【冒険】月夜降花
月夜降花と呼ばれる幻の花があった。
満月の夜にしか咲かせないという花で、険しい崖を登った高台にだけに繁殖する。
しかもこの花はその地の原住民の信仰の対象となっており、彼らによって厳重に守られていた。
彼らは排他的かつ好戦的で、さらに満月の夜になると人狼に変わるという特異な体質を持っていた。
人狼に変わった原住民はただでさえ高い身体能力がさらに向上する。
普通の人間が正面から戦っても絶対に勝ち目はない。
だから、部外の者がその花を手に入れることは不可能だと言われていた。
そもそもその花の情報が外に漏れたこと自体、ほんの数年前のことだったのだ。
ある冒険者が造園マニアの貴族からの依頼で月夜降花の採取をすることになった。
冒険者は入念な下調べを行い、ついにある満月の夜、人狼たちの監視の目を盗んで花を一輪摘み取ることに成功した。
人狼たちは怒り狂って冒険者を追跡した。
冒険者は喉笛に喰らいつこうとする牙を幾度もかわし、川に飛び込んで匂いを途絶えさせたりすることで、どうにか命からがら逃げ延びることができた。
念願の月夜降花をついに手に入れたのだ。
ところが、夜が明けてから冒険者が依頼主に戦利品を取り出して見せたところ、月夜降花だったはずの植物はその辺のありふれた雑草に変わってしまっていた。
どうやら満月の光で姿を変えていたのは人狼だけではなかったらしい。




