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【ホラー】真っ黒な人たち
ある日突然、私以外のすべての人が真っ黒くなってしまった。まるで影が本体と取って代ってしまったかのように真っ黒くなってしまったのだ。
しかし、誰一人それを疑問に感じる人はいないようだった。真黒な父と母はいつも通り朝の支度をしていたし、テレビを点けると真っ黒なアナウンサーがニュースを読み上げていた。自分の姿のほうがよほど事件のはずなのに、そのことには一切触れない。
学校も真っ黒だらけ。先生も生徒も真っ黒。パッと見ただけでは誰が誰やらわからない。
放課後、友達と服屋に立ち寄った。
この服どうかな、と試着した姿を見せられたが、ただの真っ黒い影にしか見えないので答えようがなかった。
仕方がないので、いいんじゃない?と言ってしまった。
似合っていなかったらどうしよう。ちょっと罪悪感を覚えた。
本当にみんな、真っ黒のことには一切触れず、いつも通りに生活している。
誰も気付いてないんだろうか。それとも――おかしくなったのは私のほうなのか?