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遭遇

早川書房「戦闘妖精雪風」


フロム・ソフトウェア「アーマードコア」


日本サンライズ「機動戦士ガンダム」


などの多くのSF作品から多大なる影響を受けた作品でありますゆえ一部設定やシステムがちらほら出てくるとは思いますがオリジナリティを入れていく所存であります

1


雲海への降下を開始して数分。静寂を破ったのは、甲高いアラート音だった。

突然、ヘッドアップディスプレイに複数の未確認機を示すマーカーが点灯する。

「IFFに反応なし。コールサインによる呼びかけを行いますか?」

リンカーの機械的な問いに、俺は呆れながら答えた。

「無駄だ。成層圏と中間層の境界、高度50キロだぞ。こんな異常な高度を、何の躊躇もなくこっちに突っ込んでくる戦闘機がどこにいる。任務は隠密、ここは敵の制空圏内。敵性体と見て間違いない」

コックピットの中央ディスプレイには、無情な現実が表示されている。現在の高度では、気圧が低すぎてウェポンベイの開閉ができない。胴体下部の中央ウェポンベイには偵察用の大型カメラユニットが鎮座し、武装は左右のウェポンベイに搭載された標準ミサイルが計4発のみ。

(だが、手札はそれだけじゃない)

思考を巡らせるより早く、俺の意志を読み取ったリンカーが機体を戦闘態勢へと移行させていた。言われなくても、何をすべきか分かっている。相棒としては完璧だ。兵器としては、あまりにも。

「アルゴ・ツー、スリー、戦闘態勢。塵一つ残すな。全て海に還してやれ」

俺の命令に、左右のディスプレイに映る《サイレン》二機のステータスが「索敵」から「戦闘」に切り替わる。それと同時に、ロックオン警報とミサイル接近警報が鼓膜を叩いた。

エンジンが咆哮を上げ、機首が下がる。ミサイルを回避するため急降下しながら、フレアを散布する。だが、本当の狙いは別だ。

(五機か……増援が来る前に終わらせる)

思考で直接、もう一つの兵装を起動する。

《セクターシステム、起動》

両主翼下に搭載された、通常時は水上フロートとして機能するユニット。その正体は、俺とリンカーに直接リンクする小型の無人ドローンだ。《サイレン》と違い、武装は30ミリ電磁加速砲レールガンのみだが、その動きは俺の思考そのものだ。

囮として放った標準ミサイルに敵の意識が向いた瞬間、ネレイドから分離した二機の《セクター》が、予測不能な軌道で敵の懐に潜り込む。

(どんなに優秀なAIだろうと、常に計算上の「最善手」しか取らない。だから、人間が取る一見「無意味」な動きに対応できない。それがお前たちの敗因だ)

言葉にするまでもない。俺の思考をなぞるように、セクターが放ったレールガンの閃光が敵機を貫き、次の瞬間には、モニターに映っていた敵影は宇宙の塵へと変わっていた。そこには、ただ虚空が広がっているだけだった。

《セクター、機体へ再接続。システムオールグリーン。標準ミサイル、残弾2》

高高度での戦闘を切り抜け、俺たちは目的ポイントである「セクター7」の上空、高度50キロの虚無の空間に到達した。

(あれが天文学用の観測装置を軍事転用した、代物のない特別品だって言うんだからな。技術屋が血相を変えるわけだ)

俺の思考を裏付けるように、胴体下部の大型赤外線望遠カメラユニットが起動する。ネレイドの腹部から、折り畳まれていた金色のハニカムが静かに開いていく。幾重にも連なった六角形のミラーが、まるで巨大な昆虫の複眼のように展開し、眼下に広がる分厚い雲海と、その先の光の届かない深淵へとその瞳を向けた。

「セクターで周囲の警戒を厳にしろ。ここからじゃ見えないが、雲の下から奇襲がないとは限らん」

《了解。セクターを警戒態勢に移行させます》

リンカーは、ネレイドから分離した二機のドローンを操作し、機体の周囲を旋回させ、見えない下方への警戒網を張る。

数分後、出た結果は「成果なし」。可視光では何も映らず、ただ分厚い雲を撮影しただけだった。

「隠密は失敗、偵察も空振り。完全に作戦失敗だな」

俺の言葉に、リンカーが不服そうな声色で反論した。

「作戦は成功しています。目的ポイントに到着し、偵察・撮影を完了しました」

「失敗だと言ってるんだ。隠密が破綻し、敵にセクターシステムの存在までバレた可能性がある。戦争は情報が全てだ。時間を惜しんでセクターを使ったのは俺のミスだ。敵は戦闘機五機を失っただけだが、こっちは最新鋭機、セクター、カメラユニットと、三つも情報を渡してしまった」

俺が言い終わるのを待っていたかように、リンカーはディスプレイに先ほどの撮影画像を表示し、赤外線モードに切り替えた。その瞬間、俺は目を疑った。

画像には、ノイズに紛れて、巨大な何かの熱源が、深海の暗闇にぼんやりと浮かび上がっていた。

「まさか……これは、潜水艦だと? だとしたら、さっきの敵はここから……? あり得るのか、そんなことが」

「『ありえない』は、この世に存在しません」

2


作戦報告書を提出してから、一週間が経った。オオトリ大佐からは「追って指示があるまで待機せよ」との命令が出たきり、何の音沙汰もない。

当然と言えば当然か。あんな報告書を突きつけられて、今頃はヴァルハラの上層部も、その先の各国の権力者たちも大慌てだろう。報告の信憑性を疑い、捏造だと騒いでいるかもしれない。いや、あるいは、上層部がさらにその上へ報告せず、情報を握り潰している可能性すらある。

「ずっとその調子ですが、何か問題でも?」

ヘッドマウントディスプレイ越しに、リンカーが尋ねてくる。俺は苦笑いを浮かべた。

「問題しかないさ。まあ、俺たち『兵器』には関係ないことだがな」

この一週間、俺は可能な限り《ネスト》に籠っていた。母艦プロメテウスの艦体中央に位置する、ネレイド専用の格納庫。分厚い多層装甲で覆われたこの区画は、生体認証で入室が管理された最機密エリアであり、艦内で最も静かな場所でもある。その奥で、俺は愛機のコックピットに座り、前回の戦闘記録と、深海に映ったあの不気味な熱源の画像を、飽きず眺め続けていた。

そんなある日、突如、耳に馴染んだアラートが艦内に響き渡った。

「スクランブルか。まあ、俺たちには関係ないだろうな。こういうのは《ハウンドドッグ》隊の仕事だ」

アラートが鳴り響く中、俺は動かずに呟いた。だが、その言葉を嘲笑うかのように、俺の目の前にある4つのメインパネルが一斉に作戦準備モードへと切り替わる。そして、格納庫のスピーカーから、アラート音をかき消すほど大きく、オオトリ大佐の声が轟いた。

「サワタリ中尉、至急ネレイドにて出撃せよ! 作戦内容はリンカーから伝達される!」

「作戦内容は、北大西洋方面軍総司令部ヴァルハラの救援。ハウンドドッグ隊はすでに出撃済みです」

大佐の怒声との落差に眩暈がしそうだったが、リンカーは普段どおり淡々と概要を説明する。ヘッドディスプレイに、巨大なエイのような機影が表示された。超大型滞空母艦ヴァルハラ。俺が隔離されていた時に建造が完了したという、一度も見たことのない空飛ぶ要塞。そのあまりの巨大さに、思わず声が漏れた。

「……エースコンコンバットでしか見たことがないな」

「『エースコンバット』のデータ照合に失敗。ですが、敵性体を多数探知。アルゴ・ツー、スリーは戦闘態勢に移行します」

今回の任務は制空権の確保。前回のカメラユニットは外され、中央のウェポンベイには新型の極超音速ミサイルが8発。左右のベイにも標準ミサイルが計4発搭載されている。重武装だ。

超広域レーダーに、先行する敵編隊、18機を捕捉する。

「やるぞ、リンカー!」

中央ウェポンベイが開き、大型のミサイルは旧時代のアメリカ海軍が開発したAIM54フェニックスを彷彿とさせる長大な弾体に、鋭いカナード翼が追加されたミサイルが8発、静かに機体から切り離される。一瞬の自由落下の後、折り畳まれていた主翼と前方のカナード翼が瞬時に展開。それと同時に、弾体後部のラムジェットエンジンが蒼白い炎を噴き出し、閃光とともにミサイルは極超音速へと加速していく。

まもなく、レーダーから18の光点が、一瞬のうちに消滅した。俺と、二機のサイレンによる、完璧な飽和攻撃だった。

「格闘戦に移行する! セクター、起動! サイレンはハウンドドッグ隊の護衛に回れ! 俺たちは提督閣下の直掩機を援護する!」

その声と共に、二機の《サイレン》は高速で友軍機へと向かい、俺の《ネレイド》はヴァルハラの直掩機が苦戦している空域へと突っ込んだ。ディスプレイ上の敵機は残り10。

前方に、アメリカ軍が開発した無人攻撃機X-47Bの亡霊のような《エンプーサ》が、味方の直掩機に食らいついている。セクターを分離させ、その背後を取ろうとした瞬間、エンプーサは人間には不可能な高G機動で回避運動を開始した。逆にセクターが背後を取られ、ミサイルが発射される――その刹那、もう一機のセクターが、見えない角度からエンプーサの胴体をレールガンで撃ち抜き、爆散させた。

セクターは振り返りもせず、次々と敵を撃ち抜いていく。まさに圧勝だった。

だが、直掩隊の被害はゼロではなかった。3機が撃墜され、パイロットの生存は絶望的だろう。雲海の下は敵の支配領域だ。ここでの撃墜は、死を意味する。

「ヴァルハラより着艦指令。サワタリ中尉、ロストヴァ提督が対面を希望されています」

「ロストヴァ提督が、たかが中尉の俺を……? あまり良い話とは思えないな」

その名前に、俺は全てを悟った。リンカーは最初から作戦内容がヴァルハラの援軍ではないことを知っていたのか

「隠していたわけではありません。作戦完了後、友軍の被害が軽微な場合のみ出頭せよ、と。これは今作戦とは別の、上官としての命令です」

「つまり、ハウンドドッグ隊は援軍で、俺たちは、提督閣下のお話相手に呼ばれたついでに、敵の掃除も手伝わされたってわけか。いいように使ってくれる」

呆れながら、眼前に迫るヴァルハラを見上げる。そのあまりの巨大さに、言葉の最後は弱々しくなっていった。

全幅2キロを超える、完全なデルタ翼。まさに空飛ぶ大陸だ。

その時、メインパネルに警告が表示された。

<自動着艦システム作動。操縦桿から手を離してください>

サイレンと共に、俺の機体はヴァルハラの上部後方へと誘導される。そこには滑走路のような着艦レーンがあり、その先には格納庫へと続くエレベーターが見えた。

「念のために聞くが、まさかこの上から発艦するわけじゃないよな?」

「ご心配なく。ヴァルハラの発艦は下部カタパルトから、エンジンを停止したまま射出されます。艦載機は標準装備の『滑空翼』で安全な距離まで離脱後、エンジンに点火します。ステルス性維持のため、例外は許されません。……そして、最後になりましたが」

リンカーは、丁寧な声で続けた。

「この機体、《ネレイド》に滑空翼は搭載されていません」

重い金属音と共に、カタパルトのフックが機体に固定される衝撃が伝わる。俺は、今聞こえたありえない言葉を反芻した。

「……滑空翼がない? 知性体ジョークか? 標準装備がない最新鋭機なんて、お笑いぐさだ」

「冗談ではありません。ネレイドはプロメテウスでの単独運用を前提とした専用機です。整備すら満足にできないヴァルハラのために、重量を増す無駄な装備は搭載しない。合理的でしょう?」

「合理的かもしれんが……解決策はあるんだろうな。任せるぞ」

「お任せください。射出後はエンジン点火まで急降下しますが、理論上、海面に激突する前にエンジンは再起動します。……過去、この高度からのエンジン点火試験は一度も行われていませんが」

「……降ろしてくれ」

心の底から、本音が出た。

「残念ですが、もう着艦しています。諦めてください」

その無慈悲な声に、こいつには心がないのだと、あるはずもないのに、俺は思った。

3


ブロック7と書かれた格納庫に、ネレイドは静かに駐機していた。その傍らで、一人の少尉らしき女性が待っていた。

「お待ちしておりました、サワタリ中尉。早速ですが、ロストヴァ提督がお待ちです。こちらへ」

彼女に案内され格納庫を後にするが、さっきからすれ違う士官たちの視線が、やけに険悪なことに気づく。ここは方面軍総司令部だ。404実験飛行隊のことは知らなくても、《プロメテウス》という特殊任務部隊の存在は知っているはず。なのに、この敵意にも似た視線はなんだ?

「お気になさらないでください」

俺の疑問を察したのか、キリヤマとネームタグにある少尉が小声で言った。

「一週間前から、ヴァルハラの広域レーダーに不明機の反応がありまして。常に一定の距離を保ち、こちらを監視しているようなのですが、早期警戒機でも特定できず、皆、神経質になっているんです」

「キリヤマ少尉、あとは私が引き継ぐ。持ち場に戻りたまえ」

言葉を遮るように、オオトリ大佐と年の近そうな男が現れた。キリヤマ少尉は敬礼をして、足早にその場を去る。

「ヴァルハラの艦長、カワシマだ。オオトリ大佐とは古い仲でね。少しばかり無理を言って、君たちを呼ばせてもらった」

カワシマ艦長は人の良さそうな笑みを浮かべている。

「レーダーの件は厄介でね。ヴァルハラのレーダーは、普段なら鳥やノイズとして無視する微弱な反応でも、同じ座標に留まり続けると警告を出すシステムになっている。今回の不明機は、そのシステムに引っかかったんだ。おかげで、予定されていた輸送任務も敵の襲撃で見送られてしまってね。困ったものだよ」

「不明機がいる上に、総司令部であるヴァルハラにしては、直掩機が少ないように感じますが」

俺の問いに、カワシマ艦長は呆れたように肩をすくめた。

「君はヴァルハラのことを何も知らないようだね。我々は本来、常に敵の索敵範囲外、成層圏を飛んでいる。だが、今回は輸送機の都合で、一時的に高度を下げていた。その隙を突かれたんだ。そうでなければ、攻撃を受けることなどありえない。戦闘は、前線基地にいる君たちの仕事だからな。……ここが提督の執務室になる」

カワシマ艦長がドアをノックし、中から「入りなさい」と声がする。重い扉が開いた。

「サワタリ中尉、長旅ご苦労だった。コーヒーでもどうだ。そこのソファにかけなさい」

ロストヴァ提督は、親しい部下を出迎えるような口調で言った。その温度のない優しさに苛立ちを隠しながら、俺は無言で頭を下げ、言われた通りソファに腰を下ろす。

「ここ最近の君の戦果には感心させられる。優秀な部下を持って、私も鼻が高いよ」

感情の読めない無表情で、提督は続けるが俺は、その言葉を遮った。

「ありがとうございます。ですが、そろそろご用件を伺えませんか。世間話のために、わざわざ俺を呼びつけたわけではないでしょう」

提督は小さくため息をつき、本題を切り出した。

「先日の、航空潜水艦が存在するという報告書。あれについて、直接君から話を聞きたかった。ただ、それだけだ」

その言葉で、俺は自分の立場を再認識する。そうだ、この人も「上層部」の一人だった。

「報告書の通りです。付け加えることは何もありません」

俺がそう答えると、提督は意外なほどあっさりと頷いた。

「わかった。……それと、君を隔離施設送りにしたのは、軍の規則上、仕方のないことだった。それだけは忘れないでくれ。何か要望があれば言いたまえ。退出を許可する」

「そうですか。では、早速一つ」

4


母艦に帰投するなり、俺はブリーフィングルームへと呼び出された。

「総司令部より、新たな任務が下った。目標は、先日報告のあった航空潜水艦の捜索、及びその破壊である」

大型ディスプレイに、あの不気味な熱源の画像が映し出される。オオトリ大佐が普段の倍以上の時間をかけて作戦概要を説明しているが、俺の意識はここにはなかった。早くこの部屋から出たい。その一心だった。

俺の斜め前に座る、第73独立飛行隊ハウンドドッグの隊長、ゲンジ・タケダ少佐。彼が首にかけているネックレスが、ふと目に入り、俺は咄嗟に目を逸らした。

ブリーフィングの後、俺はオオトリ大佐に上の空だったことを咎められ、そのままカドヤマ技術研究長に呼び出された。メインブリッジの最上階、普段は誰も立ち寄らない、配線とモニターだらけの異質な空間。それが、彼の研究室だ。

「おい、配線踏むなよ。お前はすぐ物を壊すんだからな」

「誰が破壊魔だ。そもそも、足の踏み場もないところに呼び出す方が悪い」

カドヤマ技術研究長は、ネレイドの開発にも携わった数少ない人物だ。テスト中にセクターを壊したことを、今でもこうして根に持っている。

「お前な、俺があれほど傷一つ付けるなと忠告したカメラユニットを、あっさり破損させおって! 報告書には『格闘戦にて破損、使用に問題なし』などと簡単に書きやがって! 俺がその後、総司令部にどれだけ頭を下げたと思ってるんだ! しかも、あの輸送任務も敵の襲撃で失敗し、その謝罪も俺が……」

輸送任務? その言葉に、俺の中の何かが繋がった。

「今、輸送任務って言いたか? 何を運ぶ予定だったんだ?」

「何をって、お前決まってるだろうが! あのカメラユニットだよ! あれは元々、ヴァルハラ送りになるはずだったんだ! それを試験も兼ねて俺たちが預かり、輸送機でヴァルハラに届ける手はずだった。ネレイドに積んだのは、オオトリ大佐の独断だ!」

俺は、カドヤマの話を最後まで聞かず、ネストへと駆け下りた。リンカーと、答え合わせをするために。

「……その話が正しければ、私たちは最初から間違えていたのでしょう」

リンカーは、俺の思考を読み取り、静かに語り始めた。

「大前提は、不明機の監視対象はヴァルハラではなく、あのカメラユニットだった、ということです。我々の隠密偵察任務が敵に察知されたのも、不明機が我々を監視していたから。そして、ヴァルハラを襲撃したのは、カメラユニットが輸送されるのを阻止するため。輸送が中止されたのを確認し、彼らは撤退した。全て筋が通ります」

「なぜ、俺たちを落とさなかった?」

「ネレイドを撃墜すれば、プロメテウスは本土に帰還するでしょう。そうなれば、カメラユニットはより警備の厳重な専用輸送機で、確実にヴァルハラへと届けられてしまう。不明機にとって、カメラユニットが、ネレイドという『番犬』がいるプロメテウスにある方が、都合が良かったのです」

「つまり、俺たちは、ずっと監視されていた、と」

「はい。監視、そして警告です。ヴァルハラでは姿を見せたのに、我々の前には現れなかった。それは、これ以上近づくなという警告でしょう。ですが」

リンカーは、そこで一度言葉を切った。

「次は、姿を現すかもしれませんね」

その言葉に、俺は確信した。

「ああ。そして、その時が来れば、俺も確信するだろうな。お前たちの『正体』を」


読んでいただきありがとうございます


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