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1ー8 人の顔した 鬼畜の住処

村から少し離れた所にある、ラブホテル跡は、ダイダ達野盗の住処になっていた。


今、その住処に人質(カオリ)を取って帰り着いた野盗2人は…


バキっ!バキっ!!「ギャッ!!」「うぐぇっ!!」


虫の居所が悪いダイダに殴り飛ばされていた。


「お前ぇるるぁ〜…なんでこんな女ぁ連れて来たんだよぉぉ〜〜〜!!おるるぇぁこんな気の強ぇ女は大ぇっ嫌ぇだっつってっだるるぉぉぉぉぉ〜〜〜!!」

ダイダはカオリを指さして叫ぶ。


「すみません、ダイダさん…」「ひどいッスよ…助けに来てくれたみたいだったから、俺たち帰って来たのに…」


「あ”あ”!?知らねぇぞ、そんなの。捕まった無能を助けに行く訳ゃ無ぇだろるるぉぅ!!」


「「え…!?」」


「まぁいいか…どうせそろそろ、新しい女ぁ攫うつもりだったんだからよぉぉ…」

…以前も言ったが、ダイダはアユムと同学年、のはずである。なのにダイダは、住処といい言動といい、アユムよりも先に、悪い所だけ大人になってしまった様だ。


ダイダはぷいと背中を向け、

「そいつはお前ぇらが好きにしるるぉ……」


ドン!「キャっ!」


ベッドに突き倒され、悲鳴を上げるカオリ。ダイダの背後で、「キャー!」「やめてぇぇぇ!」「お母さーーーん!!!」という悲鳴が聞こえてくる。が、ダイダの頭には別の懸念があった。


おるるぇぁ何故、あん時、逃げた…!?)


手下2人を捕らえられても、ダイダ自身の彼のアレッツは健在だった。どうせ見捨てる手下なら、人質に取られても構わず渡会と村人を全員ブッ殺す事は出来たはずだ。なのに何故…


「嫌ぁぁぁぁ!!」「だめぇぇぇぇ!!」「お婿に行けなくなっちゃうーーー!!」「親分ーーー!!」


「…え!?」ようやく異変に気づくダイダ。さっきからの悲鳴は全部、男の声…手下2人の物だ。


「お前ぇら!!」


さっきの部屋に戻ったダイダが見たのは、頭やら顔やらにコブやら青タンやらをこさえた、2人の手下と、壁際で荒い息をしながらも武術の構えの様なものを取る、カオリ。


「親分ー、こいつ、強すぎっスよー…」「俺達じゃ手に負えませーん…」


「お前ぇ…何者んだ!?」ギロリと睨むダイダに、


「知らないわよ!」叫ぶカオリ。ダイダはツカ、ツカとカオリに近づく。カオリはそのいかつい顔面に、子分2人を屠ったパンチを食らわす。が…


「あ”〜〜〜〜〜!?」


文字通りの分厚い面の皮には全く効かない。


パシン!「キャっ!」カオリに平手打ちするダイダ。カオリは思わず身をよじらせる。そしてダイダは地の底から湧き出るかの様な声で…


「泣かしたるるぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!?」


「く…来るなーっ…」


巨漢の力には抗う事も出来ず、あっという間に窓際に追い詰められるカオリ。万事休す!!しかし…


ガン!


どこかから何かがぶつかる音が聞こえ、外の方で何やらガン!ガン!という音が、下から段々と近づいて来た。ここは最上階のはず…


「お…親分ー!!」「あ…あれ…!!」


ダイダとカオリが見ると、ラブホテルの小さな窓の外に、鎧を来た様な巨人の左半身が見えた。兜をかぶって面頬を着けた様な顔の左目が緑色にギン!と輝く!


「うぉ!」「…アレッツ!?」


ダイダとカオリが声を上げる。窓の外のアレッツと思しき者は、左手で窓を窓枠ごと外へひっぺ返すと、下の方で落ちた窓ガラスがパリンと割れる音がした。


次にアレッツは左手でカオリにこっちに来る様に促す。是も非も無かった。カオリは壁に開いた穴から出、アレッツの腰に足をかけると、アレッツが左腕をカオリの身体にを抱きしめる様に回す。外は、いつの間にか日が暮れていた。


カオリが上を見ると、アレッツの右腕が上に上げられ、そこからロープの様な物が、上の壁に伸びていた。カオリを回収したアレッツは、右手から伸びるワイヤーをキュルキュル…と伸ばして、下へと降りて行く。あのワイヤーを下から最上階へ射出して、巻き取る事で壁を登って来たらしい。そして…アレッツの背中にはコクピットが無かった。


アレッツは地面に着き、左手を開け、右手のワイヤーを収納すると、カオリも地面に降りた。


「待ちやがるるぇ!!」


上の方…さっきまでいた場所からダイダの怒鳴り声が聞こえる。次の瞬間、アレッツは踵を返すと近くの森へ走って行ってしまった。


「あ…ちょっと…!!」


カオリが自分を助けてくれたアレッツを追いかけると…


「カオリさーーーん!!」


入れ替わりにアユムが駆けて来た。何故か徒歩で、片手に一辺が30cmくらいのバッグの様な物を持って…


「あ…アユム…あんた何してるのよ!!」

「助けに来たんです!」

「はぁー!?、あんたに何が出来るのよ!!」

「とにかく逃げましょう!」

「さっきそっちに、アレッツが来なかった!?」

「いいから走って!!」


カオリの手を引くアユム。遠くからドンゲンドンゲンと、ダイダ達のプロトアレッツの足音が聞こえた。


     ※     ※     ※


10分後…


「はぁ…はぁ…」「はぁ…はぁ…」


ラブホテルの近くの林の中を走るアユムとカオリ。木々が天蓋の様に広がる中を、道が続く。


ドンゲンドンゲン…プロトアレッツの足音が段々近づいて来る…


「か…カオリさん…速い…」「…何で助けに来たあんたがバテてるのよ!」


先に体力が尽きたのはアユムの方、カオリがそれを引っ張っていた…


ドンゲンドンゲン…巨人の足音が迫る…


「カオリ…さん…先に行って…」「あんたを置いて行けないでしょう!!」


2人が走る度にアユムの片手で握られたバッグがカチャカチャと音を立てる。


「何持って来たのよ!こんな時に!!」「あ……」


「グェフフフフフ…」


足の長さの差が大きすぎる。2人はついに林の中で追いつかれてしまった。


「や…やめろーーーっ!!頼むからやめてくれーーーっ!!」

情けなくも叫びだすアユム。


「グェフフフフフ…相変わらずお前ぇはいい声で泣くよなぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜」

プロトアレッツの背中の操縦席で、思わずよだれが垂れそうになるダイダ。


「お前ぇも本望だろぉ〜お前ぇロボットマンガ(アニメ)大好きだったからなぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜大好きなロボットに殺されてよぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜」


それからダイダは、あ、そうだぁ、と、意地悪そうな顔になり、


おるるぇ達がこいつらを取ってきた宇宙船に、もう1台アレッツが残ってたっけぇぇ〜

何か左右の目の色が違うから、壊れてるみたいだったから置いて来たけどぉぉ〜きっとお前にお似合いだぜぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜

ちょっと今から取って来いよぉぉワンチャン生き残れるかもしれねぇぜぇぇぇぇぇ〜

ま、おるるぇ達のアレッツから逃げられたらの話だけどよぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜グェーーーーッハッハッハ!!!!!」



「………僕も、そう思ったよ…」



ようやく聞こえる声で、アユムは言った。


「あ”あ”〜〜〜!?」



「…ガランとした宇宙船の中で、こいつだけがポツンと座ってててさ…カメラアイを見て、ああ、これで残されたのかと思って」


アユムの声は最初小さく、しかし段々と大きくなっていく。


「ちょっと…アユム!?」

「何言ってんだぁ!?」



「…それで、僕と似てるなって…だから……………連れて来た。



今日まで一緒に旅をして、戦って来た!!」



アユムはカオリの手を握っている反対側の手に、ずっと持っていたカバンの様な物を前に突き出した。それは透明なケースの中に、小さなロボットが武器と一緒に収納された、取っ手が付いている以外は、完成品フィギュアを梱包・販売している形態とよく似ていた。



「『ブリスター・バッグ』、オープン!!」


アユムが叫ぶと、『ブリスター・バッグ』の正面からまばゆい光が照射される。


「グェ…な、何だぁ!?」


光は人の形を取った。ダイダ達の乗る『プロトアレッツ』よりも、一回り大きい、全高7mくらいの…


「これは…『アレッツ』!」


二人の子分は知った。アユムがずっと自分達のアレッツを『プロトアレッツ』と呼んでいた理由を…ちゃんとした本物のアレッツが、他にあったのだ。


ダイダはようやく気づいた。あの時自分が逃げた理由に…産まれついての弱い者いじめのダイダは、皮膚感覚で気付いていたのだ。今のアユムが、もういじめられる弱者ではない事に…


そしてカオリは知った。自分を助けてくれたのが、今日一日、ずっと邪険に扱った、この頼り無げで妙な強さを秘めた少年であった事を、そして、自分は助かるであろう事を…


光が収まると、果たしてそこに現れたのは、さっきカオリを助けてくれた『アレッツ』。しかも今回は、窓枠に隠れて見えなかった顔の全容が見えた。兜をかぶり、面頬を着けた様な顔には、人間と同じ2つのカメラアイがあった。が、左右の色が違っていた。左側は緑色、そして、隠れて見えなかった右側は…金色。

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