【ホラー】夜に鳴く犬
むかしむかし、吉三という男がいた。
ある日の夜、もう誰もが寝静まったころ、吉三の飼っていた犬が突然大声で吠え立て始めた。
何事かと吉三は飛び起きて外に出たが、特に変わった様子はない。
犬は狂ったように吠えながら庭を駆け回っている。
なんとかそれを捕まえてなだめるとようやく犬は大人しくなり、吠えるのを止めた。
吉三は犬を叱った。
「一体どうしたんじゃ。近所の者にも迷惑になる。こんな夜中に騒いではいかん」
ところが次の夜もまた次の夜も、その日を境に犬は毎晩吠えるようになった。
吉三が叱れば止めるが、まるで直る気配がない。
そんなことが七日も続いたころ、吉三は言った。
「近所の者たちからもとうとう苦情を貰うようになった。これ以上続くのならわしはお前を殺さなければならん。後生じゃからもう夜中に吠えるのは止めてくれ」
ところが犬はその日の夜も変わらず吠え立てた。
堪忍袋の緒が切れた吉三は犬を殴り殺してしまった。
すると次の日の夜。
「吉三、吉三」
誰かの呼びかける声に吉三は目を覚ました。
見れば、部屋の中に、得体の知れない化け物がいる。
「礼を言うぞ、吉三」
と、化け物は言った。「あの厄介な犬のせいでなかなかこの部屋に入れなかった。だがお前が犬を殺してくれたおかげで、わしもようやく飯にありつける」
そう言うと化け物は吉三を一飲みに食べてしまった。




