表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暇つぶしショートショート集  作者: 鈴木空論


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/100

【ジャンル不明】先祖の宝

 会社員を定年退職した男がいた。

 長年の労働に疲れ果てていた男は、これからはのんびり暮らそうと考え、実家のある田舎に帰った。

 しばらくは期待通りの気ままな生活をしていたが、やがてそれにも飽きてきた。

 のんびりできないのはもう嫌だが、たまには何かやる事がほしい。

 そんなおり、退屈しのぎに掃除をしていた屋根裏部屋で男は板の隙間に隠された古い書物を見つけた。

 それは宝の地図のようだった。いや、実際に宝かどうかはわからないが、地図に赤い墨でバツ印が付けてある。何かが埋められていることは間違いない。

 書かれた地名は昔のもので、調べたところそこまで遠い場所でもないようだ。

 興味の湧いた男はその場所へ出かけてみることにした。


 地図の場所に付いてみると、そこには大きなビルが建っていた。

 これでは地面を調べるは難しいだろう。

 男は肩を落としたが、ビルの案内板を見てふと思った。

 このビルは地下二階まであるようだった。

 それならば、ビルを建てる時にかなりの深さまで掘ったことだろう。

 地図が正しいのなら、その時に何か見つかっていたのではないか?

 駄目で元々、と受付に宝の地図の話をしたところ、受付の女は困惑した顔でどこかに連絡をしていたが、やがて驚いた顔をしながらこう言った。

「会長がお会いになりたいそうです」


 男はビルの最上階に案内された。

 会長室というプレートが貼られた部屋へノックして入ると、一人の老人が笑顔で出迎えてくれた。

 男より一回りくらい上の年齢だろうか。

「よくいらっしゃった。あの宝のことを御存じだそうで」

「はい。しかしお時間を頂いてよろしかったのですか? アポイントも取らずに来てしまったのに、お忙しいのでは?」

 すると会長は首を振って、

「いやいや。会社のことはもう息子に任せているので退屈していたのです。今日はこれといった予定もありませんでしたから、話し相手になってくれるなら喜んでお付き合いします」

「ありがとうございます。では早速、この場所に埋まっていた物のことなのですが」

「ええ、あの金塊のことですね。よく覚えていますよ」

 男は耳を疑った。

「金塊?」

「ええ」

 会長は懐かしそうに頷いた。「私は以前は別の場所で商いをやっていたのですが、色んな出来事が重なって会社が傾きかけましてね。一か八かの賭けだと覚悟を決めて拠点をこの地に移したのです。そうしたら、社屋を建てる際に土の中から金塊が出てきましてね。その場にいた全員驚いたのなんの。当時は資金繰りが本当に苦しい時だったから、まさに神の助けだと思いましたよ」

「待ってください」

と、男は顔色を変えて話に割り込んだ。「まさかその金塊は売ってしまったのですか?」

 会長は不思議そうな顔をする。

「ええ。お陰で会社を立て直すことができました。それが何か?」

「………」

 どうやら受付からちゃんと話が伝わっていなかったらしい。

 男は宝の地図を見せながら事情を説明して、

「その金塊は私の先祖のもので、何かの事情でここに埋めたものだったようなのです。勝手に売ってしまったのでしたら弁償して頂けませんか?」

 すると会長の表情が一変した。

「なんだと? あんな大昔のことでどうしてそんなことをしなくてはならんのだね。大体、そんな紙切れがあったというだけで君の先祖のものだったという証拠はないんだろう?」


 男と会長による宝の賠償をめぐる裁判はそれからずっと続いている。

 心身ともに疲弊して、のんびりなんて夢のまた夢。

 宝の地図など見つからなければ二人とも心穏やかに余生を送ることができただろうに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ