【コメディ】金縛り
朝起きようとしたら体が動かなかった。
どうやら金縛りに遭ったようだ。
本当にあるんだなこういうの、と僕は思った。
どういう訳か知らないが自分でもびっくりするくらい冷静だった。
多分、半分寝ぼけていたせいだろう。
体は指一本動かせないが何故か目だけは自由に動かせたので、室内をぐるりと見回してみた。
だが、幽霊とか怪物とかそういったものの姿は見えなかった。
謎の声や音がするといった事もない。
何の気配もしないのだが、体は何か凄い力で押さえつけられているような感触がある。
超常現象には違いなかった。
しかし、しばらく待ってみたが特に何も起こらず、金縛りも一向に解けなかった。
ただ放置されても何も怖くないし、暇なだけなのだが。
仕方がないので僕は二度寝することにした。
どうせ動かないのだ。他にできることもない。
僕を金縛りにした奴が何者か知らないが、用があるなら起こしてくれるだろう。
次に目覚めたとき、何事もなく体が動いた。
金縛りは解けたらしい。結局何だったのだろうか。
とにかくこれで一件落着だ。
そう思ったのだが。
僕は目覚まし時計を見て血の気が引いた。
会社の始業時刻を完全に過ぎてしまっている。
「遅刻だ!」
僕は大慌てで家を飛び出した。
怪奇現象より人間社会のほうが余程恐ろしい、と思った。




