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暇つぶしショートショート集  作者: 鈴木空論


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【ホラー】封印の祠

 ある日の夜、恐ろしい妖怪が封印されていると伝えられた祠に雷が落ちた。

 祠は破壊され、中にあった封印も壊れてしまった。

 そのことが領内に知れ渡ってしばらくすると、その地の殿様のもとに各地から良くないことが起きたという報告が次々と上がるようになった。


 これまで見たことのない流行り病が発生した。

 季節外れの寒波で農作物が全滅した。

 息子が狐憑きのようにおかしくなった。

 毎日悪夢を見るようになった。

 ……などなど。

 これはきっと妖怪の祟りに違いない。早く祠を再建してほしい。

 民衆たちは口々にそう訴えた。

 だが、壊れた祠はとても古いもので資料も残ってない。

 言い伝えられてはいるが、本当に妖怪など封印されていたのだろうか。

 いや――そもそも、妖怪など現実に存在するのか?

 もし本当に妖怪がいたとしても、祠の再現だけらなどうにでもなるが、封印を再び施せる者はいないのだ。

 祠を建て直したところでどちらにしろ何の意味もない。

 そして、今の財政状態では余計なものに金銭を使う余裕など無い。

 しかし建て直さなければ民衆の不安はどんどん膨らむだろう。

 建て直したくはないが、放っておけば一揆などに発展する恐れもある。

 一体どうしたものか。

 殿様は頭を抱えた。

 すると側近の一人が妙案を思いついた。

 殿様はその案を聞いて喜び、すぐに実行するようにと命じた。


 その側近は旅の僧に変装し、祠の跡地に民衆を集めてこう言った。

「私はこの地の殿様に呼ばれて都から参った僧である。この地から目覚めた妖怪は某が退治して進ぜよう」

 そして民衆たちが見守るなか、真剣な面持ちでそれっぽい儀式を行った。

 儀式を終えると、側近は晴れ晴れとした顔で民衆に呼びかけた。

「これでこの地の邪な気は払われた。あとはここを更地にしたまま三年ほど待つが良い。さすればもう何も心配はいらなくなるじゃろう」

 民衆たちは安堵した。

 詳しくは知らないが、都から来てくれた偉いお坊様が妖怪を退治してくれたらしい。

 そんな噂が広まり、やがて妖怪の祟りを訴えてくる者もいなくなった。

 妖怪が退治されたということで祠の存在意義もなくなる。

 更地のまま放置されたことで民衆たちの記憶も薄れ、三年が過ぎたあとに祠の再建を求める声は一切上がらなかった。

 結局、祟りと言われていたものはただの気持ちの問題だったのだ。


 ただ――その裏で、ある事件が起きていた。

 旅の僧の変装をした例の側近が謎の病で死んでいたのだ。

 側近は原因不明の高熱を出し、全身の皮膚がただれ、死の間際まで虚ろな目で「祠、祠……」と呟いていたという。


 領土の統治は特に問題もなく順調そのものだったが、殿様の顔は冴えなかった。

 今更もう祠を立て直すことなどできないが、これでよかったのだろうか。

 あそこには本当に何かの祟りがあったのではないか。

 今のところは問題は起きていないが、いつか自分やこの地に災いが降りかかるのではないか。

 殿様はそんな得体の知れない不安を常に抱えながらその後を過ごすことになるのだった。

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