表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇つぶしショートショート集  作者: 鈴木空論


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/100

【ラブコメ】恋する古本

 本棚の整理をしていると、買った覚えのない本がある事に気が付いた。

 ぱらぱらと中身を読んでみた感じ、恋愛小説のようだ。

 およそ私の趣味ではない。どうしてこんな本があるんだろう。

 私は首を傾げたがとりあえずその本を棚に戻した。


 その夜、私は夢を見た。

 私は暗闇の中にいて、目の前には美しい女性が立っていた。

 何故かはわからないが一目見て理解できた。この女性はあの恋愛小説が化けたものらしい。

 買った覚えがないとは思っていたが、呪いの本とかそういう類の本だったようだ。

 女性は目に涙を浮かべ、懇願するように言った。

「ようやく運命の人に巡り合うことができました。お願いです、連れて行かせては頂けませんか?」

 どうやら私は惚れられてしまったようだ。

 連れて行く、というのは恐らくあの世とかそういった所へ連れていくという意味だろう。

 私はしばし考えたが、こう答えた。

「ええ、構いませんよ」

 やり残したことが無いではないが、本に惚れられて命を奪われるというのはなかなか経験できることではない。

 読書家としてはある意味理想の最期な気もする。

 できることなら、好みのジャンルの本に好かれたかったと思わなくもないが……。

 私の返事を聞いて女性は嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとうございます。この御恩は決して忘れません」

 周囲が暖かく輝き始め、次第に何も見えなくなっていく。

 これで私の人生も終わりか、と私は他人事のように考えた。



 ところが次の日の朝、私は普通に目を覚ました。

 はて。てっきり死ぬものと思ったのだが……。


 本棚を確認すると、あの恋愛小説は無くなっていた。

 そしてもう一冊。この間買ったばかりの掘り出し物の推理小説も消えていた。


 なるほど。

 あの恋愛小説が言っていた運命の人というのは、私のことではなくあの推理小説のことだったようだ。


 あの二冊はどちらもかなり古いものだった。

 長い年月の末にようやく巡り合えたのだろう。

 お幸せに、と言ってやりたいところだが……。


 せめて、読み終えてからいなくなって欲しかったなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ