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転生チートの意味がない。  作者: おうさとじん
2章:別荘大騒動。
19/67

017 ウォーク――独り、引き返せない運命――

一部女性の悩みに関する事が出てきます。

嫌だと思われる方は読み飛ばして下さい。


シリアスというより、もっさドロドロです。


「素直になれなくて」を聴きながら書いたので、その曲聴きながら読むと、楽しめるかもしれません。

 ごめん、ごめん、愛してごめん

 絶対に、君に向かってこんなことを言えないボクを許して

 でも、どうしようもなく君だったんだ

 だから、離れて行かないで

 嫌だ、少しでも君がボクの傍から離れるなんて嫌だ

 ねぇ、ボクの大切な人、ボクをボクにした君

 傍に居てよ、ボクの大切なミーナ、ボクだけのミーナ……



 「もういい加減にして!やめてよ!」

 「ミーナこそいい加減諦めなよ!ボクたちは結ばれる運命なんだから!」

 「運命なんて言葉うんざり!私は人間なの!あなたとは違うのよ!!」

 そう叫んで、ボクのミーナは部屋を飛び出してしまう。追いかけることは簡単だけど、ボクにはそれが出来なかった。

 ニヒト族とウィア族。そんな違いボクが一番良く分かっている。でも、ボクは君に出会ってしまったんだ。君を見て、ボクの心が君を選んでしまったんだ。

 「しょうがないじゃないか!しょうがないだろ!!ボクだって、ボクだってニヒトだったら!!!」

 感情に任せて叩いた壁。血を滲ませた拳よりも、心が痛い。

 「痛いよ、ミーナ……」

 抱きしめてよ、ボクを……



 あれは、まだボク達がどうしようもなく子供だった頃。


 久々に、本当に久々に親友に会うという事にボクは浮かれていた。

 ボク達には約束があるから、思いっきりぶちかまして驚かせてやろうと思っていた。

 もちろん別れてから修行を続けていたボクのほうが圧倒的に強くなっているはずだから、手加減もするし、怪我しないように配慮もするつもりだったんだ。

 でも、グラフは相変わらずだった。あいつ、人族の癖になんであんなに器用なんだろう。

 召喚したのは五位精霊だった。確か、グラフが成約した精霊の最高が五位だったと思ったから合わせてやったんだ。それなのに、あいつが出してきたのは四位で、しかも完璧に防御して見せた。

 「グラフ!」

 再開を喜んで窓から飛び込んだボクの目に、グラフに抱きしめられるように守られていた少女が目に入った。

 その瞬間だった、ボクの体が変容をはじめたのは。

 「ぁ……」

 急に体の力が抜けて、思わず膝をつくと、グラフが少女の手を離してボクに駆け寄る。

 体の内側を、何かが高速に蠢いて、ボクを変えて行ってしまう。

 まさかこの感覚は……

 嫌だ、駄目だ。

 「グラ…フ……『アレ』はウィア……?ボクの同族……?」

 事態を察したんだと思う。グラフが驚きに目を見開いて、眉を寄せた。

 「あの子は……ニヒトです…………」

 「そんな……駄目だよ…、ボクの運命が…ニヒトなんて……嫌だ…嫌だ!グラフ、アレをどっかにやって!ボクを止めて!!!」

 「ウォーク、落ち着いて」

 「落ち着けるもんか!お前っ!さっさとボクの前から消えろ!!居なくなれよ!!!ボクのっ…ボクのっ……」

 ――運命のひと――

 彼女は驚きに怒りを潜ませた目でボクを見つめた。

 やめろ、見るな、ボクを見るな!

 変わっていくボクを見ないでくれ!!!

 ボクの意識はそこで途絶えた。


 目覚めると、ベッドの上だった。

 「目が覚めたんですね、ウォーク」

 グラフが、昔と変わらない優しい顔で、ボクの頭を撫でてくれた。

 「……ねぇ、グラフ」

 「なんですか?」

 「ボクは、変わってしまった?ボクは成ってしまった……?」

 グラフが、顔を伏せる。

 あぁ、やっぱり。拭えない違和感が体にある。

 ボクはニヒトつがいに選んでしまった。

 「ボクは男になってしまったんだね……?」

 「……はい」

 「あははっ…どうしようもないよね?だって、これはボク達、ウィア族の性質なんだから……」

 ボク、つまりウィア族は、卵生の性質を一番強く持つ種族だ。

 基本的に群れない鳥であるボク達は、親の手を離れると独りで生き、そして伴侶となるべき同族を探す。ボク達は数が少ない。やっと出会えた番になっていない同族が、運命になり得るウィアが同じ性別では意味が無い。その為、伴侶を見つけるまで無性を保つ。だからそれは、確実に種の存続の為。その筈なのに、ボクは子を生せないニヒトを伴侶に選んでしまった。

 きっとボクが、ボク以外のウィア族の姿けはいを知らないから……

 ボク等の特性として、番になる時力の強いほうが雌になる。これは、卵を守るのが雌の役目だから。雄が倒れた時に確実に卵を、子供を守る為と言われていた。

 「たぶんボクが男になっちゃったのは、さっきのあの子が女の子だったからだよね……?」

 「…そうでしょうね……。確かにレーテミーナ嬢は色の濃い娘ですが、貴方を上回ることはありませんから」

 「よかった…、唯でさえニヒトを選んじゃったのに、力まで劣ってるなんて耐えられないからね……。あぁ、これが男の矜持ってやつ?」

 そう言ってボクが笑うと、グラフは顔をくしゃっと歪めた。

 「なんだよ、泣きたいのはボクなのに、おまえが泣いちゃ…ボク泣けないじゃないか……」

 「すいませ……」

 「謝んないでよ。どうしようも無かったんだし。あぁ、でもあの子には謝んないとなぁ……レーテミーナだっけ?ボクの運命の人……ひどいこと言っちゃったもんなぁ……」

 「会いますか?」

 「…え?まだ居るの?」

 「えぇ、訳も分からず罵声を浴びせられたと怒っていました。謝って貰えるまで帰らないそうです」

 「うわぁ…気の強い子なんだ?」

 「そうですね、ウォークが来る前まではそんな印象は持っていなかったのですが」

 「ってことはボクが怒らせたんだね」

 そう言って笑うと、今度はグラフも控えめに笑ってくれた。

 「連れて…きますか?」

 「うん、お願いするよ。あ、まって!ボク今変じゃない?いつも通り美しいよね!?」

 「…全く、こんな時にも外見を気にするとは君らしいですね……。大丈夫、男に定まって、顔つきがちょっと精悍な感じになりましたよ」

 「それって、綺麗じゃなくなったってこと!?」

 「いえ、誰もが羨むのも馬鹿馬鹿しいと思うくらい好い男になってますよ」

 「そっか、じゃあいっか。ごめん、呼んで来て…あぁ、ボクから行くべきだね」

 ベッドから出ようとすると、グラフが慌てて止める。

 「病み上がり…とは違いますが、一応休んでいてください」

 「う~ん、別に痛いとか辛いとかは無いんだけど……」

 「駄目ですよ、これは兄からの命令です」

 懐かしい。ボクが無茶をすると、いつもこうやって怒られた。

 「分かったよ、兄さん」

 気遣いが、たまらなく嬉しくて、同時に悲しかった。


 「こんな格好、見られたくなかったんだけど」

 しかめっ面で入ってきた彼女はとても美しかった。これでもう少し髪の色が強く黄色だったら、確実に同族だと思うだろう。だから、あの一瞬で勘違いしちゃったのかなぁ……

 「さっきはボクすごく混乱してたんだ。だからとっても失礼なことを言っちゃったんだよ、許して」

 「説明した通り、ウォークは貴女と出逢ったことで男に変容してしまったんです」

 グラフは言い終えた瞬間、失言と気付いたみたいだけど、どうしようも出来なくて俯いた。

 「それは、私のせいって言いたいの?」

 彼女は、すごい怒ってますって顔でボクを見る。

 「う~ん、そうかなぁ」

 「ウォーク!?」

 「え?だって、こんなに美人なんだもん。間違っちゃうのも仕方ないよ」

 「間違って好きになったっていうの!?私のせいで間違って、好きになったのは私のせいなの!?」

 「えー?あ、そっか。好きになったんだね。そっか、ボクは君のことが好きになったんだ。そうだよね、変容しちゃったんだもん、好きだよ、えっと…レーテミーナ?」

 「な、なにそれ!!私は嫌いよ!あなたみたいないい加減な人!!!」

 そう言い捨てて、彼女は部屋を飛び出していった。

 「……ウォーク…、君も十六になったんだから、もう少し……」

 「やっぱり、ボク失敗した?」

 「それはもう、盛大に失敗しましたね」

 「だよねぇー……」

 それが、ボク達の出会いだった。


 それから、なんとか彼女と仲直りしようと色々手を尽くした。

 不思議なことに、好きだって気持ちが驚くくらい日に日に高まっていって、最初はなんでニヒトの女なんかって正直思ってたのに、もう彼女以外考えられなくなっていた。

 生涯伴侶しか愛さず、亡くせば後を追うように果てるっていう話しに、妙に納得した。ボクはもう、レーテミーナしか愛せない。彼女を亡くしたらボクの心は死んで、それに合わせて体も死んでいってしまうだろう。

 それぐらい、彼女を愛するようになった。

 求める気持ちが強くなり過ぎて、自分でも持て余すくらいに愛するようになった。

 ボクがウィア族で、しかも白の森の学園に居たことはとても役に立った。レーテミーナの父親が、ボクを気に入ってくれたからだ。もちろん、ボクの力を利用するためだって言うのは分かっていた。でも、ボクが住む場所が無いと言えば、屋敷の一室を与えてくれた。ボクは、毎日彼女と同じ空間にいられることに、とても、とても感謝した。

 だけど、彼女を追いかけて気付いた。彼女はよりにもよってボクの親友で、兄のような人……グラフに恋心を抱いていた。悲しくて、でも嬉しかった。グラフはどうしようもないくらい良いヤツだから。ボクの運命が、最良の選択をしたことが嬉しかった。

 これでも、引くつもりだったんだよ?それなのに、彼女がボクのこと嫌いじゃないなんて言うから、ボクを頼ってくれるから、その頬に触れることを許してくれるから……種族の定めを捻じ曲げても、彼女が欲しくて堪らなくなった。我慢が利かなくなったんだ。

 でも、理由があった。彼女がボクを嫌いじゃないなんて言ってくれたのは、グラフが運命の人を見つけてしまったからだった。

 そういえば、あれは面白かったなぁ。ボクから見たらどう考えても惚れてるのに、好きで好きで好き過ぎて、まるでボクにとってのレーテミーナみたいに、彼女だけが心の拠り所になっちゃってるのに、グラフってば、そのことに気付いていないんだもん。

 でも、レーテミーナの恋は、ボクらの想いとは違う。憧れの気持ちが強い。守られる充足感を求める気持ちが強い。それだって、別に悪いことじゃない。でも、彼女はグラフに想い人が出来て、ボクに寄りかかった。そこでボクに寄りかかってくれるなら、ボクでいいのかなって思っちゃうじゃない?

 レーテミーナだって、嫌がらなかった。ミーナって呼んでも、ちょっとだけ怒って、でも許してくれた。脈があるって思うよね?たとえ身代わりでも、構わなかったんだ。いつか本当にボクを愛するようになってくれたら…いや、愛じゃなくてもいい。傍に居てほしかった、とにかくミーナが欲しかった。ボクはもう、子供なんて出来なくてもミーナさえボクの傍に居てくれればそれでいいって思うようになってたんだ。

 だから、本気でつがいになってって頼んだ。ニヒト族風にちゃんと結婚を申し込んだんだよ?交際をすっ飛ばしちゃったけど、ボクの運命だから……想いが強くなり過ぎて、いっそミーナに溶け込みたい、彼女の一部だったら良かったのになんて思うようになってしまっていたんだ。

 もちろん、ミーナは良い返事をくれなかった。それどころか、あんなに思わせぶりなことしたくせに、ボクとは絶対に付き合えないなんて言うんだ。

 詰め寄ったよ、どうして駄目なんだって、ボクは強くて、顔も良いし、グラフみたいに性格がいいとは言えないけど、ミーナとは凄く気が合った。それなのになんで駄目なんだって。

 そしたら、泣きながら言うんだ。


 「私は…子供が欲しいの……愛した人との子供を自分で産みたいのよ!」

 「そんなの…どうすることも出来ないじゃないか」

 「そうよ!だからあなたとは付き合えない、結婚しない、好きになんてならない!」

 「いやだ、いやだ、いやだ!ボクは君が好きだ!君はボクの運命なんだ!好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ!!!」

 「もういい加減にして!やめてよ!」

 ミーナが泣き叫ぶ。ボクもみっともなくボロボロと泣いていた。

 「ミーナこそいい加減諦めなよ!ボクたちは結ばれる運命なんだから!」

 そうだ、ボクだけの運命じゃない、ミーナだって、ボクが運命なんだ。

 たとえボクが出来損ないのウィア族だとしても、想いの通じない相手に体は変容なんてしないんだから。想いが通じると本能が悟ったから、ボクの運命がミーナだったのは、ミーナの運命がボクだったからだ!

 「運命なんて言葉うんざり!私は人間なの!あなたとは違うのよ!!」

 そう叫んで、ミーナは部屋を飛び出してしまう。追いかけることは簡単だけど、ボクにはそれが出来なかった。

 ニヒト族とウィア族。そんな違いボクが一番良く分かっている。でも、ボクは君に出会ってしまったんだ。君を見て、ボクの心が君を選んでしまったんだ。

 「しょうがないじゃないか!しょうがないだろ!!ボクだって、ボクだってニヒトだったら!!!」

 ニヒトに生まれていたら、両親を亡くさないで済んだかもしれない!命卵を持って生まれて、どこかで偶然君に出会って、ゆっくりでも二人で想いを育てていけたかもしれない!

 何度も考えた、何度も運命を呪った。

 でも、事実は変えられないんだ!ボクがウィア族で、ミーナがニヒト族に生まれたことは神だって…あの方にだって、変えられないんだ……

 「くそっ!くそっ!くそぉおお!!!」

 感情に任せて叩いた壁。血を滲ませた拳よりも、心が痛い。

 「痛いよ、ミーナ……」

 もう、君を想い過ぎて、心が張り裂けそうなんだ……

 抱きしめてよ、ボクを……


 君と幸せになりたいんだ

 だから、ボクの傍に居て

 ボクだけのミーナ……

姿を気配と読ませているのはわざとです。


5000字超えとか無駄に頑張っちゃった。

熱情に浮かされて書いたので、荒削りだけど、多分改稿はしません。あしからず。

余計にレーテミーナを嫌いになる人が増えそうな内容ですが、いずれミーナサイドを書きたいと思います。

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