表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇つぶしショートショート集  作者: 鈴木空論


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/100

【ホラー】何かの卵

 洗濯物を干すためにベランダに出たところ、卵が一つ転がっているのが目に入った。

 何かの鳥の卵だろうか。うずらの卵と鶏の卵の中間くらいの大きさで、濃い緑色をした卵だった。

 ここは二階なのだが、一体どこからやって来たのだろう。どこかから飛ばされてきたとしか思えないが、よく割れなかったものだ。

 私はどうしたものか悩んだが、とりあえず今日一日はそのままにしておくことにした。

 恐らく有精卵だろうし、すぐに捨ててしまうのは少々気が咎める。

 ひょっとしたら親鳥が探しているかもしれない。

 明日もここに転がったままなら捨ててしまおう。そう考えた。


 ところが翌日。

 私がベランダへ様子を見に行くと、卵は割れていた。

 ただし潰れていたのではない。信じられないことに孵化したらしく、そこには卵の殻だけが残されていた。

「ずっと温めてないと死んでしまうものと思っていたけれど、そうでもないのねえ」

 私は思わずそう呟いた。

 ベランダを見回したが、産まれたはずの雛は見つからなかった。

 ここのベランダには何も置いていない。排水口はあるが格子になっているから落ちたとも考えにくい。

 となると、私がベランダへ来る前にカラスか何かに見つかって持っていかれてしまったんだろうか。

 そうだとしたら却って可哀そうなことをしてしまったかもしれない。

 いずれにせよ雛はもうここにはいないのだ。気にしても仕方ない。

 私は残された卵の殻をちり取りで回収して室内へ戻った。

 ベランダの戸を閉める間際に誰かの視線を感じた気がしたがこの時はあまり深くは考えなかった。


 私はその卵のことをすっかり忘れてしまっていた。

 ところがそれから数カ月後。

 部屋の掃除をしていたとき、押し入れの奥にあの緑色の卵の殻を見つけた。

 中身は無く、殻だけである。

「なんでこんなものがここに……?」

 私は気味悪く感じながらも、さっさとそれを片付けた。

 孵化した後の殻のように見えたが、念入りに調べても押し入れの中には何もいなかったので気のせいだと思い込んだ。


 しかし、気のせいではなかった。

 それから緑色の殻は家の中のあちこちで見つかるようになった。

 いずれも孵化した後の殻。しかし生まれた中身は未だに一匹も確認できていない。

 しかし間違いなく、家の中で増殖を続けている。


 駆除業者にも頼んでみたが何の成果もなかった。

 屋根裏や軒下まで調べてもらったが何も見つからず、業者が帰った翌日からはまた何事もなかったように卵の殻があちこちから転がり出てくる。

 私は頭がおかしくなりそうだった。

 この家のどこかに、得体の知れない何かが蠢いているのだ。

 どうしてあの最初の卵を割るか捨てるかしなかったのだろう。

 あの時に中途半端な温情をかけなければこんな目に遭うこともなかったのに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ