表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇つぶしショートショート集  作者: 鈴木空論


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/100

【ホラー】桜の木

 深夜。

 仕事終わりに何軒か飲み屋をはしごしてほろ酔い気分で歩いていたところ、何となく立ち寄った公園の奥のほうから妙な音が聞こえてきた。

 何だろう、と音のほうへ歩いていくと、男が一本の木の下をスコップで掘り返している。

 私は首を傾げて尋ねた。


「何をなさっているんです?」


 すると男はこちらを振り返って言った。


「桜の木の下には死体が埋まっているってよく言うでしょう。それが本当なのか気になりましてね。実際に掘って確かめようとしていたのです」


 ははあ、と私は思った。

 どうやらこの男も酔っているらしい。

 男の足元に目をやると、すでに人間が一人くらいすっぽり入ってしまいそうなほど大きな穴ができていた。

 もう随分と掘ったようだ。

 しかし、この木は……。


「かなり掘ったようですが、どうですか。死体はありましたか」

「いやあ、なかなか見つかりませんねえ」

「そうでしょうねえ。ははは。だってその木、桜じゃなくて梅ですよ」

「あれ、そうなんですか?」


 男は私に指摘されて初めて気付いたらしい。目を丸くして木を見上げた。

 季節的に花びらも散ってしまっているし、夜中で視界も悪いから間違えたのだろう。


「こりゃあとんだドジを踏んだようだ。いくら掘っても見つからんわけだ」

「災難でしたねえ。まあ、他の人の迷惑になりますからちゃんと戻しておいてくださいね」


 男と笑いかけ、私は再びほろ酔い気分で歩き出した。


 世の中には変わった人がいるものだ。

 そんな事を考えながら歩いていると、不意に背後で物音がした。

 振り返ってみると、さっきの男が私に向かってスコップを振り上げていた。



 どうやら男は死体を掘り出そうとしていたのではなく、埋めようとしていたらしい。

 男は穴をさらに深く掘ったあと、毛布に包まれた誰かさんの死体と私の死体を蹴り落とした。


 桜は根元に死体が埋まっているほど綺麗に咲き誇るというが、梅の場合はどうなんだろう。

 土を被せられながら私は他人事のようにそんな事を考えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ