012 ライバルの登場です!
気持ちが、貴族奥様になってきたのか、リリー独白敬語が板についてきたようですね。えぇ、最初定まってなかっただけです。大幅開校したほうがいいかな……
起きてビクリ!気がついたら、何故か熊さんの胸元で寝てました!対面して座ってたはずなのになんで隣に移動してたのか謎です。
しかも、抱きしめられている上に熊さん寝てるから動けません。なぜに私が起きたかと言えば、熊さんのアゴが私の頭に刺さってたです。痛いです!
ま、いいや。熊さんスヤスヤ寝てるみたいだし。
どうやら、私はかなり長い間眠っていたらしく、程無くして馬車が止まります。と、熊さんが起きて、へにゃりと笑いました。うん、熊さんはけっこうへたれ可愛いと思います。
「おはようございます、猫さん」
「夕方でゴザイマスヨ、フィオ様」
本当に、「猫さん」に他意はないんだろうか……私の疑る目を怒っていると勘違いしたのか、熊さんがすいませんと小さく謝って、抱きしめたまんまだった手を離す。うっかり、抱きしめられていたことを忘れていたので、ちょっと今更恥ずかしくなります。
たははっと笑うと、熊さんも恥ずかしそうに笑います。そういや、過去世でも恋人なんて居たことが無かったので、こういうの凄い恥ずかしいです!ほんと、今更気付きました!恥ずかしいです!てか、結婚してから互いを知っていくて、某女芸人さんのようですね!私達もベスト夫婦になれるよう頑張らねば。
馬車の扉が開いて、御者さんが私をエスコートして降ろしてくれました。奥様って感じです。座って寝てたにも関わらず、そこまで体がバキバキになっていない。熊さんはいい布団になるらしいですよ?だけど、逆に大きな体を馬車に押し込めていた熊さんは体中痛くなってしまったらしく、伸びをすると、腰に手を当てて体を捻ってました。
別荘は実家(と呼ぶ存在になってしまったのだなぁ……)ぐらいありました。家にいた頃でも、無駄に広いと思っていたのに、こんな別荘をいくつも持っているらしい熊さん家は、やはりかなりの資産家貴族のようです。
ボケーっと別荘を見ていると、熊さんが手を差し伸べてきました。エスコートですね。さっき御者さんにもされましたが、まだ慣れません。根っからの庶民ですから!オズオズと手を乗せようとした瞬間、私の手は空を切り、ちょっと踏鞴を踏む嵌めになります。そして、同時に横から「ぐっ!」ってダンディな声がしました。
「いやですわー!」
その声にびっくりして横を見ると、熊さんの腰に女性がへばり付いています。エレースちゃんの時のように可愛いとは思えません。何故かムッとします。
「……レーテミーナ嬢……?」
とか言う名前だそうですよ!!
「そんな、ミーナとお呼び下さいませ、フィオ様……」
語尾に明らかにハートマークがついています。私の存在が明らかに無視されています。なんか、ふてぶてしいです。そんなことよりフィオ様と呼んでいいのは私とエレースちゃんだけのはずだ!……少ないな…熊さん……。ちょっと淋しい心境になります。なぜかといえば、貴族界には慣例として、二つに分けられるような名前をつけることになっているからです。
例えば私の「ミーレリリー」
一般の場で呼ばれる時は「ミーレリリー」親しい間柄の方は「ミーレ」そして、身内だけが「リリー」と呼ぶことが許されます。だから、私の事をリリーと呼んでいいのは祖父母に両親と大体イトコぐらいまでの親族、夫とその子供、孫ぐらいまでです。おぉ…いずれ、「リリーおばあちゃま」とか言われるようになるんでしょうか……なんか、なんかです!よくわからんですがなんか不思議な心地です!
って、脱線したな。えっと、ちなみにイルラン家はほぼ一般市民だったので、そんな畏まった名前は付けず、パパンは「コルタ」です。でもママンはイルラン家に嫁に来たので「ロキアウーラ」って名前だったりします。以上、貴族豆っぽい知識でした。
じゃなくて!誰さこの子!熊さんがロングネームを使ったからには、特に親しい間柄ではないはずです!なのに、グラフ様すっ飛ばしてフィオ様とか呼びやがりましたよ!
「伯爵家のお嬢様が、なんとお行儀の悪いことでしょうねぇ」
荷物を抱えつつ、独り言の振りしてメイド長のアルシラさんが呟きます。声大きいです。そして、私達に「荷物を置いてまいりますね」とか言いつつ、スタスタ別荘に行ってしまいます。
「まぁ、わたくしとしたことが……」
なんて恥ずかしそうに、顔に手を当てて飛びつき女が可愛い子振ります。私の直感が告げました。こいつは、嫌なタイプの女だ!と。
熊さんがさりげなく嫌な女から距離をとり、咳を一つ落とします。
「リリー」
明らかに強調した声で名前を呼びつつ、私の腰に手を回します。いやらしくはありません!紳士っぽくです!熊さんはダンディーな侯爵ですから!
「こちらは、セッターリンガ伯爵家のご令嬢、レーテミーナ嬢」
言われてレーテミーナ様(とか言いたくないけど)は優雅に会釈してきます。でも目がバチバチしてます。笑いながら睨むとか難しい芸当をこなしています。
「お初にお目にかかりますわ。わたくし、レーテミーナ・ユーノ・セッターリンガと申します」
「レーテミーナ嬢、彼女が私の妻、ミーレリリーです」
とりあえず私も会釈します。笑顔が不自然になってないか心配です。
「ミーレリリー・リファ・フェイ・アステリグライ・リヒティエリュートです。よろしくお願いいたしますね」
笑顔どころか、言葉が不自然になりました。一月の地獄の特訓も、突発的な事態では訳に立ちません。でも、名前を噛まずに言えたから、まぁ良しとすることにします。「リファ」の部分に無駄に力を入れてみました。侯爵夫人って意味だったりします。
「えぇ、ぜひ仲良くしてくださいませ、ミーレリリー様」
くっ!なんか嫌味ったらしいです!ドロドロした何かがこっちに流れてきます!こういうの苦手ですよ私は!今、女の戦い頑張ってるよかなり!
「それで、レーテミーナ嬢、今日は何故こちらに?」
大人の風格を漂わせ、熊さんが問います。
「今日はお父様の用事に付き合って来たのですわ。ですが、殿方のお話の邪魔をする訳にもまいりませんでしょう?少し散策をと思いましてゆっくり湖畔を目指しておりました。ですが、なぜかしら?勝手に足がフィオ様の別荘のほうに向いてしまって……」
語尾に「ふふっ」とか笑いを入れてます。お嬢様は完璧ですね。
「そうでしたか。しかし、もう日暮れですから、セッターリンガ伯爵も心配しているでしょう。歩いて来られたのなら足も無いはずですし、馬車を出しますので、どうぞお使い下さい」
熊さん、紳士的にお嬢様を帰そうとしています。これが社交術ですね。ん?いや、これはへたれ熊さんの喋り方ですよ…あれ?
「まぁ、お気遣いありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂き…あぁ……」
なんて言いながら、昔の漫画みたいに倒れる振りですよ!紳士熊さんがとっさに支えましたよ!さすが熊さんです!でも、なんかイラッとします!まだ惚れてるつもりはないのですが、ちゃんと夫として熊さんのことを認識しているみたいですね、私は。ちょっと驚き。
「大丈夫ですか?」
「…申し訳ありません……立ちくらみかしら……?」
凄くわざとらしいです!この人居座る気満々です!
「それは、大変ですね。当家の馬車は私に合わせて大きめに設えてありますから、お戻りになる間、横になれるよう、手配いたしましょう」
ちょ!熊さん強いなおい!へたれ強気!?
「少し!少し休めば大丈夫ですわ!」
今まで、熊さんに凭れかかっていたのに、シャキっと体を伸ばして、必死に言う。なんか、返ってこのご令嬢が不憫に思えてきたわ……。
なんて、思ってると熊さんがこっちをチラ見してくる。なんだ?私の出番なのか?えぇっと……
「しか……」
「よろ……」
あ、被った……えっと、いいや!続けてしまえ!
「……しければ、少し休んでいってくださいませ。私、こちらの別荘に来るのは初めてで、お気遣い出来ないかもしれませんが」
やっぱり上手く喋れないよ!ごめんなさい、○リマン先生……。そして熊さんがちょっとしょんぼりしてるよ!私は選択肢を間違えたらしいです。ごめんね、熊さん!
「まぁ、ありがとうございます、ミーレリリー様。実はわたくしこちらの別荘には何度かお邪魔したことがありますの。ミーレリリー様が不慣れというのでしたら、わたくしがご案内致しますわ」
あれ?なに?なんで勝ち誇られてんの私……?
リフ=侯爵 リファ=公爵夫人
トユ=伯爵 トューア=伯爵夫人
カレ=子爵 カレア=子爵夫人
シェグ=男爵 シェガー=男爵夫人
ってことにした。爵位を表す名前ってことで。どんどんややこしくなってくね!正直めんどい!




