表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/263

8ー7 アンタレスの一歩手前で

「僕は行かなきゃ…あいつを…倒さなきゃ…」


もうとうに心は折れていると思われていたアユムの言葉は、意外なものだった。


「だめよ!もう少し寝てなさい!!」

起き上がるアユムを寝床に寝かしつけようとするカオリ。


「離して下さいカオリさん!!」


「だいたい倒すって、どうやって倒すのよ!?あんなバケモノ!!」

「それはこれから考えます。」

この子はどうかしてる…旅を成し遂げられるかどうかの不安を口にしながら、いざ障害が立ちはだかると俄然抵抗する…


「アユム……あのさ、もうやめない、こんな事!?」

カオリは言った。なるべく穏やかに、アユムを刺激しない様に…

「この近くにも復興村があったでしょう!?そこに住み着いて、修理屋でも畑仕事でもして、あたしも手伝うからさ…いつかホワイトドワーフがどこかに行ったら、そしたら仙台へ帰りましょう。あなた1年間待ったんでしょう!?もう何年か待ちましょうよ…」


それは、理性で考えたら至極妥当な意見。だが…


「もう少しなんです。僕たちはようやくここまで来れたんです!!あと少し、ゴールはすぐそこなんです!!」


「あなたにとってはそうかもしれないけど!!」


「カオリさんの故郷だって、あいつを倒さなきゃ探せないんですよ!!」


「だからあきらめるって言ってるでしょう!!」


「あいつさえ倒せば…」


「アユム!!あんた最上さんと戦ってダイダ倒して、天狗になってない!?ホワイトドワーフは、あいつらとは次元が違うの、戦って分かったでしょう!?」


「じゃあカオリさん、ここで待ってて下さい。ホワイトドワーフは、僕だけで倒します。」


カオリの手を振り払って立ち上がり、廃屋を出ていくアユム。


「あなたまで失いたくないの!!」


叫ぶカオリだが、去り際に彼は、


「………カオリさんなら、分かってくれると思いました…」


その言葉の意味に旬重したカオリだったが、入口の扉をくぐろうとするアユムに我に返り、


「アユム…アユムっ!待ちなさい!!!」


     ※     ※     ※


廃墟となった街の外では、ソラがホワイトドワーフの監視を行っていた。外はすでに夜になっていた…


ソラ機は破損し、ブリスターバッグの中で修理中である。


「強い事は聞かされてたケド…想像以上ヨネ…」


ソラはつぶやく。ホワイトドワーフは、あれから動きが無い。


「アユムクン…結構やる子だケド…所詮は子供だったのカシラ…」


双眼鏡でホワイトドワーフの方を見る。今夜は月が出ているから、闇夜よりは幾分視界が利く。


「元々気が弱い子みたいダカラ、そろそろ心折れてるかもしれないワネ…

一度ダケ、きっかけを与えてみるケド、

引き際を考えた方がいいのカシラ…ワタシも、アナタも…」


「ソラさん!!」「アユム、待ちなさい、待ちなさいってばーー!!」


廃屋の方からアユムとカオリがやって来た。


「アユムクン…起きたノ…!?」


「ソラさん行きましょう。今度こそあいつ倒しましょう!!」「ソラさんごめんなさい。あたし達ここで失礼します。」


…どうやら2人で意思統一が図られていないみたいだ。


「カオリさんはここにいてください。あいつは僕らで倒しますから!!」「ソラさんも言ってやって下さい。私達には無理だって…」


「ま、まぁまぁ2人とも落ち着いテ。そ、そうだアユムクン、お腹すいてナイ!?ご飯!ご飯にしまショウ!!」


2人の剣幕とは不釣り合いの、にこやかな笑みを浮かべてソラはそう言った。


「はぁ〜〜〜っ!?な、何言ってるんですかソラさん!!こんな時に…」


怒り爆発させるカオリとは正反対に、興奮していたアユムの動きが止まった。


「………それだ!ご飯だ………」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ