8ー4 空飛ぶ敵との戦い
「避けるわよ、アユムクン!!」
「え…わ、わーーーーーっ!!」
急制動されたアユム機のコクピットの中で、アユムとカオリの視界は右に引っ張られる。さっきまでアユム機がいた空間を光弾が通り過ぎていった次の瞬間、
「アユムクン、防いで!!」
「え…!?」
パーティクルキャノンの光弾がまたもアユム機を襲う。アユム機は慌ててアンブレラウェポンのシールドを展開させる。
「な、何発撃てるのよ、あいつ!!」
光の傘に光弾は防がれるが、撃ってきた方向にホワイトドワーフはいない。
「後ろっ!!」
カオリの声が飛ぶと、ホワイトドワーフは、アユム機を背後から斬りつけようとしてた。
「ぐっ…!!」
腰を90度横にまわして、斬撃をブレードモードのアンブレラウェポンで受け止める。
「前進っ!!」「はい!」
前へ飛ぶソラ機。アユム機の上半身は横を向いたままガンモードにしたアンブレラウェポンを後ろに向けて射出。ホワイトドワーフはシールドでこれを防ぎながら、左腕のパーティクルキャノンから光弾を射出して追う。横を向いた視界の中で、奥羽山脈が、足元の北上盆地が、左から右へと流れて行った。
「ソラさん、下!!」
「オーライ!!」
次の瞬間、ソラ機と合体したアユム機はホワイトドワーフの視界から消え、
アユム機は地平すれすれ、ホワイトドワーフの真下でアンブレラウェポン(ガンモード)を構えていた。狙うは下からは丸見えの両脚、だが、
ホワイトドワーフは空中で上下逆になり、左腕のパーティクルキャノンを下に向けて射出!!
「何だあれは〜〜〜っ!!」
何発かくらいながらもこちらも撃ち返すが、ホワイトドワーフはそれを逆さになったまま右に左にと避けてしまう。
「き、気持ち悪い動き!!」
「でも理にかなってる…」
「アユム…ソラさん、真似しちゃだめですよ!!」
「怖くて出来ないワヨ!!失速する!!」
「あ…あいつの挙動が人間のそれでは推し量れないのは分かった。」
不意にホワイトドワーフは、上下逆のままスピードを上げ、そして…
遙か前方で上下を元に戻してこっちを向き直り、降下しつつ突進!
「せ…接近戦に持ち込む気か!?ソラさん!!」
「あいよ!!」
前方の地平線に何か見えた気がしたが構っていられない。ソラ機がアユム機ごと上昇、アユム機は下降してきたホワイトドワーフへアンブレラウェポンをブレードモードに持ち替える。これまでの戦闘から、あいつの得意は、多分高機動力と遠距離射撃。
「行くぞ…カオリモーション、バージョン3.141592…」
こっちはエイジ戦から更にモーションのバージョンを2つ上げた!アユム機はアンブレラウェポンを振りかぶり、斬りかかる刹那…
(ん!?)
地平線の向こうにやっぱり何か見える。それより…
こいつの腹のパイプは何故6本なのだろう。普通アレッツの腹部パイプは4本で、構造体とエネルギー経路−脚部のジェネレータから胸部のコンバータへ−なのに…
こいつのは6本…通常のが4本と、フレキシブルに曲がるケーブル状のが2本
ケーブル…!?エネルギー伝達…どこからどこへ…!?脚から胸へ…いや、
胸から脚へ…!?コンバータで生成した攻撃用エネルギーを、脚へ!?
「ソラさん、足!攻撃して来る!!」
「え…」
その瞬間、
ホワイトドワーフの足先から、パーティクルの刃が伸び、蹴り上げる様にアユム機の脚に斬りつける!!
(リアスカートに見えたのが、本物の脚で、脚に見えたのが、増設された2組目の腕か…)
ソラ機はそれを避けようとしたが、
アユム機の右脚の膝と、ソラ機の両腕のジョイントが切れた!!
「わぁぁっ!!」「キャーーっ!!」「ぐぁぁ〜〜〜っ!!」
エネルギー供給不足になり、アユム機のコクピット内が必要最低限の証明と表示を残して暗くなる。そして…
アユム機とソラ機を繋いでいたジョイントが斬られた事で、アユム機は落下。
「アユムク〜〜〜〜ン!!!」
「「うわぁぁぁぁぁ〜〜〜っ!!」」
ドーーーーン!!
両腕と左膝をついてうつ伏せに落ちたアユム機。
「て…撤退するワヨ!!2人とも、回収するカラ、機体から出て!!」
「ソラさん…は、はい!!」
コクピットからまずカオリが、次いでアユムが出て来る。
「アユム!!何をしてるの!?早く!!」
「機体を回収しないと…」
ブリスターバッグを取り出すアユム。そこへ…
急降下してきたホワイトドワーフが、
刃の出ていないパーティクルブレードを叩きつける!
それはアユム機の左腕に当たるが、その一撃で左腕はへし折れ、
風圧でアユムは吹き飛ばされた!!
「アユムーーーーーーーーっ!!!」
その後、
ソラはカオリと、吹っ飛ばされて気を失ったアユムを回収すると、その場を離脱。
幸い、ホワイトドワーフは、それ以上追って来なかった。
※ ※ ※
3人で逃げて来た某所…
ソラはホワイトドワーフの偵察に行き、
カオリはアユムの側で様子を見ていた。
(本州に来てから2人でほぼ連戦連勝で、危険な事をしてるって意識が希薄になってたわね…)
眼の前のアユムはまだ幼さが残った顔立ちをしている。おまけに明らかに戦うことに向いていない性格。それを押してここまで旅して来たのだ。
「あなたはもう十分がんばったわ…アユム…旅をあきらめて、どこか近くの村に定住しましょう。だからアユム…早く目覚めて…」




