはずの命卵が無いんだもの。

 私、ずっと命卵が嫌いだったの。でも、無いって気付いた瞬間、胸が凍るかと思うぐらいぞっとしたの。えぇ、ぞっとよ?

 だって、私には命卵は一つしか無いんだもの。あのたった一つしか、あの一個の命卵でしか、私は未来を繋げないのよ……幸せになれないのよ。

 え?あぁ、もちろんここにあるんだから、ちゃんと出てきたわ。散々探し回って見つからなくて大問題になったのよ。法術師様が責められて、大変なことになりそうだったの。そしたら、やっぱり罪の意識に耐えかねたんでしょうね。あの時一緒にいた子が意地悪で隠したって白状したわ。事態が大きくなるまで出てこなかったのは、権力的には家のほうが上で、私は嫌な子だったから、報復されるって思ってたからみたい。

 今思い返すと、なんでやんなかったのかしらって思うわよ?でも、その時は命卵が見つかったことが嬉しくてしょうがなかったの。だから、私その子にありがとうって、ありがとうって言ったのよ?馬鹿みたいでしょ?

 それから…私にとって、この命卵が何よりも大切で愛おしいものになったのよ。いつか、愛する人の子供を、この一個の命卵と愛する人の命卵で産み出すんだって……


 「だから、ボクじゃだめ……?ボクとじゃ、子供は作れないから……」

 「待って、泣かないで……。もう少しだけ、私の話を聞いてちょうだい……?」

 「……うん」


 グラフィーオ様にお会いしたのは、私が社交界デビューをした十四の歳。そうね、あなたともだわ。あなた、本当に嫌なヤツだったわ。

 ……私は同年代の子よりも大人びていて、社交界に出た途端に男の人たちみんな私を綺麗って持て囃してくれるようになってた。誰も相手になんてしなかったわよ!私は淋しかったの……そんなのが欲しかったわけじゃないから。

 グラフィーオ様は私と違って同性の方の輪の中に居たわ。とても凛々しいお姿で、でもまるで私みたいって思った。思っただけで、好きになんてなっていなかったの。


 グラフィーオ様って、やっぱり当時から変わってるって言われてたわ。今は精力的にその…色々?やってるそうだけど、あの頃はたまに誰か主催のパーティーに出るくらいだったのよ。それ以外は何をしてるか分からないって。魔法の勉強を続けていたのよね?

 グラフィーオ様が命卵を四個持っていることも有名だったし、あの見目でしょ?すっごくモテていたのに、そんなもの興味ないって感じで……

 私は一個しか持ってなかったから、変な話が舞い込んだなぁって思ったのよ。

 そうそう、あなたが飛び込んでくる前までは、凄く怖いって思ったの。だってあなたは知らないでしょうけど、公的な場でのグラフィーオ様の話し方は、本当に侯爵様って感じなのよ?態度だってそう。

 でもあなたが……私のせいで変わってしまって、何よ?私のせいって言ったのはあなたじゃない。え?あっ…そうだったっけ?

 ……え?えぇ、えっと…そう、あの時グラフィーオ様は本気であなたのことを心配していたわ。形振り構ってられないって感じだった。だから、私に素の姿を見せてくださったわ。

 違うの……確かに抱きしめられてドキドキしたわ。でも、私は……


 「言ってよミーナ」

 「……私は、あなたに見惚れていたのよウォーク」

 「ほんとに?」

 「だって、あなたってとても綺麗だもの。でも、それなのに急に罵声を浴びせられたのよ?」

 「……あの時は…ボクは……」

 「わかってる。混乱してたのよね?人生の一大事だったんだって、わかってるの……わかってたのよ……」


 (でも、私はあなたが怖かった)


 最初は、いい加減で最低な人だって思ったわ。でも、あなたったら、許すまで毎日私のところに来るんだもの。許してあげるしか無かったじゃない。

 でも、許してあげた後も毎日来るんだもの……あれには本当に困ったわ。毎日来て、毎日好きだ好きだって、しまいには家に居座っちゃうんだもの!私、本当に困ってしまっていたのよ?

 あぁもう、だから、最後まで聞いて頂戴!確かに、私グラフィーオ様の事が好きだった。きっかけはあなたのことを相談に行っていたからなのよ?パーティ-でお会いする時と違って、素で接してくれて、それにあなたが危険なことをするたびにグラフィーオ様が守ってくださったわ。私達三人の中で一番大人だったのは確実にグラフィーオ様だったじゃない。私、憧れたんだわ……

 私は命卵を一個しか持っていないけど、グラフィーオ様はあまり恋愛とかに興味が無いみたいだったし、もしかしたら、私でもいいんじゃないかって思ったの。

 まぁ、いつもの物腰で拒否されたけどね。私、本当にあの時は盲目的になっていたわ。グラフィーオ様なら分かってくれる、きっと受け入れてくれるって。守られたかったのよ、全てから。グラフィーオ様はお屋敷に閉じこもりがちだったし、一緒に閉じこもって甘い夢でも見ていたかった。

 きっとあの人とだったら、穏やかな気持ちになれるって、私もこんな嫌な子じゃなくなれるかもって思ったの……


 でも、グラフィーオ様はただ一人の人を見つけてしまったのよね?私、躍起になったわ。取られたくないって思った。彼しか、私の望む幸せをくれないって思い込んでいたから。でも、グラフィーオ様は今まで見たいに優しくしてくれなかった。私、はっきり拒絶されたのよ。

 ちょっとは、心の中に入り込めてるんじゃないかって、恋心とか愛じゃなくても、少しはって思ってたのに、拒絶されて……

 私はあなたを頼ってしまった……。本当に嫌な女よね?

 ありがとう……。でも、私はあなたのその言葉が怖いの……

 あなたを変えてしまったのは私、あなたの人生を奪ったのは私だわ。怖かったの、あなたの人生を背負うのが怖かったの!私だって、勉強したのよ?ウィア族がどんな種族なのかって。私達とまるで違う……きっと、幸せの形も何もかも違うんだって思って、本当にあなたから全てを奪ってしまったことが怖かった……。馬鹿な私…だって、私がグラフィーオ様に求めたのは私の人生を背負ってもらうことだったのに、あなたから逃げて、私をグラフィーオ様に押し付けてしまおうとしていたのよ。

 それなのに、あなたから逃げる為だったのに、私、やっぱりグラフィーオ様のこと、好きになってた……拒絶されて悲しくて、駄目だってわかってたのに、あなたを頼ってしまったわ……


 あなたに甘やかされるのは凄く気持ちよくて、あなたと喧嘩するのはなぜか楽しくて……幸せな気持ちになったの。グラフィーオ様とは作れなかった、穏やかな時間をくれたのはあなただった……。だから、怖かったの。あなたを好きになるのが怖かった。私は、本当に…子供が欲しいのよ……誰でもいいわけじゃない…愛した人との子供が欲しいの……

 あなたが怖くて、怖くて、だから必死に私が好きなのはグラフィーオ様だって思い込もうとしたのよ。どんどん、どんどん、今まで以上に嫌な女になっていくのがわかってたけど、止められなかったの!幸せそうな人が羨ましい、妬ましい、グラフィーオ様の大切な人が命卵を四個持っているって知って、悔しかった、やっぱり一個しかない私は駄目な人間なんだって、私はグラフィーオ様が好きなのにって!もうぐちゃぐちゃになってたの!どうしようも出来なくなってたのよ!

 誰のことが好きなのかもわからなくてっ……

 ごめんなさい、なんか話しがぐちゃぐちゃになっちゃったわ……


 私ね……?あなたにミーナって呼ばれて…凄く胸が高鳴って、怖いって思っていたのに、あなたがどうしようもなく……

 待って!ちょっと、待って……

 私、それでも、あなたと……一緒に生きる決意は出来ないのよ……


 「それは、やっぱり子供のことなの?」

 「…………」

 「それじゃあ、ボクたちはいつまで経っても何も進展しないよ……」

 「ごめんなさい…あなたは、諦めざるを得なかったのに……私って本当に嫌なっ」

 ウォークが、私を強く抱きしめる。

 「それ以上は聞きたくない!ミーナは、ボクの運命なんだ。ボクの最愛なんだよ?誰がミーナを、ミーナがミーナを貶めたって、ボクだけは絶対にミーナを信じてるんだ。君が最高の人だって」

 「……ウォーク…………」

 「ボク、ミーナが出て行っちゃって、またグラフの所に行ったってわかって、本当にすっごくムカついたんだ。ミーナが欲しくて欲しくて堪らない。ミーナがボクのこと怖がってるのだって、ホントはわかってた。ボクのこの想いがミーナを怖がらせるんだってわかってた。でも、止められないんだ!グラフとだったら幸せになれるかもって思ってたけど、今はミーナがグラフと一緒にいるのが一番耐えられない!」

 「…………私……」

 「ねぇ、子供が……ボクたちの子供を授かることが出来たなら、ミーナはボクを選んでくれるの?」

 「えっ……?」

 「答えてよ、ミーナ」

 「……そう、ね…もしも、そんな夢が叶うなら……こんな馬鹿なことしないで、あなたを好きって言えたのに……」

 急にウォークが体を離して私の両肩を強く握った。

 「探そう!方法を探そうよ!」

 「あなた……、そんなの無理よ」

 「決め付けはよくないよ!」

 「決め付けじゃなくて、私は事実を言っているの。無理よ」

 「無理じゃないね!ボクは見つけて見せる!だから君はボクのモノだよ、ミーナ!」

 そうして、もう一度私を強く抱きしめた。

 「ちょっと、だから私はっ……」

 「駄目だね、もう聞かない。だってミーナはボクが好きなんだ。確かにそう言った。君の運命はボクだ。ボクはそれを証明してみせる!」

 「ウォーク……」

 ウォークは腕を緩めて、額と額を合わせる

 「だからもう、諦めてボクを求めてよ。きっと君もすぐ、ボクがミーナを想うぐらい、ボクのことを好きになるんだから。そしたら怖いなんて思わないよ、ね?ミーナ……」

 「……ウォーク………、って駄目!」

 「なんでさ!」

 「違うっ!口付けはまだ駄目!」

 「だからなんでさ!」

 「証明してくれるんでしょ!?」

 「するよ!でもこれくらいはいいじゃないか!」

 「駄目よ!」

 「なんでさー!!!」

 「とにかく駄目!」


 そうして、私達は疲れ果ててしまうまで馬鹿みたいな喧嘩をしていた。

 それは幸せな時間で、でも同時に怖かった。



 ベッドに侵入してこようとするウォークを必死に止める。

 「ねぇー、ミ、イ、ナ」

 「な、に、よ」

 私が応えると、ウォークがベッドの端に座り込んだ。攻防がやんで、私も力を緩める。

 「グラフ、怒ったね」

 「……だって…私、本当に酷いことしたもの……」

 「違うよ、グラフは自分に怒ってたんだよ」

 「自分に?」

 「うん。ミーナのせいで、ボクのせいなのに、自分に怒ってたんだ」

 「よくわからないわ……。私は、私がミーレリリー様を傷付けたから怒ったんだと思ってたし……」

 「グラフは不器用の癖になんでも自分でやろうとして失敗するんだよ。昔っからそう。グラフが怒ったのは、そんな自分のせいであの子を傷付けたって思ったからじゃない?」

 「…私、ちゃんと謝らなきゃ……二人に」

 「とくにあのミーレリリーって人に?」

 「……うん」

 でも、怖い。だって、もう絶対に……

 酷いことをしたってわかってる。それでも、止められなかった。私が欲しかったものを手に入れたあの人は、私が、本当に本当に酷いことをしているのに気にもしなかった。それが怖かったの。嫌われるより何よりも無関心が一番怖い……

 「怖いな……」

 もしも笑って許されでもしたらと思うと、どうしようもなく怖い……

 「仕方ないよ。だってミーナ酷いもん」

 「あなた!今さっき私のこと最高って!」

 「最高だよ?最高に我が侭なボクの運命のひと!でも、酷いのは本当でしょ?」

 「そうね……」

 「だから、一緒に謝ろうね。なんかボク、あの人逆らっちゃいけない気がするんだよね。副長と同じ空気を感じる」

 副長という人はウォークたちの話に良く出てくる人。私は知らない。

 「……ありがとう、ウォーク」

 「きっとミーナは友達になれるね」

 「まさか、絶対に嫌われたもの。無理よ」

 「諦めるから無理になるんだよ。ボクがミーナを手に入れたみたいに、諦めなければあの人も友達になってくれるよきっと」

 「……私、あなたのものになったつもりはないんだけど?」

 「えぇ!?酷いよミーナ!」

 でも、そうね……ちゃんと謝って、許して貰えなくても、頑張って諦めなかったら、きっと全ては好転するのかもしれない。私は今までずっと、受け入れてもらえなくて、癇癪を起こすということを繰り返していたから……


 努力もしないで全てを手に入れたいなんて思ってた。

 でも、ちゃんとしたい。

 一緒だったら、きっと、良い方に変わっていける。

 私の運命さいあいひととだったら……

六千字超えたよ!……なーがかったー。

結局、好かれる子にはなれないよね、ミーナは。

ごめんね、ミーナ。

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