第1話 タランチュラ
俺は我聞映司、36才のおっさんだ。
今日も仕事から帰ってきた。仕事というのは鍛冶屋だ。今時古臭い職種だが就職難でいつの間にか人の伝手でなることになった。
趣味は筋トレ。おっさんは仕事から帰るとダンベルで体を鍛えるのが日課だ。鍛冶屋の仕事でも鍛えられるのだが筋力が多いにこしたことはない職種なのだ。
あとは、休みの日にサーフィンをするのが趣味だ。とことん自然派な生活になってしまっている。都会とは縁遠い場所なのだ。
まあ、そんなことはいいとして今日も鍛える。明日は休みだ。思う存分波乗りをするんだ。
そんなことを思ってシャワーを浴びて布団に入って寝た。
朝になった。起きてみるといろいろとおかしな事になっていた。
まず、俺は布団で寝たはずなのに森の中にいる。なぜなんだ?
そして、視界がどうも変だ。やけに広い。おかしくないか、これ?
体を見てみると驚いた!まじで驚いだ!
銀色の体毛じゃん?俺って毛深くはなかったはずだ。むしろ毛が薄かった。膝から下なんてツルツルってくらい薄かった。何故だ?
よく見ると足が8本になってた。これって人間じゃないんじゃないか?しかも昆虫っぽい。
俺は冷静になって考えてみた。俺の知っている昆虫でこんな足をしているのは蜘蛛か?
だが、蜘蛛に関しては俺は詳しい。なぜなら蜘蛛を飼ったことがあるからだ。
そして、俺の予想ではこれはタランチュラだ。しかしなぜタランチュラなんだ?
しかもなんか体がでかいような気がする。体をワサワサ動かし見ると2m近くあるような大きさだ。
そして、眉間のあたりになにか違和感を感じる。そこに集中してみると文字が出てきた。
《シルバージャイアントタランチュラ》レベル1
<スキル> 猛毒レベル1
<限定スキル> なし
<ステータス> なし
俺はシルバージャイアントタランチュラというものになったのか。かっこいい名前じゃないか。
いや、そこじゃない。なんでこうなった。
しかも、猛毒は分かる。限定スキルとはなんなんだ?
ヘルプを探したがどこにもない…。不親切だ!
まず、俺の武器はなんだ?タランチュラの武器は毒を持つ牙と体毛を飛ばすことによる攻撃だ。もちろん、毒の体毛だが、麻痺させて毒が体に回ると殺すことができる。試しに体毛を飛ばしたら飛んだ。これしか武器がないんか…。
とりあえず、朝ごはんを食べたくなった。意外と冷静な俺だった。
これだけ体がでかいと木にも登れない…。地道に歩いて行くしかないようだ。
森を歩いているとでかいカブトムシに出会った。こいつも2mくらいある。虫の王者だ!だが、しかし俺の敵ではない。体毛を飛ばした。鎧で弾かれた…。それってインチキじゃないか!
こちらは蜘蛛なので柔らかい体だ。カブトムシのでかい角で突き刺されただけでイチコロじゃないか?
いきなり巨大カブトムシとのガチバトルが始まった。
カブトムシを昔飼っていたことがある。鎧の間に隙間があるはずだ。俺は横に移動しながら猛毒の体毛を飛ばした。
近づかれたら俺の負けだ。距離をとりながら戦うしかない…。
俺はカブトムシの角を避けて距離をとりながら何度も体毛を飛ばす。だんだん、カブトムシの動きが鈍くなってきた。痺れているのか?
やがてカブトムシは動きを止めた。
だが、これはさすがに食べれない…。
いくらなんでも虫を食うのは俺には無理だ…、俺は泣いた。
せっかく戦ったのに虚しい結果となった。
せめて哺乳類にして欲しい。それなら食べれる。哺乳類を探しにさらに森を彷徨った。俺の知識ではタランチュラは数ヶ月食べなくても生きられるというがでも朝ごはんは食べたい。彷徨い続けているとウサギを見つけた。4mはある…。
つーか、この森の生物ってみんな大きさがおかしくないか?
ウサギを遠くからよく見ると頭にでかい角が生えている…。勝てるのか俺?ここで負けたら死んでしまう…。
しかし、哺乳類の朝ごはんはこのウサギしかいない。逃げられたら俺の足では追いつかないだろう。死角から近づくことにする。
いきなり体毛を飛ばした。さすがにウサギも俺に気づいた。攻撃される前にアウトレンジで仕留めるしかない。
あのでかい角を食らったら一撃で死んでしまう。体毛を飛ばしまくった。角の一撃が来る!俺は横に飛んだ。
そしてウサギに絡みつく。毒の牙を突き立てた。それに俺の体の毛はすべて猛毒だ。
ウサギは俺を振り払おうとする動きが鈍くなっていき動かなくなった。
やっとのことで朝ごはんが手に入ったが火がない…。生でこれを食えというのか。
うーん、悩んでみたが何も解決にならん。とりあえず、食べてみた。牙の麻痺毒は消化液にもなっている。溶かしながら食べるのだ。やはりウサギはうまかった。やはり食べるなら哺乳類だよなぁ。ウサギを食べてお腹一杯になったところでまた眉間がむずむずする。しょうがないので眉間に意識を集中した。
《シルバージャイアントタランチュラ》レベル3
<スキル> 猛毒レベル2、擬態レベル1
<限定スキル> ジャンプレベル1
<擬態可能>一角ウサギ
<ステータス> なし
なにやら擬態というスキルが新しく増えていた。なんだこれ?ジャンプは分かりやすいが擬態は意味が分からん。
お腹も一杯になったことだし、考えてみた。擬態可能がヒントなのか?ウサギになれるのか?
そして気づいた。俺はこの森の知識が増えていた。ウサギの知識を奪ったのか?謎は深まるばかりだ。
擬態と知識は関係あるのか?俺は考えてみた。
とりあえず、ウサギの体に変化するイメージをしてみた。体がなんか変化していく。これが擬態というやつか。
体が変化し終わったようだ。眉間に集中してみた。
《シルバージャイアントタランチュラ》レベル3
<スキル> 猛毒レベル2、擬態レベル1
<限定スキル> ジャンプレベル1
<擬態可能>一角ウサギ
<ステータス> 一角ウサギ(名称:不明)6
また、謎が増えた。名称とはなんなんだ?そして、後ろの6の数字の意味はなんだ?まあ、一角ウサギにはなれたようだ。正直、蜘蛛よりはウサギの方が見栄えがいい。
そういえば、毒はどこにいった?貴重な武器なんだが…。
手で口を触ると牙が生えていた。おお、ウサギの歯じゃなくタランチュラの牙だ。どうやら毒の牙は健在だ。
毒の体毛はどうなるんだ?腕に集中してみると白い体毛から銀色の毛が生えてきた。おお、毒の体毛もちゃんと出てくる。
そして、肝心の森の知識だ。この森にはやはり6mくらいの熊もいるらしい。こいつに出会ったら逃げるしかない。森の王者だ。まず勝てない。幸いウサギの足は早い。4mのウサギだ。並の早さじゃない。だが、5mくらいの狼もいるらしい。こいつは足が早い。生き残るにはウサギの群れに戻るしかない。群れで生活した方が生存確率があがるようだ。
俺は考えた。ウサギの群れに行くか、このまま新しい擬態の体を手に入れるかだ。6という数字も気になる。
ウサギはこの森では昆虫よりは強いが哺乳類では弱い部類になる。強い体に憧れる。だが、勝てる保証はない…。
だが、弱いままではいずれ食われるだろう。時間の問題だ。弱肉強食の世界なのだ。
まあ、今日は体を休めよう。俺はウサギの群れに向かった。
一角ウサギたちがいた。やはり、ウサギは可愛い。和むなぁ。体をすりすりをしあっている。俺も体をウサギとすりすりした、気持いい。和むしこのままウサギのままでいいかもしれない。そして、夜が来て体を寄せ合いながら俺は寝た。
新しく物語が始まりました。主人公は蜘蛛です。




