4,「全世界」
ランダムのイベントは、今までに何回も遭遇した。だが、今回のような大規模なモノは今までにない。
ネットで色々と調べるも、やはり同じようなイベントは確認できなかった。もしかすると、誰も選ばない解体屋限定のイベントなのかもしれない。
だとしても、全世界から敵視されるなんて、余りにも理不尽ではないか?
他のゲームだったら、やめてしまうか、もう一度やり直していたかもしれない。しかし、このゲームで同じ機体は現れない。
つまり、最初のこの機体は二度と手に入る事はない。ここまで乗り込められた理由は、全てではないものの、この機体が大半を占めている。
そうなると、俺の選択肢は一つ。
――このイベントをクリアするしかない。
◆
状況は今までにない程、劣勢だった。全世界が敵になる。そのような事態になるとは、一体誰が想像できただろうか?
いや、文句を言ったところで状況は好転する訳ではない。今できる事は戦闘に備える事と、他の皆を鼓舞する事しかない。
私に与えられたパーツは、私が最初に選んだパーツの上位互換。左右の前腕には、備え付けのバルカン砲が装備され、脚部はどのような地形でも対応できる万能脚部。
頭部のヘルメットは、敵の攻撃を瞬時に捕捉し反撃行動をとれる優れモノ。そして、全身は光沢の黒でコーティングされていた。
私は他の皆とは異なり単独行動を任せられている為、大量の補修キットを渡される。
さぁ、これで準備は万端。後は、
――このイベントをクリアするだけだ。
◆
イベントの開始時刻になり、俺はすぐさま最初の機体を「任せる」とした。
任せるとはいえ、行動には予め禁止事項が設けてあった。勿論、その禁止事項は「切札」である。
テキスト通りであれば、これ以上に適した場面はない。しかし、経験上このゲームはそれ以上の事が発生するケースが多い。
もしかすると、あの機体が二度と使用できない可能性も否めない。そう考えると、可能な限り切札を使用したくない。
◆
マスターは、何を躊躇しているのだろうか?私の切札を使用すれば、この局面でも簡単に切り抜けられる筈だ。
それなのに、あの方はそれを選択せず何万もの数のノーツを相手に無謀な戦いを挑む。だとしても、私は抗わない。
――それだけの理由が、私にはある。
◆
序盤こそ善戦するも、数の暴力には勝てなかった。1機、又1機と、次々と戦力が削られていく。
どうすればいい?
焦る気持ちが募っていき、次第に指示する速度が遅延する。その為、更に状況は悪化の一途を辿っていく。
そんな劣勢が続く戦況下、1機だけおかしな速度で敵を撃破していく機体がいた。
左右に素早く動き、相手に狙いを定めさせず、大勢の敵の中へ単独で突っ込んでいく。そうかと思えば、凄まじい速度で回転しながらバルカン砲を放ち続け、周囲を殲滅する。
相手側はすぐさま反撃を試みるも一歩手前でその場から大きく飛躍し、その場を離脱。すると、空中であればと、遠方から狙撃を試みる機体がいた。
しかし、それをも予測していたかのように空中にも関わらず、真横へ移動して避け、着地したと同時に狙撃した機体を蜂の巣にした。
希望であると同時に、恐怖を覚えつつも奮闘を続ける。そんな時、携帯のバイブ音が聞こえた。俺は、携帯を取る暇もなく横目で流そうとする。
だが、その視界に入った内容に、思わず二度見して、操作していた手が止まり、
――1ヶ月記念の黒ボス、強過ぎワロタw
その文字の下には、見覚えのある黒い機体の画像が、添付されていた。
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