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第46話 錬金術師の贈り物

 

 いつもより少し早い朝だった。

 昨日の訓練の余韻を引きずりながら、リオはまだ薄暗い街路を歩いていた。隣には、元気いっぱいのアストルがぴょんぴょんと飛び跳ねてついてくる。


「ねぇリオ、本当にエルヴィンさんが呼んでるの?」

「うん、伝令でそう言われたんだ。……なんだろうね」


 王城へと続く大通りを抜け、魔法兵団の塔に入る前、錬金術師たちの研究棟が並ぶ区画に差しかかる。木製の大扉が立ちはだかり、そこからは鼻をつまみたくなるような強烈な匂いが漏れ出ていた。

 焦げた薬草と金属の錆、それに甘ったるい油のような匂いが混ざり合い、胃の奥をくすぐる。


「うわ、なんか変なにおいするね」

「……間違いなくここだな」


 恐る恐る扉を開けると、そこにいたのは以前よりもさらに髪がぼさぼさで、目の下に深い隈を刻んだエルヴィンだった。


「おお~来たかぁ。伝令はちゃんと届いてたみたいだな」

 あくびをかみ殺しながら、気の抜けた声で手招く。


「こいつを見てくれ」


 机の上に置かれていたのは一本の剣だった。


「これは……」

「牙の王との戦いで折れたお前の剣だよ。あのとき、折れた後でも妙に光ってただろ? 見ててピンと来たんだ。おそらく光精霊魔法の魔力が剣と融合したんだってな」


「そんなことが……折れた剣、どうなったのかと思ってた」

「すっごいねぇ!」とアストルは目を輝かせた。


「んでな、その折れた剣を鍛え直したのがこれってわけだ。……いやぁ、なかなかうまくいかなくて苦労したぜ」

 エルヴィンはにやりと笑うと、剣をリオに差し出す。


「もっていけ。名前は“ピカピカ丸”にしようとしたら鍛冶屋にかんかんに怒られてな。結局“ライトブリンガー”って立派な名前になった」


「エルヴィンさん……! 本当にありがとう! ローデン侯からいただいた剣だったから、折れたときはどうしようかと思ってたんだ」

「ふん、感謝するなら今度酒でも奢れ。それと……忙しくてな。“魔物おかえりください装置”――改め“魔封じの結界装置”の量産で、寝る暇もねぇんだ」


「だからそんなにクタクタな顔してるんだね」

「おう、まぁな」


 リオは慎重に剣を受け取った。柄を握った瞬間、青白い光がぱっと刃を包み、まるでリオに応えるように脈打つ。

 光は心臓の鼓動と同じリズムで明滅し、手のひらに温かな震えが伝わってくる。


「わぁっ! 見て見てリオ、光ってる!」

「これが……僕の新しい剣……!」

 胸の奥がじんわりと熱くなる。


「へっ、派手だろ? 気に入ったら大事に使えよ」

「うん……ありがとう、エルヴィンさん!」

「またねー!」とアストルも元気に手を振る。


 研究室をあとにしたリオの足取りは軽かった。

 腰に差した新しい剣が小さく唸るように輝き、早く試してほしいと語りかけているかのようだ。

 リオは思わず笑みを浮かべる。


「さあ、行こう。早く訓練場で確かめてみたい」


 朝の空気を切り裂きながら、リオとアストルは歩みを速めた。

お読みいただきありがとうございます!

更新が一週間ぶりになってしまいました。お待たせしました~。


今回は折れた剣が“ピカピカ丸”になるかと思いきや……さすがに鍛冶屋さんの逆鱗に触れて「ライトブリンガー」になりました(笑)

名前のセンスはさておき、ちゃんと光ってカッコよくなったのでご安心を。


次回はいよいよ団長たちとの再戦!

新しい剣がどんな活躍をするのか、ぜひ見届けてください。

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