~動~
やはり、俺も緊張していたようだ。昨日からあまり寝ていない・・。
ふと気がつくともう朝になっていた。その日の朝焼けはとてもきれいでとても心が和んだ。
さて・・・・早く駅に行かなければ・・・・
サッカー部は隣町の中学で試合の為、最寄の駅からその中学まで歩いていかなければならなかった。なので、部員は駅に集合してから、全員そろったら電車に乗るといった流れになる
駅にはまだ部員の姿は見えなかった。一人でもすることが無いので切符を買いに切符売り場に向かった
その時、見覚えのある女の人が立っていた。
「あれ・・・?龍・・?何でこんな時間に?」
「え・・・?美佐・・・?美佐もなんでこんな時間に?」
「集合時間より早く来てしまったみたいなの・・・」
「そうか・・・・俺も集合時間より早く来ちまったみたいだな・・・」
「ちょっと座って話さない?龍も時間あるでしょ?」
「ああ・・・問題ないよ」
そういって俺は美佐と駅から少しはなれた休憩所みたいなところに腰を下ろした。
よく見ると美佐は少し髪型を変えたようだ。試合のときに邪魔にでもなるのだろう。
そうこう考えていたら少し眠くなってきてしまったのか体がふらついてきた
「龍・・・昨日あまり寝てないでしょ?」
「いや、とてもよい夢も見れたし、快眠だったぜ?」
「嘘・・・・下手だね・・・・目の下にクマが出来てるくせに・・・後寝癖が少ない」
「・・・・・ばれちまったか・・・・」
「全く、前日にアドバイスした人がこんな状態じゃあ説得力に欠けるよ?・・・・まあ龍も人間だったって事で一件落着かな?」
「・・・・おい・・・まるで俺が人間じゃないような発言だな?」
「あれ?そうじゃなかったっけ?」
美佐がそういった後とても微妙な空気が流れるのを感じだ。
美佐も俺もそう空気に耐えられなくなったのか、二人揃って笑い出していた。何がおかしいのかもわからない、といった感じな笑いになっていた。
その時、自分の体に違和感があるのを感じた・・。たとえを挙げてみると二十四時間勉強をぶっ続けでやった後みたいな、異様な眠気と感覚麻痺が襲ってきた。
もし、このときに美佐が隣にいなかったらどうなっていただろう・・・?
今頃、コンクリートに頭を打って病院送りだろう。
「龍!大丈夫!?どうしたの?」
「ああ・・・・寝不足が原因らしい・・・昔もそういうことがあった・・・悪いんだが少しだけ眠らせてくれ・・・・」
「だったら、私のひざの上で寝る?」
このとき、やはり俺の意識は少し混濁していたのだろう。この美佐の言葉にそのまま流されるように美佐のひざの上で寝てしまった。
集合の時間まで後四十分以上ある。このまま美佐のひざの上で寝ているのも悪くないな・・・・・・。
そして、俺の意識は美佐にゆだねるように睡眠に入った。
「龍!!起きて!!部員が結構来てるよ!!」
「あ・・・えう・・・・・え?・・・わかった・・・。ありがとう。良く寝れたよ」
「どう致しまして。龍の寝顔見てるのも結構よかったよ?なんか恋人の寝顔見てるみたいで」
「そうなんだ・・・んじゃあ俺は行くよ」
俺は、集合時間を確認した
残り5分・・・・ぎりぎりだったな・・・部員のところ言ったらなんていわれるだろう・・・幸いまだ勇は来ていないようだったからよかったが・・・・
部員のところまで後数メートルのところで、美佐に呼ばれ、「がんばって」と最後に言っていた。
そして試合会場に向かって、電車に乗った。
一回戦の相手はそこそこに力がある学校であったが、3対0で快勝。二回戦の相手も3対0の余裕勝ち。これまでの得点はほとんど俺がゴールを決めている。この日は調子がいい。
最高に全身の神経が澄み渡っていて、どこまででもいけそうな気がしていた。
だが、こういう試合はゴールキーパーが暇になりやすいので勇が暇だったことはいうまでもないことだろう。
準決勝は、やはりここまで勝ち上がってきた学校だったので1対0でぎりぎりの勝ちとなってしまった。だがこの試合の代償で優が指を痛めてしまってゴールキーパーが出来なくなってしまった。
「わりいな・・・・あんな棒球簡単に取れたのに・・へましちまって・・・」
「気にするんじゃねえ。よくとめてくれた・・・ありがとうな」
試合会場本部にいた医師の診察によるとフィールドとしては出れるようなんだが、家の部員の中ではゴールキーパーは勇ただ1人しかいない。
「後は・・・・俺に任せろ。今の俺なら止められる。俺のポジション頼んだぜ」
「龍・・・気持ちは嬉しいが・・・いや・・お前に任せる・・・・お前の分の仕事、シッカリ果たしてくるぜ」
「OK」
このとき、俺たちの勝手な判断を監督は理解してくれたようだった。
そして俺の運命の歯車が回り始める試合となってしまった。
決勝は、県下の強豪、勝てる確立はとても低かった。
前半、ペースはこちらが握っていた。俺にボールは一、二度しかこなかったためだ。
正直俺は驚いていた。そして勇が豪快なオーバーヘッドから一点をもぎ取った。勇の手が気になったが、あいつが気にしていないなら大丈夫だろうと解釈した。
そして前半終了のホイッスル。
ベンチに戻ると、後ろに美佐がいたので、少しだけしゃべった。
どうやら、美佐たちの試合の帰りに立ち寄ったようだ。
「どう?勝ってる?」
「ああ・・・勇が点を決めてくれた。まったく・・・ゴールキーパーにしとくにはもったいないな」
「そうなんだ・・・でもどうして今、勇君じゃなくて龍がゴールキーパーなの?
「勇が指を怪我しちまってな・・・。だから俺がやってる訳。」
「そうなんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のに」
「え?今なんていった?」
「龍が点を決めるところ見てみたかったのに・・・・」
「そうか・・・・まあいいじゃねえか俺のこんな姿も見れたんだからな」
「そうね・・・・」
「・・・・そろそろ時間かな?監督の指示仰ぐために、ベンチに戻らないと」
俺がベンチに向かって歩き出したら、美佐が俺の服のすそをつかんでいた。
「なんだ美佐?そろそろ・・・・」
「怪我・・・・しないでね・・・・絶対に・・・私のささやかな願いなんだから・・」
少し・・・美佐が泣いているように思えた。
「大丈夫だ。俺は不死身だ。そんな簡単には倒れないし怪我もしない」
「絶対に帰ってきてね・・・絶対だよ・・・・」
今、思うとこのときに美佐は俺に起きる未来が見えていたのかも知れなかった・
後半が始まった。
後半が始まってすぐに開いてのペース、シュートがどんどん飛んできたが俺は全てはじいた。
もう、何本飛んできたかもわからない・・。体力の限界が近いことが明白だった。チームメートも疲労の色を隠せない様子だった。
そして、また何本もシュートをくらっているうちに俺は意識がはっきりしてこなくなった。
そして、残り五分。勇が相手のラフプレイにより倒された。そのときに腕を折ってしまったらしい。勇は笑っていたがつらそうな目をしていた。病院にいく前に俺だけに負けるんじゃねえと言い残して、救急車で運ばれていった。
俺は、このときに触れてはいけないスイッチを押してしまった。
自分が自分で無くなるスイッチ。憎悪と破壊を好む心
試合が再開され残り五分ボールだけを見ていた。そして・・・ロスタイム・・・
俺は相手の低めのセンタリングを取りに行った。ボールを取った瞬間、目の前が真っ暗になった。ボールを取りに行った時、相手がシュート体勢で相手の足が体にあたりその後に後頭部をゴールポストにぶつけた。遠くで試合終了のホイッスルの音。
そして、最後に美佐の声が聞こえて、俺は意識を失った
さて・・・・寒くなってきました
運命の歯車が回ってまいりましたね・・・・・
どうなるでしょう?