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第30話 集団戦、霧の中の一閃

2025/08/01 セリフ・魔法・描写テンポを整理して、読みやすさと緊張感を追加しました。

うだるような昼下がり。

再び訓練場に号令が響き渡る。


「午後からは、魔法兵も魔法の使用を許可する。支援兵も全力でかかれ!」


副団長カイルの一喝とともに、再び理不尽な集団戦の幕が上がった。


「始めっ!」


カイルの号令に続き、ファルトが叫ぶ。


「いくぞ、お前ら!」


「前に出るぞ!」「位置につけ!」


「援護は任せて!」セフィーナが声を張る。


「魔法、すぐに撃てるようにしておくわ」ミラが呟く。


リオも剣と盾を構え、「わかった!」と応じた。


掛け声が響き、仲間たちは一斉に動き出す。

瞬く間に布陣し、戦闘態勢が整えられた。


第一波——《アローレイン》。

空を覆うような矢の雨が降り注ぐ。


「矢が来るぞ、集まれ!」

ファルトが叫び、《シールドプロテクト》を展開。

光の魔法が盾を包み、矢を弾き返す。


だが、その刹那。

左右から火球が飛来する——《ファイアボール》。


「──来るっ!」

ミラが《ストーンウォール》を唱え、土の壁が炎を受け止める。

同時に、剣兵と槍兵が壁の隙間から突撃してきた。


《プロテクト!》

セフィーナが支援魔法を放ち、リオとファルトの身体が光に包まれる。


《シールドチャージ!》

リオが突撃。盾を構えて踏み込み、一人を弾き飛ばす。

しかし——


「ぐっ……!?」


背後からの一撃に、リオの身体が宙を舞った。


すかさずセフィーナが前に出る。

槍を翻し、剣兵を押し返す。

その背後では、負傷兵が支援魔法で回復を受けていた。


リオが後衛まで吹き飛ばされて立ち上がると、

ミラの声が届く。


「リオ、《ウォーターボール》よ!」


集中し、魔力を練る。

放たれた水弾は今までで最も鮮やかな軌道を描いた——

だが、《マジックシールド》に遮られる。


「くっ……!」


リオは悔しげに地面を叩く。あと一歩、届いていたはずだった。

それでも、彼の瞳は諦めではなく、次の一手を探す光を宿していた。


ミラは即座に《ファイアボール》を水たまりへ着弾させた。


ボウッ、と蒸気が上がり、白い霧が戦場を包む。


「焦らないで。あれはあれでいいのよ」

ミラはリオの方を見ず、静かに言う。


「……視界を奪うために?」


「ええ。戦いは力だけじゃない。状況をつくるのも、魔法の役目よ」


そのやり取りを目の当たりにし、リオは呟いた。


「……こんな戦い方があるなんて」


「今だッ!」


ファルトが叫び、側面から霧の中へ突撃。

敵陣を切り裂くように駆け抜け、槍兵たちを蹴散らしていく。


「おらあっ!」


だが次の瞬間——


「うおっ!? かてぇ!」


戦線に復帰した剣兵の反撃を受け、ファルトの身体が宙を舞う。

壁に叩きつけられ、地面を転がる。


「くっそ……やられた!」


弓兵と魔法兵の弾幕が迫る中、仲間たちは無言のうちに《ストーンウォール》の陰へ身を滑り込ませる。

矢と魔弾が壁にぶつかり、土が砕け、埃が舞う。


呻き声と、かすかなうめきも聞こえた。


「《ヒール》!」


セフィーナが回復魔法を施す。

「助かる!」リオが応じ、ファルトも「あんがとよ」と息を整えた。


そのとき——


ピィィィッ!!


エルバ教官の笛が鋭く空気を裂いた。


「訓練、終了!」


静寂が訪れる。


訓練後、副団長と教官が総評を述べた。


「全体として悪くない動きだった。連携はまだ粗いが、実戦でも通用する力は見えた」


訓練生たちは静かに頷く。


「午後の残りは自由訓練とする。各部隊で連携の確認をしておけ」


第5部隊は、連携パターンの確認と反復練習に取り組んだ。

魔法支援から物理突撃、防御から反撃まで、動きは次第に滑らかになっていく。


その最中、リオの中にふと、ほのかな光が灯る。


「……今、レベルが上がった?」


セフィーナが気づき、リオも小さく頷いた。


「実感はないけど、何かが変わった気がする」


「ふふ、ちゃんと成長してるわよ」


ミラが微笑み、ファルトが拳を打ち鳴らす。


「やったな、リオ!」


そして──


残りの二日間も、訓練は続いた。

仲間との息はさらに合い、攻防の精度も増していく。


二十名の兵士たちは、それぞれの力を磨き、出発のときを迎えた。


王都・東門前。

鎧のきしむ音が微かに響く中、訓練生たちが整列していた。


第1部隊:剣兵4名

第2部隊:槍兵4名

第3部隊:弓兵4名

第4部隊:魔法兵2+クレリック2

第5部隊:リオたち4名


指揮官・カイル、副官・エルバが随行する。


門の外には街の人々が集まり、彼らを見送っていた。


リオは、出発前に母サビアと向き合っていた。


「……ちゃんと、帰ってくるのよ」


「うん、約束する」


サビアは微笑み、そっとリオの肩に手を置いた。


「特務中隊、整列!」


カイルの声が響く。全員が顔を上げる。


「訓練は終わった。これからが本当の戦いだ。

二十名の兵士と二名の指揮官──全員、覚悟して進め!」


門が開く。角笛が鳴る。

馬車と若き戦士たちの列が、ゆっくりと王都を後にする。


──僕たちはまだ知らなかった。

この旅が、やがて世界の運命を変えるものになるとは。

誰も、まだ知らなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


今回は訓練最終日の集団戦と、出発の朝までを描きました。

仲間との連携の中で、リオが少しずつ「力」ではない戦い方を学んでいく姿を楽しんでいただけたら嬉しいです。


次回から、いよいよ彼らの初任務が始まります。どうぞお楽しみに!

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