10ー7 僕は星を見た あいつは泥を見た
再び時間は巻き戻る。
「…と、言う訳で、そいつらを探し出して、殺して回ってるんだよぉ…いじめで何年も引きこもってた俺に、ようやく与えられたやりたい事と、それを実行できる手段だ。最後までやり遂げないとねぇ…」
これまでの経緯を、手柄を誇るかのような男…『生きたおもちゃ』に、アユムは、
「だからって…いじめの復讐で殺しちゃだめだろう…」
「渡会アユム…君なら僕の事を分かってくれると思ったんだけどなぁ…」
その時、
「そこのアレッツ、今すぐ武装解除しなさい!!」
村の中心から2体のアレッツがホバリングして近づいてくる。
「そこの男、そのアレッツの所有者か!?ゆっくりとそいつから離れ…」
「やかましい!」タァァァーーーン!タァァァーーーーーン!!
『六本腕の天使』は左右の腕の先のパーティクルキャノンを2機のアレッツに撃った。先頭の1機はコクピットに命中し、後ろの1機は右膝下を貫通!ジェネレータが爆発する。
ド ン !「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」「保安官が殺られたぞーーーっ!!」「それより火、ひがぁぁぁぁぁ!!!」
周囲の木造建築に引火し、村じゅうがパニックになる。
「お…お前…なんでそんな簡単に…」
あまりにも無造作に人を殺す男に呆然となるアユム。これまで盗みのためにアレッツを駆る野盗は大勢見てきたが、人殺しのために人を殺す奴は初めてだった。
「この村にも3人、小中学校のクラスメートがいるらしい。だからここに来たんだ。まぁ、寒河江まで見つけられたのはラッキーだったが…」
いつの間にかコクピットに入っていた男は言った。
「今、殺した人たちが、そうだと言うのか!?」
「何言ってるんだい、渡会アユム!?
いじめとは人が4人集まれば成立する。即ち被害者と加害者と扇動者と傍観者である。
俺や君はいじめの被害者だ。だったら俺たち以外の全員は、加害者か扇動者か傍観者のどれかだろう。奴らはこれまでに、何らかの形でいじめに関わってたはず。だったらあいつら等しく有罪だ!」
「何よその理屈…」
アユムの代わりにカオリが叫んだ。
「渡会アユム、君は僕と同じだ。さあ、そんな女放っておいて、こっちに来たまえ。」
「断る!!!」
アユムはブリスターバッグを目の前に突き出し、オープン………
現れ出たのは左右のカメラアイの色が違う、深い青色のアレッツ。エイジ戦やホワイトドワーフ戦で使用した時のままの、外見は汎用型セミキューブのR、両脚のジェネレータと胸のコンバータのみSRに換装したもの。ホワイトドワーフ戦で負ったダメージも修復されている。
「渡会アユム!君もアレッツ乗りだったのかぁ!!でも何故、そんな物を俺に出すのかなぁ!?」
心底分からないとも、バカにしてるとも取れる『生きたおもちゃ』の態度。
「お前は危険だ…!!ここで止める!!」
叫びながら右手のアンブレラ・ウェポンを『六本腕の天使』に向けるアユム機。
「ああそう…君も敵なの!?なら…報いを受けさせないとね!!」
冷めたような形相で、『生きたおもちゃ』はコクピットの中で言った。
※ ※ ※
アユム機コクピット内…
「カオリさんすみません。こんな事になってしまって…」
アユムは後部座席のカオリに言った。
「ううん、確かにあいつを放っておくわけにはいかないわね。あんたこそ大丈夫なの…!?」
「正直ショックです…あいつは僕と似てると思ってたのに…僕と正反対の理由で旅をしていたなんて………」
「それより…あれ、一体何!?普通のアレッツとも思えないし、ホワイトドワーフってのとも違うっぽいけど…」
カオリはスクリーンに映る異形を指さした。
「分かりません…とにかく止めますよ!!」




