【SF】才能診断ロボット
人は、往々にして自分の才能に気付かないことが多い。
音楽の道へ進んでいれば世界中の人々を虜にできたはずの歌声の持ち主が彫刻の世界を選んだために無名のまま一生を終えたり、プロスポーツ選手になれるほどの恵まれた肉体の持ち主が自信が持てなかったために会社員になったりする。
そういった才能が開花せずに終わってしまう悲劇を回避するために、世界各国の天才技術者たちの手によって「才能診断ロボット」が開発された。
その名の通り、個人個人の持つ才能を診断するロボットである。
このロボットに尋ねれば、自分が今後どんな進路を選べば幸せになれるのかを的確にアドバイスしてくれるのだ。
しかも、進路を選んだ後も本人が求めればさらに助言を受けることができる。
このロボットは世界各国で運用され、多くの人々に幸福をもたらした。
このロボットの診断によって画家の道に進んだ男がいた。
本人は工学に興味があったが、ロボットに「あなたはその分野には向いていない」ときっぱり言われてしまったので諦めたのだった。
正直なところ絵を描いていてもまるで面白くないし、自分で描いておいてなんだが自分の絵のどこがいいのかもさっぱりわからない。
だがロボットのアドバイス通りに描けば評論家から高い評価が受けられたし、絵も高く売れるので生活も豊かになった。だからそれなりに満足していた。
画家の絵を評価していたのはロボットに評論の道を勧められて評論家になった男だった。
正直なところ他人を評価するよりも自分で何か作るほうが好きだったし、画家が発表する絵は技術も構図も稚拙でどこがいいのかさっぱりわからない。
だがロボットのアドバイス通りに評論を書けば画家からは感謝されるし同業者からは一目置かる。出版する評論本もそれなりに売れる。だからそれなりに満足していた。
画家の絵を購入していたのはロボットに商売が向いていると言われて商人になった男だった。
正直なところ他人と交渉するよりも黙々と一人で作業に打ち込んでいたい性分だったし、取引のある画家が持って来る絵は素人目にも下手すぎて何を描いているかすらわからない。
だがロボットのアドバイス通りの価格で買って待っていれば評論家が絵を絶賛して価値を跳ね上げてくれる。購入時の価格よりも遥かに高い金額で好事家に売り渡すことができるのだ。画家からも評論家からも好事家からも目利きの腕前を褒められるし、懐も温まる。だからそれなりに満足していた。
以上のように、才能診断ロボットのアドバイスに従った人々はみな幸せになれた。
診断結果が本当に正しいかは疑わしいのだが、皆それなりに満足なので気付かないふりをしていた。




