第12話 勝てない敵
ドシン……
ドシン……
地面が揺れるような重い足音。
俺はゆっくり振り向いた。
そこに立っていたのは――
オーク。
身長は2メートル近い。
灰色の皮膚。
太い腕。
そして手には巨大な棍棒。
「……またお前かよ」
前に一度だけ見た魔物だ。
あの時は遠くからだった。
だが今は違う。
距離は――
20メートルもない。
そして。
ガサッ。
茂みが揺れる。
もう一匹出てきた。
「……」
「……マジか」
オークが
二匹。
しかも二匹ともこちらを見ている。
「グォ……」
低い唸り声。
完全に
敵認定された。
(いやいやいや)
俺は頭の中で叫んだ。
(無理だろこれ!)
ゴブリンとは体格が違う。
フォレストウルフよりも大きい。
そして何より――
棍棒がでかすぎる。
あんなの当たったら
普通に死ぬ。
「……よし」
俺はナイフをしまった。
そして小さく呟く。
「逃げよう」
その瞬間。
オークの一匹が動いた。
「グォォ!!」
ドシン!!
地面を踏みしめて走ってくる。
「うおっ!?」
速い。
見た目よりずっと速い。
俺はすぐ走り出した。
森の奥へ。
全力で。
「はっ……!」
「はっ……!」
木々の間を駆け抜ける。
枝が顔に当たる。
それでも止まらない。
後ろから――
ドシン!!
ドシン!!
足音が追いかけてくる。
(マジで追ってきてる!)
俺は振り向いた。
オークが一匹、
全力で追いかけてきている。
もう一匹は少し遅れている。
「くそっ……!」
俺は必死に走る。
だが――
体格差がある。
このままじゃ追いつかれる。
その時。
目の前に倒木があった。
「よし……!」
俺は飛び越える。
ヒョイッ。
軽く越える。
だが次の瞬間。
ドゴォン!!
後ろで大きな音がした。
「え?」
振り向く。
オークが――
倒木を蹴り飛ばしていた。
「嘘だろ!?」
丸太みたいな木が
転がっていく。
パワーが桁違いだ。
(これは本気でまずい)
俺はさらに速度を上げた。
心臓がバクバク鳴る。
肺が痛い。
だが止まれない。
その時。
森の木々が
少しずつ減ってきた。
「……?」
前が明るい。
森の出口だ。
俺は全力で走った。
そして――
森を飛び出す。
「はぁ……!」
そこには
広い草原が広がっていた。
そして遠くに――
大きな石の壁。
(あれって……)
よく見ると。
門がある。
人がいる。
「街……?」
俺が呟いた瞬間。
後ろから
「グォォ!!」
オークが森から飛び出してきた。
「うわっ!」
その時。
門の上から声が聞こえた。
「オークだ!!」
「弓を構えろ!!」
ヒュン!!
矢が飛ぶ。
ドスッ!!
「グォ!?」
オークの肩に矢が刺さる。
さらに――
ヒュン!ヒュン!
矢の雨。
オークが後ろに下がる。
そして――
森へ逃げていった。
静寂。
「……」
「……助かった」
俺はその場に座り込んだ。
門の兵士が近づいてくる。
「おい大丈夫か?」
鎧を着た男だった。
「……なんとか」
「オークに追われてたのか?」
「はい……」
兵士は少し驚いた顔をした。
「一人で?」
「そうです」
男は少し笑った。
「運がいいな」
「もう少し遅かったら死んでたぞ」
俺は苦笑いした。
「それは……思いました」
兵士は門の方を指差した。
「とりあえず街に入れ」
「ここは危ない」
俺はゆっくり立ち上がった。
そして――
初めてその街を見た。
巨大な石壁。
大きな門。
多くの人。
「ここが……」
俺が異世界で訪れた最初の街になるのか…
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