3 夢てふ物は 頼みそめてき
第1話 僕はほんの少し魔法が使える 掲載
第2話 LightningS 〜僕はほんの少し魔法が使える・第三部〜 掲載
前書きのあらすじで可能な限り本物語だけで完結出来る様にします。
アユムとカオリは、見知らぬ場所をスクーターで走っていた。地面は砂で、潮の香りすら漂って来る。
「アユム、ここどこ!?」
「おかしいな…僕らは海から遠く離れた場所にいたはずなのに…」
向こうから、男女の2人連れが、バイクで走ってきた。
「ふぃりぽん、ここどこ!?」
「『海岸地帯』…みたいだけど、あんな立派な街、あったかな!?」
男女のうち、青い革鎧を着た男の方は普通の人間だが、赤い金属鎧を着た女の方は、プラチナブロンドのロングヘアに、驚くことに両耳が長く尖っていた。まるでファンタジーに登場するエルフだ。そんな2人が、バイクに乗っている…何とも不可思議な光景だった。
そして、遥か前方に見える港町を見て、アユムは、
「まるでファンタジーRPGに出てくる町みたいだな…」
と言い、青い鎧の男は、
「位置的には『港街』みたいだけど…あんな立派だったかな!?」
と言い、そしてようやく、自分たちの隣を並走する、見知らぬ2台のバイクの存在が気になり、アユムと鎧の男は、思った。
(誰だ…この人たち!?)(誰だ…こいつら!?)
キ っ! 4台のバイクはどちらからともなく停車する。その戸惑っている様子から、互いがこの世界にとっての異物である事に気づく。
「「え、えーっと…」」
互いに人付き合いが苦手な者同士。手探りの交流となる…
「ぼ、僕は渡会アユム、こっちは相川カオリです…」「よ、よろしく…」
カオリもお辞儀する。
「僕はフィリップ、こっちはモリガン。」「やっほー!!」
鎧の男…フィリップが自己紹介し、エルフ女…モリガンが右手を上げて挨拶し、両耳をピコピコ上下させた。
※ ※ ※
「つまりあなた達は、ファンタジー世界の住人で、ここはあなた達が住んでた世界であって、何か違うみたいだと…」
「君たちは科学が発達した世界の住人で、ここに迷い込んで来たと…ところで…」
「ええ…」
それからアユムとフィリップは同時に言った。
「そのバイク見せて。」「そのツァウベラッド見せて。」
「アユム、そっちはどうでもいいから!!」「ふぃりぽん、もとのせかいにもどるほうほうを探しましょう!!」
カオリとモリガンが2人を制した。
「魔法で動くバイクなのに…」「『バグダッド電池』とやらを見てみたかったのに…」
そこへ…
「皆さん…さん…さん………」
女の、声がした。4人が見上げると、空には一人の女性が、後光を放って浮かんでいた。
「私は…は…は…ウズメ…メ…メ……」
ウズメと名乗った女は、ハイレグTバックに胸元やへそ周りが大きく開いたレオタードが裾の短いジャケットと一体化した様な、目のやり場に困る衣装をまとい、右の目尻にはほくろがあった。
「………(ポーーーーーっ…)」
アユムが真っ赤になりながらウズメを見つめ、カオリがムっとなってアユムの尻を思いきりつねる。
「痛たたたた!!な、何ですかカオリさん!!」
「べっつにー!!」
カオリはぷいと向こうを向き、焦りながら自分の胸に手をあて、
(あ…あたしより大きい…!?)
なおもウズメを熱い視線で見つめるアユムに、カオリは、
「あんたっ!!そのエロい服もどきの上から何か着てくださいっ!!」
「これは…は…は……私が作った…た…た……コスチューム…ム…ム……『フォーマルハウト』…ト…ト……です…です…です……」
「フォーマルハウト…フォーマルハウトの指す下へ…」
アユムがウズメのお腹のフォーマルハウトを見つめ、
「目を覚ませーーーっ!!」バキっ!!「痛っ!!」
カオリに後頭部をしこたま殴られた。
フィリップはため息混じりに頭をかきながら、
「はぁー…またあなたですか、ウズメさん…」
「またあのちじょか…」
モリガンがぷくーっと脹れた。
「私は世界を問わず…わず…わず…女の敵みたいですね…すね…すね…」
「ところでウズメさん、何なんですか、その変な語尾は…」
「これは…れは…れは…セルフエコー…コー…コー…です…です…です…」
「何でそんな事を…」
「私は今…今…今…世界の管理者の…の…の…手伝いをしてます…ます…ます…神々しさを出すためです…です…です…」
「世界の管理者の手伝い…天使みたいな物ですか…!?」
「はい…はい…はい……こちらでは…では…では……そちらより…より…より……何十倍もの時間が流れ…れ…れ……私の仲間は…は…は……世界の創造者に…に…に……なりました…した…した……ところで…で…で……」
「…何ですか!?」
「セルフエコー…コー…コー……やめていいですか!?…か…か……言うのもキーボード打つのも大変ですし…し…し……」
「いえ、続けていただいていいですよ。」
フィリップは即答した。
「え………!?」
「いやー、ずっと聞いていたいなぁ、セルフエコー…」
ニヤニヤ笑いながら言うフィリップ。
「………」
ウズメの顔面に幾粒もの脂汗が浮き、
「………ここからは普通に話します。」
あ…折れた。
「それでウズメさん、今度は何があったんですか!?」
フィリップはやれやれと訊ねたが、ウズメは、
「その前に、アユムさん、カオリさん…」
と、二人の方へ向き直り、
「謝罪を…させて下さい…」




