表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇つぶしショートショート集  作者: 鈴木空論


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/100

【コメディ】指鉄砲

 その少年が自分の超能力に気付いたきっかけは、ほんの些細な出来事からだった。


 ある日、自宅の近所にエンジンをふかし続けたまま路上駐車している車がいた。

 それがあまりにも長時間で鬱陶しかったため、少年は腹立ちまぎれにベランダへ出ると、指を鉄砲の形にして狙いを定めた。

 そして、その車を撃つ振りをしながら、

「バァン」

と、言ったのだ。


 すると車は突然破裂音とともに黒煙を上げた。


 驚いた運転手が車から飛び出すのが見えたが、それ以上にびっくりしたのは少年のほうだった。

 少年は慌てて家に入ると、まじまじと自分の手を見た。

 ほんの冗談のつもりだったのに、まさか壊してしまうなんて。

 自分にこんな特別な力があったとは……。


 秘められた力を自覚した少年の心に芽生えたのは、喜びではなく焦りと恐怖だった。

 この少年は昔から気が小さかった。

 こんな力を知ってしまった以上、これからの人生で何か嫌なことがあったとき、この力を使うのを我慢できる自信がない。

 昨日アニメで見た悪役のボスの過去がこんな感じだった。

 最初は正しいことに力を使おうとするのだが、やがて駄目な方向に自信を持ってしまい、最後には自分の欲望のために他人を平気で傷つけるようになる。

 分不相応な力を得た人間の末路は総じて悲惨なのだ。

 あんな風になるのは嫌だ。

 どうすればいいんだろう。

 少年は悩んだ。

 そして、ふと思いついた。


 体を鍛えよう。


 その日から少年は筋トレを始めた。そして近所の道場に通い始め、格闘技術もひたすら磨いた。

 全ては、あんな超能力になど頼らなくても大丈夫だ、という自信を持つため。

 悪役になりたくない一心から少年は無我夢中で鍛錬に励んだ。

 人の何倍もの努力をした。

 その結果、気付けば少年は道場で相手になる者がいなくなるほど強くなっていた。



 これが、後に伝説の格闘家として名を遺した某氏の幼少のエピソードである。


 この話を聞くと、切っ掛けとなった車の件はただタイミングよく車が故障しただけだったのではないか、と言い出す者がいる。

 だが、某氏はその生涯で二度と指鉄砲の力に頼ることはなく、試そうともしなかった。

 だから超能力が本当にあったかどうかは本人を含め誰にもわからないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ