【パロディ】覚えのない恩返し
夕食を平らげてそろそろ眠ろうかと思っていたとき、戸を叩く音が聞こえた。
誰だろう、と吾介が戸を開けると、見知らぬ女が立っていた。
「夜分遅くに申し訳ありません。私は先日罠に掛かっていたところを助けて頂いた鶴です。御恩を返させて頂きに参りました」
はて、と吾介は考えた。
最近どころか生まれてこのかた、鶴など助けた覚えはない。
「それ多分俺じゃねえだ。訪ねる家を間違えてねえか?」
すると女はおろおろと狼狽えた。
「そんな。どうしましょう。恩返しができなければ仲間の元へも戻ることが出来ません」
「そげなこと、俺に言われてもなあ……」
と、吾介は返したが、女は今にも泣き出してしまいそうである。
悪事を働こうとしていた訳でもないようだし、なんとかしてやりたくもないが……。
そんなことを考えていたとき、吾介はふと思い出した。
数日前、隣村で猟師をしている友人の佐吉が酒の席でそんなことを話していたような。
女にそれを伝えると、女の顔がぱっと明るくなった。
吾介に何度も頭を下げて礼を言うと、軽い足取りで隣村まで歩いて行った。
「やれやれ」
そそっかしい恩返しもあったものだ。まああの様子なら心配なさそうだし、もう会うこともないだろう。
吾介は欠伸をすると、戸締りをしてさっさと眠った。
ところが数日後。
夕食を平らげてそろそろ眠ろうかと思っていたとき、戸を叩く音が聞こえた。
誰だろう、と吾介が戸を開けると、この間の女が立っていた。
「夜分遅くに申し訳ありません。私は先日家を間違えていたところを助けて頂いた鶴です。御恩を返させて頂きに参りました」




