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【コメディ】幽霊なのに
ある月夜の晩。一匹の幽霊がふよふよ飛びながら周囲を見回していた。
しばらくすると向こうのほうから光が近づいてくるのを見つけた。懐中電灯を持った女。手提げの袋を見るに、買い物か何かの帰りらしい。
幽霊はさっと物陰に隠れた。そして女が通り過ぎると、背後から、
「う~ら~め~し~や~」
女が振り返る。
その顔にはなんと何もなかった。のっぺらぼうだ。
幽霊は目を丸くした。それからがっかりした様子で溜め息をついて、
「なんだ、同業者かよ」
「そのようね」
女は笑った。「あなた、今年に入ってから誰か驚かせた?」
「うんにゃ。驚かせるどころか、人っ子一人見てねえよ」
「私もよ。本当、困ったものね」
少子化が進んだ結果、気付けば人口はごっそりと減ってしまった。
これまで通りの生活は維持できなくなり、ここのような片田舎の人間たちは都会へ移住してしまった。
そのお陰で取り残された幽霊たちは退屈である。
幽霊は思わず愚痴を吐いた。
「驚かす相手がいなきゃ、俺たちなんで生きてるのかわからねえよなあ……」




