最強の話
「諸軍。最強が帰って来たぞ。」
赤髪ロングの圧力がある目力。忘れるはずもない、
私たちの大好きな、私たちの、【最強】。
でも、レッドドラゴンに四肢を引き裂かれて、魔力制御の指輪だけ残して跡形もなく消えたはず…。
あり得るとしたら、【蘇生魔法】だけ。
そんなことができるのは特級治癒師ぐらいではないか?
「あの、最強。」
「なんだ?」
「貴方は、誰ですか?」
彼女は顔を歪ませた。
死んだはずのパーティメンバーか帰って来た件.
最強。
それは彼女のために作られたのではないかと疑うほど、
彼女に良く似合う。
【ムーンウォーク】私が入っているパーティ名だ。
私たちを率いるリーダーが彼女。シーリア・リン。
だが、彼女は、我々パーティメンバーを庇って、勝てるはずのレッドドラゴンに四肢を引き裂かれ、魔力が切れて消えていった。
それは確かだ。
「彼女はどこまでも臆病で優しい女だった。」
「リンが死ぬ必要はなかった。私が死ねばよかった。」
「シーリアさんはいつまでも私の憧れです。」
私と合わせて四人は彼女のことを知っているつもりで、この死を無駄にしないと神に誓っていた。
それなのに。街を歩くと、目立つあの髪色の女がいた。
見入ってしまった。
彼女そっくりでありながら、どこか遠くを見ている様に儚かった。
彼女はいつも前を向いていた。
私たちのことには興味ない様に見えて、すぐに変化に気づく彼女のことが大好きだった。
「久しいな、ユユ。」
ユユ。
私を呼んだその声は、また呼んで欲しいと願った声。
でも、感情がこもっていない様に聞こえた。
おかしい。気づきたくなかった。
「リンちゃん。なんで、ここにいるの…?」
私たちの最強は、いつもみたいに無理に笑った。
笑うのが苦手なことを笑ったりしないのに、彼女は無理に笑う。
そんなところは真似しなくていいのにね。
「君らに会いに来たんだよ。」
「リンちゃんは本当に。バカだよ、バカすぎるよ…っ。」
あぁ、その顔で撫でないで。また思い出しちゃうから。
何か違うのはわかってるよ。君は前までのリンちゃんじゃない。
「ケンとシュウにも会いたい。ユユ。連れていってくれ。」
「うん…っ!」
大好きだよ、リンちゃん。偽物だとしてもね。
あの時、リンちゃんは確実に死んだ。痛いだって埋葬した。
それなのに、肉体もあれば声や記憶もある。
蘇生魔法しか考えられない、だけど、蘇生魔法を使える人間なんて…いるはずないよね…?
特級治癒師はここからはずっと離れた場所にしかいない。
そんな一瞬で来れるわけないよ…。
じゃあ、彼女を偽物と疑うしかない。
「ユユー?」
「ん〜?どうしたのリンちゃん!」
「ぼーっとしてるからさ。」
「……リンちゃんが帰って来たのが嬉しくてね。」
「ふぅん?」
最強。君はどこにいる。こんな奴が君の真似をしてる。
全然違うんだよ。コイツは、リンちゃんじゃない。
最強。私が見つけ出してあげる。
そうたら本当に帰って来てね。
中々あらすじに入れないんです。
前置きが多いのは気にしないでくださいね。
頑張りますから。