断片|視察復命書
内閣府直轄 神格管理庁 地方監察課
視察復命書(写し)
文書番号:■■-■■■(判読不能)
視察日:平成■■年 七月
視察者:白崎誠(地方監察課 主任)
一、視察目的
本郡西南、山間某村における〈■■神〉信仰の現況確認。前回視察(大正期)より約■十年、当該信仰の活動が休眠状態にあるか否かを確認するため、単独にて現地入りした。
二、現地の状況
村は一見して平穏であった。住民は皆、外来者たる私に対して極めて友好的であり、宿泊・食事の便宜まで図っていただいた。
村長・虚木清一氏との面談においても、当該信仰が「今は昔の言い伝えに過ぎぬ」旨の説明を受けた。村内の祠・洞窟の存在は確認したが、封鎖状態にあり、活動の徴候は見受けられなかった。
三、所感
規定に基づき「休眠継続、経過観察」の結論を報告する所存であったが、私見を付記する。
村人の笑顔について、報告者は強い違和感を覚えた。理由は明確に言語化できない。ただ、あまりにも均一な笑顔であった、とだけ記す。
また、視察最終日の夜、宿泊先近くの井戸から、水音とも呼吸ともつかぬ音を聞いた気がしたが、これは疲労による幻聴と判断し、正式な記録からは除外する。
四、結語
村側の対応は全面的に協力的であり、これ以上の詳細調査を行う法的根拠に乏しい。本件、引き続き「休眠」区分での経過観察を提言する。
(決裁欄)
課長:了 / 部長:了
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(後年、余白に鉛筆書きの追記あり。筆跡は本文と同一と推定される)
あの村の笑顔が忘れられない。
もし次に何か起きたら、今度こそ見過ごさない。




