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第1話:謎の少年の戦い

「おい、やめろよ!」

アンと、盗賊を含めた周りの人たちは、声がした方へ振り返った。それは、一人の少年からの一言だった。

「何だぁ〜貴様…一体何を止めろと言いてえんだよ…おぉ!?」

盗賊の頭は、さっそくその少年の方へ脅しにかけた。しかし少年はなんとも無い顔で、

「いくらそいつの猫が、喋って、二足歩行で、しかも『ブー』って口癖があるから珍しいからって、そいつには飼い主がいるんだから売ろうとするのは止めろって言ってるんだ!!」

「そっちの方かよ!!」

と思わずアンや周りの人たちは、その少年の方へツッコミをした…。アンもてっきり、言うのもなんだが自分の方かと思っていたのだ。

「おい、何だよガキ。オメー俺達に喧嘩売ってんのかよ。大体なぁ…悪いのはこの小娘なんっ…!」

と頭についている子分の一人が少年の前に言いかけたとたん、頭の方がサッと子分の前に手をかけた。頭は、ニヤリと摘んでたラックをボテッと、落とし、少年の前に向かって笑い、

「おい、小僧どうやらこの俺様とりてーみてーだな…。けどな、オメーみたいなガキなんかが俺様と殺るなんて百億年早えーんだよ!それでも…、殺るか?」

頭はそういって、少年の方へにらみつけた。辺りは、沈黙に包まれた。それを聞いていた少年は余裕たっぷりな表情でニヤッと歯を見せて笑い、

「ああ、やるとも…!」

少年はそう言って背中になにやらしょっていた物を取り出し始めた。サーベルだ。それも二本で形や柄、つばはクロイツのような同じデザインだが、つばにはめてある石はサンストーンとムーンストーンで違う石だ。少年はその二つの中の右にしょっているサンストーンをはめているものだけを取り出し、サッと身を構えた。

すると、


シャキ―――――ン!


身を構えたかと思ったら、少年はいつのまにか頭の方に刃を向けていた。それも少年は、サーベルを持っている右手だけで、頭を押さえつけている。刃こぼれし、古い血で汚れた頭のサーベルの刃と、鏡のように反射して刃こぼれがない少年の刃が、キリキリと鳴っている。

「どうした?お前、ガキだと思って手加減してるんじゃないのか?」

「くっ!!」

頭は正直手加減をしていなかった。こんなガキを相手にするなんてやってられないから、さっさと片付けたかったのだ。

(く、くそ!こんなガキにてこずってたまるか!しかし、このままじゃやっぱりヤベーな…)

頭がそう思っていると少年のやいばが真正面に襲ってきた。幸い何とか抑えたが、衝撃が強く利き手に振動が残る。

それを見ていたアンや周りの人たちは、ただボーと見ていた。あっけに取られている者もいれば、周りにいる人たちはヒソヒソと隣同士で話している者もいる。一方少年と頭の方はまだ勝敗もついておらず、ただ抑え合っている。しかし、少年の方が一歩リードしていた。

「くっ!くく…くそ…!」

「?」

頭がなにやらつぶやいたような気がして少年は少し首をかしげた。

「この…俺様が…こんなガキ相手…に…負けてたまるかよ――!!!」

頭がそう叫んだとたん、少年の右足を思いっきり横の方に蹴りだした。

「うわっ!!」

少年は足を崩し、右の方に転び地面にぶつかった後すぐに傾き、仰向けになった。少年の目にひとつの背景が浮かんだ。雲がひとつもない青い空と一羽、二羽と飛ぶカモメ、そして空の真ん中にまぶしい太陽が光り、その下に頭がただ目の前に立っていた。

「ちょ、ちょっと!卑怯じゃないの!!ちゃんと正々堂々と戦いなさいよ!!」

思わずその光景を見ていたアンは、頭の前で叫んだ。アンの声を聞いた頭は、ちらりとアンの方を睨み、

「ヘン!そんなもん知るかよ!!俺様みてーな闇で生きている奴は、そんな正々堂々戦ってられるか!!!」

そう叫んだ頭は、目を少年の方に向けて二ッと笑った。

「おい、小僧…」

「………」

頭は少年の前で呟いた。さらに頭は言葉の続きを喋りだした。

「何か言い残すことはねえか…?」

「………」

少年は無言のまま頭の目を見つめている。頭は声を漏らしながら笑い、

「そうか、無えーのか…。その年でお前は良くやったぜぇ…俺様や野郎共が誉めてたたえてやる…まあその幼い年で命を亡くすのは少しかわいそうだがな…ハ――ハッハッハッハッハッハッ!!」

そして頭は、サーベルを少年の前に向け、

「あばよ!」

と頭は思いっきりサーベルを振りかざした。

アンはとうとうあの盗賊たちに頭にきた。そして頭がいるほう近づこうとしたそのとたん、

「キュ―――ーー!!」

突然少年の服のしたから、何かが現れた。クリーム色と茶色の毛が横じまに生えていて、胴体はひょろ長く、尻尾はフサフサして、顔は小さい。目は赤色で、前歯は長めだ。

そのひょろ長い生き物は頭の左の人差し指を思いっきりガブリと噛み付いた。

「っってぇ―――!!!!」

ひょろ長い生き物に噛み付かれた頭は思わず自分のサーベルを放し、思いっきり左腕を振りだした。しかし、ひょろ長い生き物はしつこくなかなか離れない。そして頭はハッとした。少年がムクリとおきだしたのだ。

「よくやった!助かったぜ!!」

そうひょろ長い生き物に言った少年はいたずらっぽく笑い、すぐ頭の前にサーベルを振りかざした。頭は声にならない『待った』と言おうとしたが、それも遅かった。

「ぎゃ―――ああああああああああ!!!!」

頭は見事にやられてしまい、それを見た子分たちは慌てて『お頭――!!』と叫びながら2、3人だが蟻のようにして群がり、えっさえっさと頭を運び去っていった。周りにいた人たちもホッとし、またいつもの騒がしい港に元どおりした。

アンと頭に落とされたラックはは少年の方へ近づきだした。

「あ、ありがとっ…」

そう言いかけたとたん、いきなり少年がフラッと傾きだした。危ないと思ったアンは急いで少年の方に駆け出した。


ドスン…!!


何とか頭の辺りはアンのひざ元に倒れ、無事であった。アンは恐る恐る少年に近づき口を開いた。

「大丈夫…?」

後からラックとあの少年を助けたひょろ長い生き物が少年に近づき少年の顔の様子を見た。少年はくるりと首をアンの顔の方に向き、そして

「腹…減ったぁ……」

と一言呟き、ガクッと首を右に傾いて、グーといびきをかいて眠ってしまった。

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