26.タブリア。ウクライナの国産車
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あなたは自動車博物館の中にいます。たくさんの世界の車が並ぶ中、立ち止まるあなたのすぐ前には、古いウクライナ車が展示されていました。
こちらのライトベージュの車両は、ZAZの1102TAVRIAです。
「ザズとはなんですか?」
あなたの横で見物していた金髪の美少女が疑問を述べました。あなたも気になると思うので、問いに答えましょう。
ザズとは、ザポリージャ自動車製造工場の略となります。ザポリージャ州のザポリージャ市に拠点を置く、ウクライナの主要自動車メーカーまたはブランド名です。
ザズの起源となる工場が建てられたのは、1863年とされています。かなり長い歴史がありますね。まだウクライナがロシア帝国に含まれていた頃のようです。農業機械を製造するための工場でした。
1923年には、ソ連に国有化されてコムナール工場と改名。トラクターなどが生産されています。
1960年10月に、同社初の自動車が誕生しました。小型車ザズ965ザポロージェッツです。1961年、製造所の名称がザポリージャ自動車製造工場に改名されました。
ザポロージェッツが二世代続き、後継車として誕生したのが、この1102タブリアです。1970年代に試作車がいくつか作られ、1987年11月に生産が開始されています。
「小さい車ですね」
はい。タブリアは、Bセグメントの小型車です。Bセグメントとは、ヨーロッパにおける車の大きさの区分のうち、下から二番目に位置する区分を言います。
タブリアは四角いヘッドライトを持った、直線基調の質素な車です。ボディは3ドア・ハッチバックで、のちにバリエーションが増えました。
「どのようなバリエーションがあるのですか?」
ステーションワゴンのザズ1105DANA、セダンに見える5ドアのザズ1103SLAVUTA、ピックアップ型バンのザズ11055などです。
標準車となるタブリアの後は、1998年の改良版、ザズ1102タブリアNOVAが引き継ぎました。タブリア・ノバは2007年まで生産が続いたそうです。
タブリアが搭載する基本エンジンは、直列四気筒1.1リッターとなります。このエンジンは、メリトーポリ・モーター・プラントで生産されていました。メリトーポリ・モーター・プラントは1908年にザポリージャ州メリトーポリ市にて設立され、1958年からは略称のMeMZになったようです。なお、メリトーポリは現在、ロシアに占領されてしまっています。
「日本でもこの車は走っていますか?」
断言は出来ませんが、恐らく一台も走っていません。正規輸入はされていないと思います。
タブリアは生産期間が長く、安価でしたが、品質は高くなかったらしいので、2022年に現存している車両は少ないと思われます。
ロシアによる侵攻で、タブリアは何台も破壊されたでしょうし、他の車も同様でしょう。これが自然災害なら、しかたがないとも言えますが、人為的なもので破壊されているのが、悲しいです。
車を無慈悲に破壊し、侵略した地域を解放したと称するロシア側には、やっぱり賛同は出来ません。
ザズ1102タブリア乗用車「ロシアはいつまで各地の破壊を続けるのだろうか?」




