【SF】面影
子供のころ、たまに不思議なものを見た。
私が一人でいるときにばかり現れる、半透明の男の人。
誰なのかはわからないけれど、何故かいつも私を悲しげに見つめ、しばらくすると消えてしまう。
中学に上がるころには見ることも無くなったが、何故か記憶の片隅に強く残っていた。
社会人になったある日、ある席で一人の男性と知り合った。
研究員をしているらしい。私と同世代の人だったが、何故か子供の頃に見たあの不思議な男の人の面影を感じた。
一目見て、私はこの人と結婚するのかもしれない、と思った。
理由はわからない。
しかし実際、私たちは交際を始め、数年後に結婚した。
しかしそれから間もなく、夫は仕事中に事故に遭い帰らぬ人となった。
酷い事故で、遺体も見つからなかった。
夫は時間についての研究をしていた。いわゆるタイムマシーンと呼ばれる機械の開発だ。
ひょっとしたら――あの人は死んだのではなく、時間の中を飛び回っているのかもしれない。
子供のころ何度か出会ったあの不思議な男の人は、夫本人だったのかもしれない。
そう友人に話したら曖昧な顔で言葉を濁された。
自分でも荒唐無稽なことを言っているのは承知していた。
でも、そう思わないわけにはいかなかった。




