11ー2 コンシダレーション Episode 9&10 Side エイジ
某県 某所…
寒河江と米沢の遺体は、2人が生まれ育った街の廃墟の端に簡素な墓を立て、埋葬された。
ここが2人を殺した『生きたおもちゃ』の故郷でもあるとは知らずに………
墓の近くに張ったテントの中で、デスクの側の椅子に腰掛け、最上エイジは悲痛な面持ちで俯いていた。
「最上エイジ隊も3機になっちまいましたね…」
側に立つ久野シノブの声も、普段より沈んでいたが、またいつもの調子に戻って、
「…で、どうするんスか!?また隊員を探して、宇宙船からアレッツを掘り起こして、行方不明のダイダ探して捕まえて、各地の野盗倒して回って、ゆくゆくは寒河江タイインと米沢タイインの敵討ちを…あ、いっそ今度はアーシもパイロットになっていいっスか!?あの手のアニメには女パイロットが主人公のもあったっスよね……」
「いや………」
エイジは枯れた声で言った。
「今となっては、隊員の増員も、新しい機体の確保も、もう望めんだろう………」
「それじゃあ………」
「プランAは破棄、準備期間は必要だが随時プランBに移行する。」
苦渋の、決断だった。エイジ自身にとっても、隊全体にとっても…
「分っかりましたぁ!それじゃあ、他のタイインも呼んで……」
ビシっと敬礼して出ていこうとするシノブに、
「待ちたまえ………!!」
不意にエイジが声を上げ、シノブは足を止める。
「へ…!?」
「嘲りたまえ………!!笑いたまえ………!!私を………っ!!いつもの様に………っ!!」
激高するエイジ。
「タイチョー………」
「絶望的な情勢に、わずかな戦力で、途方もない大志を掲げて、出来もしない目標に挑んだ、その結果がこのザマだっ………!!」
全身をワナワナと震わせ、目から光る物を流すエイジ。
「寒河江と米沢はもう、私を非難することも罵倒することは出来ん。だから…だからせめて君が………っ!!」
シノブは震えるエイジにニっ!と笑い、
がばっ!「!?」
エイジに覆いかぶさる様に、彼を抱きしめた。
「し………シノブ君!?い、一体何を…!?やめたまえ…」
しかしシノブはそのまま、エイジを抱きしめる両腕の力を強める。
「ぎゅ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「し……シノブ君………」
温かい…心地いい…
「アーシは救われましたよ。こんなご時世に、そんな男と一緒にいられて…」
「シノ…ブ……」
冷えた心がほぐれて行く………
「全部吐き出すっス。タイチョー。アーシの中に、全部………」
シノブの言葉にエイジは、一呼吸置くと、
「私は………この国全体を救いたかった………っ!!でも………
目の前の困っている人一人一人も助けたかった………っ!!!」
絶叫、後は、ただ、嗚咽………
「知ってるっス。アーシはそんなタイチョーだから………」
※ ※ ※
1時間後………
「プランAは現時点を以て破棄、プランBに移行する。」
エイジが酒田と新庄にそう告げると、2人は一瞬憮然となり、それからエイジに敬礼を返した。
「寒河江と米沢は無駄死にじゃねぇか………」
「土台無理だったんだ………降参するなら最初からこんな事するなよ………」
2人はわざと聞こえるように愚痴を零す。
「明朝、ここを撤収する。各自、就寝!」
新庄は無言で天幕を後にする。酒田は去り際に、
「………色ボケ隊長が………っ!!」
残されたシノブはエイジに、
「タイチョー………すいません…アーシのせいで………」
「いいんだ………あれは、合意の上での物だった。」
エイジは、シノブの肩に優しく手を置いた。




