3,「化物=経験値×5+(MRA)」
ノーツには「適正」「スキル」「切札」の計3つの特徴がある。
適正は、戦闘において近接型、射撃型、支援型。他にも、経営に特化した機体も存在する。どれも統一して言える事は、そのパーツ。若しくは、役割を与えると、幾分かの補正が追加される。
スキルは、適性を更に向上させるモノで、初期、10レべ、20レべと、レベルが10上がるごとに追加される。今まで育成した中には、2つの内 1つ選ぶ選択形式もあれば、既に決定しているものもあった。
条件付きのスキルも多いが、その分効力が高い為、装備する際は、適性よりもスキルに合わせるケースが多い。
そして、切札については、1つの戦闘で1度しか使えない大技で、最悪の場合、使用後にそのまま戦闘不能になるケースもある。
このゲーム。パーツの耐久値も戦闘ごとに回復しない。つまり、「戦闘不能になる」=「修理費大」となる。基本、切札を使わないのが、常識となっていた。
さて、何故このような前置きを述べたかと言うと、俺が化物と言った最初の機体と照らし合わせてみる必要があったからだ。
まずは「適正」だが、ここについては未だよく分からない。分からないというのは、
――適性がない。
という事だ。150時間プレイして、様々なパーツを揃えた。その度に、装備を試したが、何1つ適正に合致するパーツはなかったのだ。
それだけ聞くと、どこが化物なのか?という言葉が聞こえてきそうだし、俺も同じ立場なら同感だ。しかし、問題はここから。
スキルは初期から存在するが、殆どのケースが「近接タイプ+5」と言った微々たる効力でしかない。だが、コイツは違う。
――経験値×5。
一度、RPGをかじった事がある者であれば、これが如何におかしな事か分かるだろう。アイテムや装備品で、経験値2倍、3倍ならいざ知らず、初期のスキルがこれだ。
頭がおかしい。
その為、最初のステージの段階で、10レべなんて一瞬だった。すると、次のレベルのスキルは、
――Memoryreproduction。
一見、何のことか分からないだろうが、このスキル。一度クリアした後、オート操作で敵を倒してくれる。しかし、その場合、概ねプレイヤー側の意図とは違う動きになるのが大半だ。
しかし、記憶再現は違う。一度クリアしたケース。それも一番最短で、一番効率が良かったプレイヤーの動きをそのまま再現する。
因みに、どこかの自動戦闘のように、こちらでプログラミングを形成する訳ではなく、勝手に自ら学習する。
そうなってくると、20レべのスキルはどうなるのか?すると、そこから条件付きのモノとなる。
――Revolutionary action。
戦闘項目の中に、「任せる」という項目があり、初めての戦闘でも、オート操作になる。それを選んだ時に、このスキルは発動する。その効果は、
――射撃の場合、全ての攻撃が全体攻撃に。
――格闘の場合、敵数だけ、戦闘回数増加。
――支援の場合、命中率、回避率、回復量×3。
偶然にも、賢さに振ったパラメーターは、全て攻撃と速さに振当てられていた。結果、必ず初手の行動となる上、レベル差でほぼ一撃という。ゲームとしてはヌルゲー。
極めつけは、切札。
――Another me。
説明文のテキストを抜粋すると、
「全ての経験値を生贄に、発動した戦闘でのパラメーターを全てカンストさせ、強制的に勝利させる」
どこの特殊勝利だよ!
そうツッコミを入れたくなる文言だ。内容も怖すぎて、1度も手を出した事がない。そもそも、これを使用する局面に出くわす事がなかった。
以上を踏まえて、この機体が化物だと分かってもらえただろう。最初、動画サイトに投稿しようかとも思ったが、あまりにもチート能力の為、チーターと呼ばれるかと思い、友人にすらこの事は、話していない。
それでも、どうなるかは興味があるのも事実。
――今度、どこかで試しに使ってみようかな。
◆
マスターに募る思いはともかく、始めのうちは苦労したものの、解体屋は徐々に軌道に乗っていく。私の仲間も増えていき、恐らくこの世界で一番のノーツを保有した人物になったと思われる。
その反面、こちらを敵だとみなす連中も増えてしまった。その末路が「裏組織の総帥」という不名誉な称号である。
そう言われても仕方がない。各地域に、ノーツを派遣させ、有益な情報を1つの組織が保有する。そのような戦力は、類を見ない。既に、マスターは世界を手中にしたと思われた。
――あの日までは――。
あの日、マスターへ突如送られた一通の依頼メール。
最初は欠伸をしながら黙読するマスターだったが、次第にその表情はこわばり、各地に調査に出ていた全てのノーツと呼び寄せた。
戻されたノーツは、戦闘、射撃、支援の3体で1グループを形成。その後は、主要な都市から、携帯の修理キットを全て買い占めるように指示。
一体、なぜそのような事をするのか尋ねても、マスターは返事をしてくれない。仕方がないので、私は受信されたメールを読む事にした。するとそこには、
――「全世界が、マスターを抹殺する」と、記載されていた。
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