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第2話 光の導き

2025/06/28 挿絵を追加しました。

2025/07/07 一部改稿しました。

2025/07/24 タイトルと加護の啓示から王都の召命までを幻想と現実の対比で再構成しました。

その夜、リオは不思議な夢を見た。


 


──靄に包まれた、広い水面の上。

空も地もない空間に、ただ自分だけが立っている。

風も音もなく、静寂だけが満ちていた。


水は穏やかに揺れ、どこからともなく淡い光が差し込んでいた。


 


そのとき、胸元にほのかな光が灯る。

指先ほどの小さな輝き。それは心の奥に染み渡るようなぬくもりを持っていた。


 


『リオ……リオ……』


 


優しく、どこか寂しげな声。

けれど、力強く──生きているものの息吹を宿した声だった。


 


『私は……世界を見守るもの……アクウェリナ……』


 


その名乗りが、水面の奥から静かに響く。

だが声はかすれていて、まるで遠いどこかに囚われているように感じられた。


 


断片的な言葉が、夢の中のリオのもとへと届いてくる。


 


『……私の残された時間の中で……あなたを見つけることができたのは、何よりの幸いです』

『リオ……あなたに、加護を授けましょう』

『その力で……どうか、この世界を救ってください──』


 


次の瞬間、胸の光がふくらみ、水面が波紋を描いて広がった。


 


──世界が変わる。


夢の中のリオは、確かにそう感じ取っていた。


 



 


リオは目を覚ました。


胸元に残る淡い痕跡──小さな光が、まだわずかにきらめいている。

それは、心を包むような静かな温もりだった。


挿絵(By みてみん)


夢の余韻を抱えたまま、リオは村の教会へと足を向けた。


朝の光が差し込む静かな礼拝堂の奥。

大精霊アクウェリナの像の前に立ち尽くす。


 


「大精霊様……? あの声は……夢じゃ、なかったの……?」


 


見上げた像の目元に差し込んだ光が、どこか優しく微笑んでいるように見えた。


 



 


その夜。


王都・神殿の奥で、いつものように祈りを捧げていた大神官セレオスのもとに、

約三十年ぶりとなる大精霊からの“啓示”が届いた。


──加護を授けられし少年、リオの存在。

どうかその者を見出し、守ってほしい──それが、アクウェリナの切なる願いだった。


 


セレオスは、精霊教会の枢機卿にして王国に忠義を尽くす大神官である。

小柄な体に丸眼鏡をかけた老紳士で、質素倹約を旨とし、戒律を厳しく守る清廉な人物として広く信頼されていた。

その人柄と長年の実績から、王にも重く用いられている。


 


──だが、このときばかりは。


老いた手がわずかに震えた。


 


「……加護を授かる者……それもこの時代に……まさか、“原典の伝承”が……」


 


すぐさま彼は、夜の静寂を破って王宮へと馬車を走らせた。


深夜にもかかわらず、セレオスの顔を見た門番たちはただならぬ事態を察し、即座に王への面会を取り計らった。


 


謁見の間には、王のみならず、宰相と騎士団長も控えていた。

いずれも急報を受け、眠気を払って集まった者たちである。


 


「王よ。急な夜分の謁見の機会、深く感謝申し上げます」


 


セレオスは一礼すると、静かに語り出した。


 


「この南の地、ルナリス村に──“光の導き手”が誕生しました。

大精霊アクウェリナ様の御声が、それを私に告げてくださったのです」


 


「そしてその光は、かつて“原典”に記されし、誰にも授けられなかった真なる加護──

“導きの光”である可能性が極めて高いと見ております」


 


王は、普段の重装からは程遠い、簡素な部屋着のまま静かに耳を傾けていた。

白髪混じりの髭をたくわえた壮年の男。名は、フェルメリア=ディアルシア一世。


王は長年、民と国を守り続けてきた賢王として知られていた。

いまも引き締まった身体が、その歴戦の覚悟を物語っている。


 


セレオスの言葉に、王と宰相、騎士団長がそれぞれ眼差しを交わす。

誰の顔にも、驚きと緊張がにじんでいた。


 


やがて、王はゆっくりと頷いた。


 


「……その者を、王城に召し上げよ。親も共に」


「“原典の光”が、再び姿を現したというのか──」


 


言葉を継ぐ王の声には、かすかな希望と、同時に憂いがにじんでいた。


 


「長き戦の中で、我らが見失っていた光……

それが今、再び灯ろうとしているのなら」


 


「──アクウェリナが動いた。ならば、“闇”もまた動き出す」


誰に語るでもなく、王はそう呟いた。


挿絵(By みてみん)



 


その頃、ルナリスの空には──

穏やかな風が、わずかに揺れていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


本作は、古き良き王道ファンタジーに少しだけ現代的な解釈を加え、「もし勇者と呼ばれぬ者が世界を救うとしたら?」というテーマで綴っていく物語です。


一部の構成・描写にはAI(ChatGPT)を活用し、物語の整理や文体の整合性などを調整しています。執筆者自身の意図と手直しを重ねたうえで、物語として皆さまに楽しんでいただけるよう仕上げております。


今後もゆるやかに更新を続けていきますので、よろしければお気に入り登録や感想をお寄せいただけると嬉しいです!


次回、第3章もどうぞお楽しみに。

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