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プロローグ

「エクリシア・クランベル伯爵令嬢。どうかこの私の妻になってもらえないだろうか」


「え? 嫌です」


 私は彼からのプロポーズを一瞬で断った。瞬殺だった。


 私の前に優雅に跪いているのはアクロード様。フェバステイン公爵家のご嫡男。つまりなんと、次期公爵だ。


 サラサラな金髪に、切長の目。碧い瞳。お顔立ちはこの上なく整っており、非の打ち所がない。背も高く、引き締まった体格で、物腰は優雅そのもの。


 性格は穏やかながら、騎士団の副団長としても活躍なさっていて、特に剣技に優れその強さ並ぶ者なしとまで言われているとか。


 完全無欠の貴公子として非常に有名である彼。身分容姿能力の三拍子が揃った二十三歳のその「超優良物件」アクロード様からのプロポーズを、私は言下に断ったのだ。


 伯爵家とはいえ格は低く、帝国でさして重視されてもいないクランベル伯爵家の三女。年齢は嫁ぎ遅れ寸前の十八歳。髪は枯れ草のようだと言われ、肌は農作業で陽に焼けてこんがり小麦色。ありふれた水色の瞳という十人並みの容姿のこの私。


 どう考えても釣り合いが取れる二人では無いんだけど、お断りした理由はそれではない。私はアクロード様に言った。彼とはこの半年ばかり前から友人関係になっているから口調は気安い。


「アクロード様もご存知でしょう? 私は結婚する気はないんです。私は人よりも馬が好きなんですよ」


 私は馬が好きなのだ。なので一生を馬に捧げて生きていきたいと思っている。その事はアクロード様にも何度も話したから彼も知っているはずだ。アクロード様も「それは素敵な夢だね」と言ってくれていた筈なのに。


 私の言葉に、アクロード様はそれはそれは麗しい笑顔を向けた。人より馬が好きな私だけど、人の魅力が分からない訳ではない。アクロード様は非常に魅力的な男性だ。それは知っている。


「もちろん。承知しているよ。エクリシア。私は君の夢を知っている。だからこそ君に私の妻になって欲しいのさ」


 意味が分からない。次期公爵夫人なんかになったら、社交や領地の統治で大忙しになってしまう。とても馬を愛でている暇など無くなってしまうだろう。


 困惑する私の手をアクロード様はそっと握った。暖かくて優しい彼の手。そして彼は悪戯小僧のような面白がるような、楽しげな視線で私を見上げた。


「君に、提案がある」

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― 新着の感想 ―
[一言] 一瞬異種姦系かと思ってしまって申し訳ない
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