第1話 父を待ち、剣を握る少年
2025/06/28 挿絵を追加しました。
2025/07/07 改稿して修正しました。
2025/07/24 リオの小さな日常の中にある“静かな決意”が、より自然に伝わるよう意識して調整しました。
──世界が終わる音を、誰も聞かなかった。
暗く、深く、どこまでも冷たい闇が、静かに世界を満たしていく。
それは、かつて“光”と呼ばれた存在が敗れ去った、その瞬間から始まっていた。
そして、十五年の歳月が流れた。
*
東の空に、鈍く濁った朝焼けが広がっていた。
けれど、その光には温もりがない。
まるで太陽さえも、瘴気に蝕まれ始めているかのように──。
リオは、村の外れにある崖の上に立っていた。
肩まで伸びた柔らかなこげ茶の髪。
澄んだ湖を思わせる、水色の瞳。
健康的に日焼けした肌と、少年らしい細身の体つき。
だがその姿には、どこか大人びた芯の強さが滲んでいた。
手には、父がかつて使っていた剣の柄。
刀身はすでに錆び、朽ち果てていたが──それでもリオは毎朝、ここで素振りを続けていた。
「……僕も、いつか父さんのように、前線に行くことになるかもしれない」
そう思うたび、胸の奥が少しだけざわついた。
それは明確な目標に向けた訓練ではなかった。
何かを目指すでもなく、ただ──
祈るように、日常に組み込まれた習慣だった。
「……今日も、北の空が黒い」
遥か遠く、地平線の彼方に連なる北の山脈は、朝靄に包まれて見えなかった。
けれど、風が教えてくれる。
吹き下ろしてくる空気のざらつきが、冷たさが──瘴気の接近を。
十五年前。リオが生まれた年。
父・ラスは、王国騎士団の一員として北の戦線に派遣された。
ラスは背が高く、村一番の力持ちだった。
無口で不器用な男だったが、その瞳は温かく、穏やかな光を宿していた。
リオと同じ、栗毛色の髪を持っていた。
当初は、定期的に手紙が届いていた。
けれど戦線が激化するにつれ、間隔は空き、やがて──途絶えた。
今でもリオは、その手紙を大切に持っている。
『この子が生まれたら、名前はリオとつけたい。
リオ──“川”を意味する名だ。どんな障害にも抗わず、流れを止めず、やがて自らの道を見つける。そんな存在に育ってほしい。』
『もう大きくなっただろうか。もう歩けるようになったか?
初めて声を出したのはいつだった?
そのすべてを見届けたかった。……けれど、今はこの手紙でしか思いを伝えられない。どうか、この子を頼む。』
それが、リオと父をつなぐ、唯一の絆だった。
今、人々は北から押し寄せる瘴気に怯えながら暮らしている。
かつて争っていた国々は、魔族の侵攻に対抗するため世界同盟を結成し、北の大地への侵攻を食い止めていた。
それでも、前線がじわじわと押し戻されているという噂は絶えない。
母・サビアは、そんな中でもこう言う。
「……信じるしかないのよ」
サビアは黒髪のロングヘアを持つ華奢な女性だった。
笑顔を絶やさず、優しさと強さを併せ持つ──リオにとって、唯一の心の支え。
その声はいつも、夜の灯火のように、少年の心を照らしてくれた。
「リオー! ごはんできたわよー!」
崖の下から、母の声が響いた。
リオは剣の柄をそっと抱くように持ち直すと、額の汗を拭い、微笑を浮かべた。
「……よし、今日はここまで」
そう呟いて、崖を駆け下りる。
その背中に、ほんのわずかな影が差していた。
──少年自身もまだ知らない。
その身に宿る“光”が、いずれ目覚め、世界を照らすことになることを。
その夜。
リオは、不思議な夢を見た。
それが、世界の運命を変える“最初のさざ波”になるとも知らずに──。
【あとがき】
この作品は、AIアシスタント(ChatGPT)を活用して文章の構成や表現の調整を行いながら執筆しています。物語の構想・世界観・キャラクター設定は作者自身によるものであり、AIはあくまで創作支援ツールとして使用しています。
キャラクターの特徴について追記しました。
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